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「現状分析と対抗戦略」討論欄

福島県知事選で反原発運動を活性化し自民系候補を打破する

2014/9/26 櫻井智志

 10月26日に投開票される福島県知事選は、国政選挙以上の重要な意義をもつ知事選挙である。以下に箇条書きで特徴を列挙する。

①「オール福島」を政策の要点にあげた日本共産党に対して、自民党は奇策をもって候補者の擁立を進めた。自民党福島県連が擁立して出馬を声明した候補者を撤退させた。そして、民主・社民・連合が擁立した候補に相乗りして、与党の公明党も加わり、なんと自公社民の逆「オール福島」を実現させた。

②反原発運動の側から、医師で宮古市長を三期務めた熊坂義裕氏と元双葉町長井戸川克隆氏が立候補した。それぞれの候補に対して、日本共産党の議員や市民運動家から支持が寄せられた。熊坂氏には「新党改革」が支持を表明している。

③そんな中、日本共産党と「みんなで新しい県政をつくる会」は、熊坂義博氏を支持することを公表した。

④現在、保守中道の逆「オール福島」候補に、反原発運動からは二人が立候補している。

 以上の情勢の中で原発政策そのものに原発廃炉と原発再稼働と根本の政策が相対する陣営が同居している自民党は、福島県民の政治投票意識を低め、無気力無関心のまま投票率が低いなかでの企業組織、連合、創価学会などの組織票の絶対的固定票で乗り切り当選する戦略である。

 私は、熊坂氏と井戸川氏の候補一本化を必ずしも無理矢理進めるべきとは思わない。むしろ反原発運動派がひとりで逆「オール福島」派からの集中攻撃や政策以前の赤化候補誹謗中傷で取り囲まれていて、本来の選挙の意義が薄められる危険があると考える。

 熊坂氏と井戸川氏の候補一本化が成立すればそれに異論はないけれど、二人の候補出馬の現在9月26日現在において、あるプランをもっている。

 それは、反原発運動において両者の公開討論会、座談会で「福島から原発を考える」をシリーズで開き、福島から全国に反原発を発信し続けることだ。単なるスローガンや政治的アジテーションだけではなく、専門家もアドバイザーに招き、福島原発の現状、福島原発事故の原因、政府と東電の対応、チェルノブイリやスリーマイル島からの講師も招き、選挙をバネに反原発運動そのものの水準を高めていく。そこには原発問題にとどまらず、被災者県民の生活の救済や再建の具体策、福島原発労働者の超ブラック企業労働の労働権からの指摘と対策、甲状がんの危険と子どもたちの健康対策、徐染と地域づくり、地域経済再建の具体政策構築など。これらを反原発運動の側にいる熊坂氏と井戸川氏の勇気と 英知をフルに発揮していただく。
 「オール福島」を福島県民の投票の数としか考えられない自公民社候補者陣営に対して、福島県民の生活と健康と地域再建などすべての福島再建策に係わる社会運動、専門学者、住民運動、反原発運動などの「オール」福島社会運動と考えることだ。
 なんとか波風立たず県民の動きも乏しいまま、低投票率当選をねらっている候補は、井戸川氏と熊坂氏とがたえず対話し討論し福島県民救済に立ち上がったうねりの前には、腰も立つまい。

 そのようなかつてなかった知事選運動=反原発運動を中核にしたオール地域再建運動がなされるならば、絶望と失意と困難のなかで投票どころではない福島県民のひとびとに希望と展望とをもたらしてくれるだろう。
 間違っても、熊坂陣営と井戸川陣営とが非難しあうことがあってはならない。以下に両氏の政策を掲げるが、ほぼ似た内容であることに驚く。

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◆熊坂義裕さんの公約政策
私の政策

私は、福島県民全ての知恵と力と勇気を結集し「福島の復興なくして日本の再生なし」の決意の下、以下のような「新しい福島県」の姿を、皆さんと共に目指して参ります。

基本政策:原発被害対策の総見直し
「原発事故子ども被災者支援法」の理念に則り、放射線を避けて暮らす権利を保障します。
原発事故による県民の健康被害を最小限に抑えます。
原発事故に関するあらゆる情報の全面開示
環境回復対策の強化
避難者及び帰還者の生活再建支援
津波被災地域における防災機能の強化と復興の推進
被災者賠償訴訟の積極的な支援
基本政策:原発に依存しない経済社会づくり
原子力発電政策の見直し
「卒原発社会(再生可能エネルギー)」への転換
「卒原子力・再生可能エネルギー」のモデル地域
再生可能エネルギーの導入促進
基本政策:少子・高齢社会への対応強化
子どもを産み育てるための環境整備
人材育成と理数科教育の強化
最先端医療体制の整備
地域包括ケアシステムの確立
基本政策:未来につながる産業・雇用創造
再生可能エネルギー関連産業の誘致・育成
農林水産業の再生
「卒原発型産業構造」の構築
魅力ある福島の創造
医療関連産業の集積
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◆井戸川克隆さんの公約政策

いま日本の民主主義に求められていること (井戸川 かつたか)
●民主主義とはいったいなんでしょう?

民主主義とは、国会議員に全てを任せるものではありません。
国会議員は、国民の代わりに政治を行う代務者です。

全ての代務者(代議員、公務員)は、「ウソ・偽り」を許されると勘違いを横行させることではありません。 任せられる者と任せる者との信頼関係の下に隠蔽や偽りがない代務を行うことを原則として、 任せられた者は任せた者の意向を勝手にできない約束ができていることが大切です。 従って、この信頼を壊した者は代務を辞めさせる権利が、任せる側になければなりません。 「信頼」に大きな権限を与え、代務者に資格基準を求め、品性、品格、正義がなければならない。 国民のデモを取り締まる権限を代務者に与えてはいけません。裁判官にも国民の厳しい監視が必要です。 公正な判断をしたか評価する機関を国民が持つことで、国際的評価を得ることができます。

これは今回の福島原発事故から学んだことです。 原発事故はいまだ収束していません。それなのに、安倍総理は原発再稼働を進め、外国に原発を売りつけようとしています。 総理の発言に裏付けがないとなれば恐怖社会になってしまいます。民主主義とはこのようなことではいけません。 代務者の発言は、国民の理解がなければならないのです。

民主主義に完成はないかもしれません。国民にも自制が必要であります。 公正な執務を求めるために、代務者に個人(企業)の利益を求めることに制約も必要です。 すべて国民の見えるもの、理解ができるものに限らないと大きな混乱をきたします。

代務者と国民、互いの立場を尊重してこそ民主主義は完成するものだと思います。

●福島原発事故の反省

事故の原因ははっきりしています。 経営者による経営の失敗です。会社を経営する者の責任は、会社を潰させない、維持し発展させなければならない。 株主に配当を出さなければならない。リスクは小さいうちに解消しなければなりません。
しかし、今回は小さなリスク(津波・地震の防御対策)を解消しませんでした。 これを見抜けなかったことはすなわち経営者に課せられた責任を全うしなかったということです。 その場しのぎの、あるいは現場を見抜く眼力の無さが招いた事故です。結果として世界中に放射能を、陸、海、空に放出させてしまいました。
東京電力は自分たちの至らなさから事故を招いたにもかかわらず、とんでもない行動に出ました。 企業としての社会的責任を国民に押しつけているのです。なんという無知な経営者たちでしょうか。 東京電力は強大な力を罪滅ぼしに向けず、会社の生き残りに持っている力を使っています。 事故を防ぐことを怠り、罪を広く国民に課したことは大きな誤算となるでしょう。 これほどの巨大企業が反社会的企業であり続けることは認めるべきではありません。

今もなお避難生活を続ける福島県では、住民の苦しみは続いています。 わたしたちの双葉町は生活再建も、町機能も壊れたまま放置されています。 町は多くを失いました。自然、空気、歴史、空間、風土、匂い、風、海、川、鳥、動物、植物、四季、人々、未来、成長、音、動き、等々。 人間として生活する必須条件、お金に替えられない多くのものが奪われました。東電・国が「絶対に事故は起こらない」といってきた、信頼関係が一番失われたものです。

事故から学ぶことなく反省もなく、全国の原発を再稼働させることは、第二、第三の福島を生んでしまう恐れがあるのです。

福島原発事故の本質的な反省こそ、いま日本が向き合うべきことだと思います。

PDFダウンロード 「 いま日本の民主主義に求められていること (井戸川 かつたか) 」
私の信条六項目
詭弁を言わない
信義と信用を大切にする
代弁者としての姿勢を正す
子供たちを放射能から守る
家系の継承を守る
託された方への使命を果たす
井戸川かつたかの取り組み
原発事故被害者の声を国会へ届ける
子ども・被災者支援法の早期施行を求める
一般公衆の被曝限度1msv/y以内を求める
原発事故賠償に県民の声を取り入れる
時代遅れの原発は止める、頼らない
事故調査機関を民間に委託する
原発の負債を子孫に引き継がない
原発を推進する者に全責任と負担を求める
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 両者の見識にうたれるものがある。早急に両者の対話共存選挙競争の提案を公党や勝手連、確認団体が提起して両者の健闘を促してほしい。とくに十月九日までが決定的に重要である。その過程で、両者の間に理解と交流が開かれれば、県知事選そのものが体質変化を起こす。