オスロ合意から10年、相も変わらずくりかえされている、支配と抑圧。パレスチナ人に対する拷問と虐殺。異議申し立てを武力でつぶすもぐらたたき。アメリカとイスラエルの政治ゲームは、とどまるところをしらない。
各国民にしてみれば、あくまで、観客席。とばっちりが来ない限り、チケット代くらい払うのは我慢できるということか。
7月1日朝日社説「もう後戻りはできぬ」だが、現実の悲惨に比して、あまりにも、楽観論。「ブッシュ大統領がみずから調停に乗り出し、その後もパウエル国務長官やライス補佐官が積極的にうごいたからこそ、事態はここまでたどりついた。和平の道を確かなものとするための米国の役割は、これからますます重くなる。とくにシャロン政権に圧力をかけ続けることが大切だ」と書く。
そもそも、パレスチナ問題は、どうしておこったのか。どうして、今あるのか。イギリスをはじめとして、各国先進国の負の遺産をパレスチナに押し付けたことからはじまっている。被抑圧者であったユダヤ人は、抑圧者の奴隷になることで、パレスチナ人を抑圧する側に移行。この構造・仕組みをわすれてもらっては困る。
イスラエルを中東支配の根城にするアメリカが今日までとってきた狙いは、明々白々。ユダヤ人もパレスチナ人も、いかに駒として、自国の国益にかなうかが、問題。こんなことは、エリート集団の朝日論説委員の方なら、ご存知のはず。よって、朝日の社説を書くのは、至難の業。欺瞞を承知で、書かれていることが、冷や汗とともに伝わってくる。
9・11以降、ブッシュの「テロ掃討」作戦に便乗したシャロンは、パレスチナ人の虐殺をエスカレートさせた。
「イスラエル人の自由と安全のために」パレスチナ人殺しを過激にすすめてきた。そんなイスラエルに唯一抵抗してきたイラクが、米国によって壊滅させられると、またまた、いい気になって、したい放題である。気になるのは、世論のみ。
で、米国と連携の「ロードマップ」は、都合よく駆け引きの材料にされている。
「ガザ自冶区内の道路封鎖が段階的に解かれ、パレスチナ人の移動の制限が大幅に緩和される見通し」のロードマップをえさに、自冶政府は過激派の武器の押収やロケット弾によるイスラエル攻撃の防止などの義務を負うというものだが、そもそも、パレスチナ自冶区内で、自由に生活、移動できないのが論外。こうした囚人の生活を強いるイスラエル軍の侵入をこそ、何の条件もつけず、糾弾、撤退させるべき。
ここからがスタートである。そして、国際的な司法の場で、これまでの、戦犯過程を冷徹に検証、裁くこと。
また、ハマス等組織の武器云々を言うのなら、イスラエルそして、アメリカの巨大破壊兵器の武装解除が先である。世界を脅威においやり、実際にその蛮行を見せ付けたアメリカこそ、またイスラエルの残忍性こそ、問われるべきである。
イスラエルに武器を、資金を流し続けているテロ国家をこそ、世界は包囲し、厳しく、監視しつづけなければならない。このテロリスト養成国家が悪の根源である限り、世界がこの力に屈服する限り、すべての紛争と戦争の危機は去らない。反アメリカ・イスラエルは、反撃・自衛のために武器をもつ。
従って、日本の安全圏にいて、権力者の妄言に追従し、「テロコン」「テロコン」とばかの一つ覚えのように、繰り返している限り、同じ穴の狢である。
この間、現実をみてみると、イスラエルのシャロンの家族も、アメリカのブッシュの近親者も、ひとりとして殺されることはなく、ハマスの幹部、ハマスの子、叔父など身内が次々と殺されている。一桁少ないといっても、イスラエル・アメリカの兵隊は、貧困層が圧倒的である。パレスチナ側は、等しく貧しく、正義と大義に燃えるものから殺されていく。圧倒的な大量破壊兵器をもつものが支配層であるか、否かの差であろう。
繰り返すが、大量破壊兵器の根絶は、まず、アメリカ・イスラエルが先であることは、論をまたないが、「ロードマップ」の陰にかくれた、「3ヶ月の停戦合意」などという文言を、そっくりそのまま信じ込むようなことはやめてもらいたい。
ブッシュの「ハマスは根絶されなければならない」=「ガラガラヘビ作戦」は、撤回するつもりはないのである。
「国際社会の役割も重要である。停戦を持続させる鍵の一つは、パレスチナへの復興、人道支援にある。そんななかで、日本のパレスチナ問題への関心や貢献論議は、イラク問題に比べて余りにも乏しい」と朝日社説はおわるが、そもそも、メディアは、パレスチナ問題を正しく報道してきたのか、といいたい。この期に及んでも、半分も評価できない朝日社説であるのだから。