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「イラク戦争」討論欄

私の視点 外交の原点忘れ なし崩し   坂本 義和(東大名誉教授)朝日6・21付

2003/6/21 長壁 満子、40代、金融

 高弘さんへ、
 私は、あなたにこれ以上、直接語る言葉をしりません。他の多くのかたが、私からすれば、適切な指摘をされているようにみうけられます。
 で、いいだしっぺの私に責任もあるとおもいますので、最低限、気になるときに、原稿を寄せたいとおもいます。
 あなたは、恐らく、朝日はお読みにならないとおもいますので、紹介させていただきます。朝日は、ごくごく、普通の新聞ですよ。

 --たしかに米国は数々の醜い戦争をしてきたが、同時に独立宣言以来の「平等な人権と自由」、またウィルソン大統領以来の「国際協調による平和」という人類普遍の理念で世界の多くの人々をひきつけてきた。日本の憲法も、その一つであり、それが国際社会にいきる日本の原点となった。
 だが法の支配を無視し、強者支配の不平等世界を当然視するブッシュ政権は、世界に訴える理念を失ってしまった。戦後はじめてのこの事態を前に、日本はそれでも同調を続けるのか、越えられぬ一線で踏みとどまって原点をまもるのか、重大な岐路に立っている。
 第二に、日本ははじめて北朝鮮の脅威に真正面から対峙しているのだから、米国の戦争の正当性を問わないリアリズムが必要だという声がある。これは多角的に論じるべき問題だが、ここで一点だけ言えば、先制攻撃を公然と選択肢に加える米国への支持は、日本の安全保障に合致するリアリズムなのかは疑わしく、北朝鮮との対立の非軍事的解決を文字通り命懸けで追求する、韓国のリアリズムをこそ学ぶべきなのだ。
 第三に、国連の安全保障機能の限界が見えた以上、イラクでも米占領軍を支援すべきだという意見がある。たしかに日本には国連を理想化する傾向があり、その反動として国連に幻滅する人もいる。しかし、もともと固有の強制力も経済力も持たない国連の安全保障機能に限界があるのは当然だ。国連の重要な役割は、ある政策や行動を国際社会の視点から正当化する機能にあり、日本はそれを尊重するべきだ。国連の決定が常に正しいとは言えないが、国連に認められない政策は正当性を欠く。米国のイラク戦争がそうだ。