アメリカがイラクの解体と混乱を推し進めつつあるのではないか、と危惧させるいくつかの報道がありましたので、報告します。
その1
ニューズウイーク電子版は、30日、ブッシュ大統領が近く、イラクの復興を指揮する民政官に、元職業外交官のポール・ブリーマー氏を任命すると報じた。イラク復興人道援助室(ORHA)のガーナー室長の上に立ち、イラクの新政権構想を監督する。
だが、このブリーマー氏はテロ対策の専門家なのだそうである。
その2
占領軍としての責務である治安維持を英米軍は果たせていないので、米国は、イラク国内を5つに分割して、NATO諸国の分割占領にして、「現地イラク人に好印象を与え」ようと考えている。「解放者として迎えられた」はずのアメリカは、それでもまだ足りず、もっと好印象がほしいらしい。
5か国のうち、4か国はイラクに派兵した米・英・豪・ポーランドであり、残り1か国は政治的に米英を支援したスペインか、イラク領海に潜水艦を派遣したデンマークなどとみられている。「政治的に米英を支援し」「インド洋に補給のためのイージス艦を派遣し」ている日本の名前は残念ながらあがっていない。
ポーランド政府は1500人の派遣を検討中で、「米国が派兵経費を全額負担する」方向で交渉が進んでいるという。これでは、アメリカ軍とまちがえられてしまうだろう。
ちなみにイラクの国土は日本とあまりちがわない43万8千平方キロメートル、5等分したばあい、約9万平方キロメートルとなるが、これは東京都の面積約2千平方キロメートルの40倍以上もある。
第二次世界大戦で負けた1945年に、日本に進駐した占領米軍は沖縄を除いて43万人、一番多い神奈川県には一県のみで8万5千人入った。神奈川県の面積は2500平方キロメートルである。60年前のことゆえ、武器も通信手段も異なるので、一概に比較できないが、それでも1500人では無理だろう。付け加えると、現在の在日米軍は4万7千人、自衛隊は約24万人いる。
その3
5月1日付共同通信によれば、米政府はイラク経済を全面的に米国型の市場経済に改造する計画を策定、国営の石油産業などを民営化するとともに、証券取引所の整備などを図る方針だ。1日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルが米政府の非公開文書を基に報じた、とのこと。
米保守派はこの計画がアラブ諸国に米国型資本主義を根付かせることができるかどうかの「テストケース」になるとみているらしい。