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「イラク戦争」討論欄

N.Kさんへ(テロについて考える)

2003/8/25 さつき、40代

 自爆という、自らの生命を賭したテロが何故続いているかについて考えました。主因は2つあるでしょう。

1)圧倒的弱者が、圧倒的強者の残虐行為によって命を奪われ「絶滅」させられようとしている(と思っている)。
2)世界の世論や動向に、そうした現実を根本的に変えようとの意志やビジョンが見いだせず、共に「絶滅」の運命を背負った仲間達以外に味方がいない(と思っている)。

 このような現実を生きている者らが、世界中から「生きる価値のない者」との烙印を押されたと感じるのは自然なことです。誇り高き者らであれば、その一部に、自爆という手段で一矢を報いることによって自らの尊厳を恢復しようと考える者が現れるのもまた自然なことだと思います。それは、自らの命を捨てる行為である点において、N.Kさんの仰る「抵抗運動による実力行使・戦闘行為」とは根本的に異質な行為です。

 確かに、今回の国連の非戦闘員に対するテロについて言えば、彼らは真の敵を見誤っていて、彼ら自身の「未来の為」にもならないことです。しかし、彼らの自爆テロが、そもそも「戦略」など考える余地さへない、未来を失った者に唯一残された自暴自棄の行為としてなされている時に、「その戦略は間違っている」と主張することにどんな意味があるでしょうか? そうした主張は、少なくとも自爆テロを決意している者の魂には全く届かないでしょう。万が一、説得に応じて自爆テロを思いとどまる者が現れるとして、その者が、やがてののちに米兵の一撃によって無惨にも虐殺される悪夢を想います。その可能性は現状では捨てきれません。

 N.Kさんの主張は、直接的には彼ら「テロリスト」自身にではなく、「このようなテロ行為に同情したり」、「テロを容認する」者らへ向けられていて、テロリストに同情せず、テロを容認しない思想的立場を確固として確立し、そのような世界中の世論の包囲の力で誤ったテロを思いとどまらせるべきだと、そういう意味に理解しました。そのお気持ちは分かるつもりですが、そうした主張が、現にテロの生まれる主因たる前掲2)の状況を追認・強化しています。テロの「下手人」は死亡していますから処罰することは不可能です。「テロを容認しない」としてなされている行為、「テロリスト」の仲間を事前に捉えて処罰するような「警察力」の過剰が、現に前掲1)を構成してもいます。
 もし、自らは安全な場所に居て、隠された野心のために裏で自爆「テロリスト」を組織し煽る者が存在するとしたら、そうした行為者は摘発、処罰されるべきです。しかしその際にも、煽動者の主張が説得力を持つような情況を改める努力が優先してなされていない限り何も改善されないでしょう。戦争の主犯であり、テロを生む元凶である米英軍をイラクから「撤退」させるのが何よりの優先事項です。

 テロはこの世界からなくさなければなりません。しかし、テロと戦争が圧倒的弱者と圧倒的強者との間で連鎖している時に、その連鎖を断ち切ろうとするなら、戦略のない圧倒的弱者にではなく戦略を持つ圧倒的強者へ向けて、「その戦略は間違っている」と主張し続けるべきです。とりわけ、圧倒的強者を支えているアメリカ国民へ向けて、テロはなぜ起こり、なぜなくならないのかを語り、戦略の変更を説得しなければなりません。それが、ひいてはアメリカ国民のためでもあることを説得できない限りテロはなくならないでしょう。そのための言葉を紡ぎ出す努力も私達に求められているのだと思います。