東京新聞やテレビ各局のニュースが伝えた。小泉純一郎、細川護熙両元首相らが脱原発を目指して設立した一般社団法人「自然エネルギー推進会議」の会合が七月十八日、東京都内で開かれ、小泉、細川両氏に加え鳩山由紀夫、菅直人両元首相も出席した。菅氏は脱原発が持論で、鳩山氏も首相官邸前の脱原発デモに参加したことがある。四人の首相経験者が、脱原発でそろい踏みした形だ。
私はこの四人の総理が現職の時にまともな内政を行ったとはいささかも想わない。特に小泉氏は、新自由主義政治をもちこんで国内の政治をめちゃくちゃにした。細川氏はほとんどなにもせずに佐川急便問題で早期退陣した。民主党政権にかわって、わずかに鳩山氏だけはまともな見識を感じたが、アメリカの強い干渉のもとに挫折して退陣せざるを得なくなった。菅直人氏は、社民連からの社会運動家出身で期待をもったが、総理について、反小沢氏の策謀だけで、後は期待を裏切るような政治の連続だった。これら四氏の合流は、なんら進歩的なものを感じさせず、現実改革には結び付かない。
しかし、このようないわば新保守の提携は、保守政治というよりは極右反動政治をがむしゃらになって猛進している安倍晋三自公政権に比べれば、はるかにまともに見えてくる。いまの自民党・民主党のなかに国民のことを親身に考えている政治家はひとりもいない。さも進歩派ふうに見えても、国民の得票をかすめ取るポーズに過ぎない。
いまのような腐敗しきった安倍政権に対して、小泉・細川・菅・鳩山四氏の提携に意義はあるか。
私は、彼ら四氏が安倍自公政権とわずかでも対峙する場合にのみかすかな可能性を指摘したい。自民党で一番酷いのは浮沈空母発言の中曽根政権だった。それと同レベルなのがいまの安倍政権である。小泉政権は、現役当時かれらとあまり変わらない政権だった。もう騙されない。小泉氏のマキャベリズムはもう通用しない。また、菅氏は、市民運動の時から市川房枝さんから厳しく指摘されていたことがあり、総理になってからはその欠陥を壮大に華々しくさらけ出した。鳩山氏には、孫崎享氏の分析が何冊か出版されていて、他の総理とはやや異なる。それでも、過大な期待はない。
四氏の苗字をアルファベットで続けるとKKHH連合とよべる。Koizumi Kan Hosokawa Hatoyamaの頭文字である。このKKHH連合にもしも政治的意義が付与されるとしたら、安倍政権と闘う保守勢力の糾合である。都知事選のように日本共産党や市民運動のような勢力と連携は無理である。むしろ反動安倍政権に対して、保守勢力本流として、まともな保守本流の議会制民主主義政治に刷新することができるかどうかだ。
滋賀県の嘉田知事のここ数年間の努力が実を結び、日本共産党推薦候補の徹底的な自公政権批判に後押しされて、元民主党の候補者が当選し、全国の政治への潮目が変わりつつある。これから福島知事選、沖縄知事選、来年春の統一地方選挙で、KKHH連合が反安倍政権の立場にさえいれば、ここまで破壊された自公政権の治安立法弾圧政権は、見る影もなく敗北し続けるだろう。
昔から尊敬するルポライターの鎌田慧さんは、都知事選の宇都宮・細川問題で、強い非難にさらされた。私は鎌田氏を支持する。鎌田氏はたとえひとりになっても、孤立するのでなく孤高の精神で反動政治と闘い広く連携する勢力の連帯を求めている。実はKKHH四氏の会合でも、テレビカメラがとらえた会場に鎌田氏の元気な姿が見えた。
私は基本的に、日本共産党を含む在野の民衆の国民的共同をよいとする者である。しかし、これは相当に困難な事業である。それでも良心的な民衆の草の根の声に依拠して、反動政治打破のためにたちあがる様々な運動や人々の存在を、決めつけずにあるがままに認識して共闘しうるならば、より広い国民的な統一戦線に向けての取り組みを声援している。
今後のKKHH連合の成り行きが、見せかけのポーズに終わるか、安倍自公政権打倒の大黒柱になり得るのか。冷静に注視したい。