読売新聞を読むとイラク戦争はもう片がついたようで、戦後のことばかりが問題のようだが、毎日新聞を読むとまだ戦争中であることがわかる。バグダッド市の略奪等の横行を憂えて、国連等が米英に当面の治安維持の責任がある、と呼びかけているのに、米軍はまったくその様子がない。(バスラで英軍ははじめている)それも無理はない。バグダッドはまだ戦場なのである。米軍は掃討作戦にしか関心がない。
毎日の従軍記事(エンベッドというやつである)は、朝鮮日報の女性特派員のものもよく載る。このことを、某右派系週刊誌は「憂国」の情で、毎日新聞の非国民性として攻撃していたが、僕はもちろんよいことと考える。
彼女の記事によれば、「権力の真空状態を利用して、イスラム原理主義勢力がバクダッドに浸透しつつある。バグダッドはかつてないほど危険な状態だ」というのが11日日本時間正午における、バグダッドの米軍の会議での報告だという。ライフルを抱えた米兵はバグダッドの民家を一軒一軒しらみつぶしに調べ、「フェダイン・サダム」や民兵、武器の捜索を展開中なのだ。
独仏露の会談で、サンクトペテルスブルクから、三国共同の主張が発せられた。内容骨子は、英米の占領は事実としては承認するものの、現在イラクには合法な政府が無い状態であり、ただ国連のみがイラクに合法的な政府の創立を保証できる、とするもの。
ベルファスト声明で、米英が自分の占領下でつくらせる傀儡政権を国連が承認するように求めたのに対する三国の拒否表明だ。ベルファスト声明を第二のヤルタとは認めないと言っていることからも主旨明白である。
川口外相はイギリスで、5原則へのイギリスの支持をとりつけた。そして、いかなる形でもよいから、なんらかの国連での復興決議を実現したい、と意見一致したそうである。
焦点は、国連で何らかの決議が通るか、そして、その決議がアメリカの対イラク「民主化」ロードマップを承認するものとなって、英米の占領を正当なものとして追認してしまうか否かに移る。
国連に平和維持の独自の機能が残るかどうかは、このことにかかっている。
菅井がすでにこのさざ波イラク戦争欄で紹介したように、日本の5原則は、文字通り読めば、アメリカの占領方針とは正反対のものである。イギリスがイラク国民に保証している安証文も同様である。この対米従属の二カ国政府がどのようなサーカスの芸当をしてみせるのか、よく目をこらして見なければならない。