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「イラク戦争」討論欄

新谷さんへ

2003/5/10 東、40代、公務員

 新谷さん。
 3日の投稿、ありがとうございました。内容に共感しました。
 もちろん私個人としては、「イラク戦争」が「パレスチナと関係ない」などと思ってはいません。なぜイラクなのか(軍事独裁政権でかつ大量破壊兵器保有国なら、ほかにも現にあるじゃないか)、という問いに対する答えの、少なくとも一つは、フセインがイスラエルに対して原則的対決姿勢をくずさない例外的なアラブ政治家(の一人)であった、という理由があるだろうと考えます(もちろん、サダム・フセインを一種の「希望の星」にしてしまうようなパレスチナ人の絶望的な状況が、二重の意味で悲劇的なのだと思いますが)。
 ところで、5日NHKの、子どもの日の特集番組に、アジアの5つの国(地域)の子どもたちの今を紹介する番組がありました。ごらんになったでしょうか。その中で、パレスチナとイラクの子どもたちも紹介されていた。
 その番組は、「イスラエルによる占領が続くパレスチナ。子どもたちは今日も銃声のなかで暮らしています」のナレーションとともに始まった。去年のイスラエル軍の侵攻で家を破壊され、イスラエル軍による「外出禁令」下、母の制止にも関わらず登校する13才のジェニンの少女ニスリーン・マターヘンが、番組最後で、将来の夢を聞かれて答えていました。「先生になりたい。私と同じような子どもたちを教えたい」と。彼女は優しい笑顔で答えていたのですが、そのあとに付け加えた一言は、「もし大人になれたら」、だった。私は彼女(たち)の生存と、夢の実現を願わずにはいられません。
 イラク、バグダッドも紹介され、病院で子ども死体を前に、「これで二人目だ」と頭をかかえて泣きくずれていた父親の映像も、胸がいたみました。クラスター爆弾で負傷した少女ハディール・カディムのことも。
 あちこちで、政治ゲーム的な感覚の発言が見受けられますが、「死者何人」というような数字には還元され得ない具体的人間(ニスリーン13才、ハディール13才というような)に対する想像力を持ちたいものだと思います。
 さらにまた「イラク戦争」から遠ざかってしまいそうですが、新谷さん(や菅井さん)が、アメリカの「ダブルスタンダード」の一例としてあげられていた、73年のチリの軍事クーデターの話に一言。
 あなたと私(それに菅井さんも)は同世代のようです。70年代前半に共産党の周辺にいた人たちにとって、民主的に選挙で実現した社会党・共産党主体のアジェンデ政権が、アメリカの支持・容認のものとに軍事力でつぶされたあの事件は、衝撃的な記憶です。大学の文化祭である教室に入ると、抗戦中に死んだアジェンデ大統領の最後の演説の肉声を流しているところがありました。また学内のあちこちに英語で「ウオンテッド」と書かれたピノチェト将軍の写真ポスターが貼られていた。また私は共産党系の団体が主催した亡命音楽グループ「キラパジュン」の公演にも行ったものです。しかし、この実例も、私らより若い人には、ここでもあんまりピンとこないのでしょう。ピノチェトが犯罪者として訴追された裁判も(老齢その他で中断されたようですが)、一応新聞報道もあったのですが。菅井さんが紹介していた岩波新書「戒厳令下チリ潜入記」も、(クーデターの悲惨はおいて、当時の政権の裏をかいて潜入したその記録を)痛快な思いで読んだものです。
 イラク占領についての新しい国連決議のニュースもありました。占領の今後を見つめたいと思います。同時に、アメリカとイスラエルが変わらなければ、変わりようがないような、パレスチナ(6日からイスラエルの「建国記念週間」にともない、完全封鎖のようです)の今後も。
 長くなってすみません