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「イラク戦争」討論欄

4.5ワールドピースナウで歩きました

2003/4/7 菅井 良、50代、自由業

 4月6日朝刊各紙はアメリカ軍がバクダッド市街にはじめて侵攻したことを伝えた。
 見出しに使われている言葉は
   進撃 1…読売  攻略3…産経、日経、朝日  突入 1…東京  侵攻 1…毎日
である。この侵攻が偵察とか示威的性質のものと思われ、イラク軍とバクダッド市民の意気をくじくための宣伝としての性質が強いものか、その規模はアメリカ軍、バクダッド発表で大きくくいちがっている。表現する言葉もこのように違う。はっきりと英米軍の不当性を表現して「侵攻」を使っているのは毎日一社である。毎日のマスメディアとしての言語感覚の健全さをはっきり評価しておく。

 4.5東京代々木公園から出発して渋谷市街を歩くデモに参加。夜は渋谷公会堂にて、主催団体によるシンポジウム。激しい雨と寒さにもかかわらず、18000人(主催者発表)の熱情的な行進がくりひろげられ、渋谷の街行く人々および警備の警官たちの目と耳を驚かした。夜のシンポジウムは、新宿の大ホール・紀伊国屋サザンシアターで行われた演劇人の反戦イベント(無料)とかちあったためだろうか、今一息の入りだったが、このシンポジウムは期せずして、ワールドピースナウ主催の5団体(グリーンピースジャパン、日本国際ボランティアセンター、アムネスティー・インターナショナル・ジャパン、ピースボート、Chance)が方向性としてかなりタイトな結束をもっていることを示した。
 はじめに、ハーグ世界平和会議会長のコーラ・ワイズ氏が発言。現在展開中のアメリカの反戦運動の組織者の一人。アメリカでは、戦争反対デモの力を選挙による有権者の投票行動に向けはじめていると紹介。エルサルバドルのナバロ氏、中東専門家の高橋和夫氏がつづいた。
 高橋氏は、現在のイラクの予想外のアメリカに対する抵抗の原因について触れ、南部の抵抗はバース党員によるもので、バース党員は湾岸後のシーア派の対フセイン蜂起の時にまっさきに皆殺しにされた過去があるので、アメリカに占領され、南部多数派のシーア派が実権を握ったら殺されると思い、必死に戦っている。シーア派はその蜂起がアメリカに見捨てられて潰されたので、慎重にどちらが勝つか静観している。勝つほうにつくつもりなのだ。それぞれが生き延びるために何をしたらいいかというぎりぎりの中で、今のようになっているということだ。抵抗をイラクの国民意識の自覚とみるような単純な見解を否定していた。
 グリーンピースジャパンの鈴木かずえ氏は、環境的視点からのイラク戦争と題して、爆弾そのものによる環境汚染ばかりでなく、爆撃によって、工場、油田の有害物質がまき散らされることを説明。湾岸戦争時の環境汚染からまだ回復していないイラクの土地が再びとりかえしのつかない環境破壊をうけていることをつぶさに述べた。戦争という行為は21世紀の今の地球には許容できない行為なのだということがよくわかった。現在は、「平和のための結集」、安保理が機能しない緊急事態において開く特別な国連総会を開かせて、そこで停戦決議をあげさせるよう、各国政府へ全力をあげて働きかけているとのことだった。今現在数十カ国の政府から賛同を得ており、アラブ連盟が提出する構えになっている。
 アムネスティーは各国の政治犯の人権を守る活動で有名だが、そこの寺中誠氏は劣化ウラン弾とクラスター爆弾(すでにバクダッドにつかわれた。一発の爆弾が大量の子爆弾をまき散らすが、そのかなりが不発弾として残り、民間人に対する対人地雷に変わる)の使用が明白な国際人道法違反だと説明。今回の戦争で、アムネスティーが開戦前に、無差別攻撃はしないとの確約を英米政府に求めていたのだが、返事がなかったと報告。
 日本国際ボランティアセンターの代表理事熊岡氏は、日本政府は、NGОに金を出して、政府機関の代りに米英支配下での「復興援助」を請け負わせようとしていることを紹介した。現状では日本政府はまったく何もしていない。
 ピースボートの櫛渕氏は北朝鮮から見たら、今の日本の行動がどのように見えるかを考えることが重要と訴えた。朝鮮が1発か2発の核兵器を持っている、持ちつつあるというが、北朝鮮からみると、数十発の核兵器を即座に作ることの出来る核廃棄物(プルトニューム)をストックしており、日本も持ったら、という声もあがっている。イラクでもアメリカの侵略を支持し、平和主義を尊重するのをやめる気配だ。彼らから見れば、日本のほうが今にも核保有国になろうとしているように見える。
 最後のChance! の小林氏は、不況で、アメリカの言うなりになるしかないだめな国、日本というのは錯覚だという。アメリカとの貿易で圧倒的な黒字の日本は、もうけた分をアメリカの国債を43兆円も買うことでアメリカに渡している。もし、
日本がアメリカ国債を売り払ってしまえばアメリカは戦争ができなくなる。日本は自分の持っている力を知らず、それをきちんと行使していない。それをする政府に変えれば、アメリカの戦争を止められる。これは、僕なりに言えば、日本は自分が豊かな大国であることをありのままに認め、それを平和(と生活向上)のために行使せよ、大国をおりる大国としてふるまえ、とでもいう議論だった。
 この考えは朝鮮の脅威についてどう考えるか、という質問に対しても発揮されていた。自衛隊はそれが合憲であるかどうかという議論を別にすれば、まぎれもなく世界第三位の軍隊である。朝鮮軍の年間予算は日本の20分の1にみたない。装備もまったくちがう。アメリカ軍の助けなど借りなくても、経済的にも疲弊している朝鮮がまともに自衛隊と戦って勝てるわけがない。日本にミサイル1発は打ち込めるかもしれないが、打ち込んだらあとはめちゃめちゃにやられてしまうだけである。戦いたくとも朝鮮は戦うことができない。それがやるとしたら、本当に追いつめられてどうしようもなくなったときだけである。
 自衛隊が現状で充分強い、という主張ははじめて耳にしたが、状況を前向きに変えていこうという意欲が強く感じられた。
 全体として、現在の日本の外交政策に理念の上で、オルタナティブを打ち立てようという模索であり、デモに結集している人々の力を平和創出の政治変革に転化する必要を強調するシンポジウムとなった。
 シンポジウムは、参加者全員の拍手のなかで終了した。

なお、以下から、25分程度のシンポジウムのダイジェストビデオが見られます。
http://no-war.jp:8080/ftp/multimedia/WPN45.mov