定期購読の雑誌「金曜日」を開くたびに、私は、地理的、心理的に遠くに追いやりたい「戦争」に否応なく直面させられる。日本ビジュアルジャーナリストの面々、今回は、豊田直巳さんである。6ページにおよぶルポは、この度の「イラク戦争」がもたらした、すさまじい放射能汚染の実態を告発。
住宅街の空き地に放置されたイエローケーキ(ウラン精鉱)、その周辺で、ウラン水をアヒルがのみ、ウラン草を羊がはんでいる。米英軍が撒き散らした放射能のなかで、こどもたちは、精一杯あそんでいる。
イラクの困惑状況に、一時は、フセインのプロパガンダに乗せられたかとおもった豊田さんだが、イラク最大の小児病院の責任者であり、バグダッド大のサルマ医師はいう。
「それは本当の話です。かつては情報の制限もありましたが、今はなんでもはなせます。」フセイン政権時代から続く、経済制裁下での薬不足、医師の嘆きは、さらに桁違いに倍増しているという。米国がイラク攻撃をほのめかしたころから、戦争にそなえるため、さらに、25%の備蓄を政府が命じたともいう。
北朝鮮の実態が二重にかさなってくるのは、わたしだけであろうか。
そして、いつも、注目している、本誌編集部の成澤氏の記事、泥沼か? ネオコンの「無制限戦争」 イラクに続き、イランへも侵攻かーーである。
氏の文章は、いつも、戦争、事件の根源に迫るものがある。9・11以降、一連の米国の動き、そのネオコンのうごめきなど、深部をえぐりとってみせてくれる。
私達は、イラクでの戦争が、ブッシュの目論見がはずれているらしいことはなんとなくわかるが、漠然とにすぎない。 が、ネオコン・極右翼グループの中心メンバーであるJ・ボルトン国務次官の言葉をきけば、恐怖が現実に蘇る。
この戦争きちがいは、2月、イスラエルのシャロンと会見の際、「われわれは必ず、イラクを攻撃する。そしてバグダッド占領後、シリア、イラン、北朝鮮を片付ける」と、のたまったのだという。この言葉どおり、イラク、そして今、イランの情勢は危うい。
6月初旬、クウェートの国際空港に、米軍のC-130輸送機が着陸。「空港内で国防総省とCIAに直結する二本の回線の設置作業を始め、これとは別に、イスラエルの諜報機関・モサドからの特殊な通信をうける受信装置も設置した。通信は、今後、モサドの秘密工作が展開されているイランの首都テヘランからおくられてくる。」この一団は、ワシントンから派遣された対イラン戦ための先発隊であるという。
こうして、「中東ドミノ理論」(Pウォルフォウィッツ国防副長官)は、着々と準備されていく。
戦争屋のその戦略は、パキスタン、サウジアラビア、キューバ、中国といた国々も対象と想定されている。〈英・ガーディアン紙 6/14)
日本国内で、やれ武器がどうの、自衛がどうだの、危険がおさまるだろう11月以降にだとか、トンチンカンな議論がされているが、全政治家は、現実をみることはもちろん、その根本原理に目をむけたらどうか。石油利権やら米国のご機嫌とりでなく、ほんとうに、日本が、世界が、壊滅させられる、この身震いする狂気にしっかりと対峙するときである。
他の政党はもちろんだが、共産党も、いかにも、レベルが低い。総裁選前であり、選挙目前であり、英知があれば、この「がまがえる軍団」になど、いくらでも勝てるのではないか。
マスコミもである。どうせ、売れればいいのだろうから、もうっちょっと、まともな取材をして、読者をうならせてくれないものか。朝日しんぶんも、赤旗も、今が正念場であろう。今、このとき、なにを書くか、何が書けるか、であろう。どうせなら、Aしんぶんだけは・・・と、後世に誇れる姿勢のほうがいいのではないか。過ちはいちどだけでいい。