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「日の丸・君が代」討論欄

軍国主義の復活だけが問題か?>チャンネルゼロさんへ

1999/7/30 吉野傍、30代、アルバイター

 チャンネル・ゼロさん、はじめまして。「日の丸・君が代」問題に関するチャンネル・ゼロさんの投稿について、私の率直な意見を述べさせていただきます。
 まず、チャンネル・ゼロさんは、「国民として日の丸を尊重することはあたりまえ」とおっしゃっています。なぜ「あたりまえ」なのか、私にはまったく得心がいきません。共産党も言っていますが、国民的討論のないままに一方的に「日の丸・君が代」が国旗・国歌だと上から押しつけているだけだというのに、どうしてそれを尊重するのがあたりまえなのでしょうか? 「日の丸」を国旗にするということについて、あなたは一度でも相談されたことがあるのでしょうか? あなたは一度でもその決定過程に加わったことがあるのでしょうか?
 また、たとえ「日の丸」が国旗として法制化されたとしても、それを尊重するのが国民としてあたりまえなのですか? 国会が決めたことは何でも尊重すべきなのでしょうか? では聞きますが、国会の多数決で盗聴法が決まればそれも尊重、有事立法が決まればそれも尊重、徴兵制が決まればそれも尊重、というわけなのでしょうか?
 それとも、「日の丸」ないし国旗だけが特別に国民として尊重しなければならない義務でもあるのでしょうか? 今の政府でさえ、尊重義務を法案には入れませんでしたが、それでもあなたは、尊重義務があるとおっしゃるのでしょうか? 自分の国の国旗を尊重しないのは「非国民」だとまさか言わないでしょうね。
 あなたは、「そのことが軍国主義に結びつくとは思いません。確かに過去に歴史的事実はありますが日の丸が軍国主義につながるでしょうか」とおっしゃっています。軍国主義にさえ結びつかなければ、何でもいいのでしょうか? 時代は大きく変わり、国際環境も、国内状況もまったく昔とは異なっているので、戦前のような軍国主義がそのまま復活することなどありえません。とすれば、どんな法律もどんな弾圧も、戦前そのままの軍国主義につながらなければ、すべてOKなのでしょうか?
 日の丸を掲げれば、それがただちに戦前型の軍国主義になるなどという馬鹿げた議論をした人がいったいどこにいるのか、教えていただけませんか? 日の丸だけで軍国主義にはならないのは当たり前。しかし、日の丸が戦前の軍国主義、侵略戦争の象徴だったことも、歴史的事実です。とすれば、それをそのまま国旗扱いすることは、戦前の軍国主義と侵略戦争を美化し、免罪する恥知らずな行為になるのではないですか? 日本の侵略の被害を受けた人々およびその子孫が近隣諸国にも日本国内にも沢山おられますが、その方たちの感情や尊厳はどうでもいいとおっしゃるのでしょか? 
 現在、政府が「日の丸・君が代」を国旗・国歌として法制化しようとしているのは、戦前型の軍国主義を復活させたいからではなく、日本の帝国主義化にとって欠かせないナショナリズムを高揚させ、「日の丸・君が代」と対立してきた戦後民主主義運動と憲法体制に打撃を与え、再び日本を戦争する国にするうえで不可欠の「上からの国民統合」を推進するためです。
 日本が現在直面している危険性は、戦前型の軍国主義ではなく、新しい軍国主義です。それは議会制民主主義や一定の自由とも十分両立します。誤解を恐れずに言えば、それは一種の「自由民主主義的軍国主義」です。
 たとえば、あなたは公務員のようですが、周辺事態法によるなら、周辺事態が実際に生じ、関連公共機関への協力要請があった場合には、当然あなたは戦争協力の片棒を担ぐことになります。そして、それに逆らえば、「日の丸・君が代」の場合と同じく、減俸ないし懲戒、下手すれば免職となります。これは立派に軍国主義です。ただし、戦前のような完全な自由剥奪、完全な民主主義否定、完全な軍部独裁ではないだけのことです。
 「国民として日の丸を尊重するのはあたりまえ」と無邪気におっしゃるあなたは、当然、「国民として戦争に協力するのはあたりまえ」と言うようになるでしょう。そして、「日の丸を尊重しない日本人、戦争に協力しない日本人は、非国民であり、不利益をこうむって当然」と考えるようになるでしょう。そしてあなたは、立派な軍国主義者になるでしょう。
 軍国主義者というのが、みんながみんな、軍服を着てサーベルを腰にさしているような連中だと思うのは、まったくの錯覚です。新しい時代の軍国主義者は、一方ではCDラジカセでR&Bでも聞き、ファッションや髪型に神経を使い、公務員ないし会社員として勤勉に勤めながら、他方では、「日の丸を尊重するのはあたりまえ」「戦争に協力するのはあたりまえ」とうそぶくことでしょう。