6月10、朝日12面「私の視点」に、宮田律先生(静岡大、イスラム地域研究)の投稿が掲載されているにで紹介する。
・・フセイン政権時代の抑圧の実態がメディアでも頻繁に 伝えられるようになり、国連の承認を得なかった米英による開戦までの経緯が忘れられそうな様子だ。・・フセイン政権には種々の問題があった。しかし、・・
フセイン大統領は、中東イスラム世界に干渉する米国や、パレスチナを占領し続けるイスラエルに抵抗したが、その姿勢にアラブ・イスラム諸国で多くの共感や支持があったことも事実なのだ。
イラクとは遠く離れた北アフリカのチュニジアでも、フセイン大統領の肖像写真が市場の真ん中に飾られているのを見たことがある。また、イラク戦争中の4月上旬にトルコ南部のクルド人村落を訪ねたとき、クルドの同胞を虐げてきたフセイン大統領も非難されるべきだが、罪のない市民を殺害した米英のほうがもっと悪いという声に数多く接した。・・トルコのアラブ人村落では、「日本はなぜイラクの味方をしないのか」という発言も聞いた。・・・
イラクでは、米国が民主主義の価値観とは相いれないと考えるイスラム勢力が、人々に飲料水、食料を供給し、さらに独自の治安維持組織をも活動させている。
イラク戦争後の中東の政治や社会に、ムスリムが特に重ん じる価値観である「正義」が実現されなければ、いっそう不安定な中東世界となるだろう。パレスチナ和平の進展、経済格差の是正、民意が反映される政治、米国の干渉的な姿勢の改善などに、国際社会はより多くの関心をもたなけ ればならない。イスラム過激派のテロが多発する不安定な 時代から世界は脱却できない。
そして、13面には、不拡散揺るがす「小型核」と題して、軍内部にも慎重論のある、小型核兵器を実験できるよう政治的、法的な地ならしを着々と進めているーーブッシュ戦略を紹介。
相手に「真の恐怖」を与えるために、圧倒的に優位な軍事力と、それを行使する意思を相手に見せつけることで、大量破壊兵器の開発や使用を思いとどまらせるという論理だが、相手国に本当の恐怖感を抱かせる「使える核」が欠かせないと判断したーーという狂気論。
米レキシントン研究所副所長・ダニエル・グレ氏は、「米国や同盟国の安全保障が最優先。核不拡散はその次だ」と断定する。
こうした、倒錯論を、天下の朝日で、堂々と述べること のできる今の時代に、私は、慄然とする。まさに、狂気の沙汰である。
最後にしんぶん赤旗「国際面」
検問所襲撃で7人死亡 パレスチナ 3組織が犯行声明
イスラエル治安筋によると、武装したパレスチナ人グループが8日朝、同国とガザ地区の協会にあるエレズ検問所付近のイスラエル軍監視ポストを襲撃して、イスラエル兵4人を殺害、軍はパレスチナ人3人を射殺。4日のヨルダンでの三首脳会談後、これだけのイスラエル人が殺されたのは初めて。(いままでは、パレスチナ人のみが圧倒的な量で殺された)
イスラム原理主義組織のハマスとイスラム聖戦、パレスチナ解放機構(PLO)主流組織ファタハの軍事部門「アルアクサ殉教者部隊」の三組織が共同の犯行声明をだした。
写真は、パレスチナ人に射殺されたイスラエル兵士の葬儀で泣き崩れる遺族や友人たち(ロイター)とある。こうしたテロ攻撃の被害者側遺族の写真が掲載されるのは、イスラエル人だからである。7人のうち、3人は、パレスチナ人であるのにである。いつでも、アメリカ、イスラエルの人命度は重く、正義を求める側の声は、封印される。
見出しも、誤り。検問所でのことなのだから、理不尽な弾圧があったはずである。3組織の犯行なら、4人死亡である。また、犯行声明をだすくらいなら、これだけの小規模でないはず。真実は、イスラエル人は、いかなる場合でも、パレスチナ人よりも、「優位」であるということだ。