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「イラク戦争」討論欄

イラク派兵、自衛隊員は今ー

2003/9/16 寄らば大樹の陰、50代、苦闘するフリーター

 少し前より「自衛隊が派遣されたからでは遅い」と細々と「自衛隊のイラク派兵反対、行くな、行かせるな」のビラを作り駅頭などで撒き始めた。
 正直、仕事がなかなかないし、自衛隊の本格的海外派兵が真近に迫り、海外からは「9,25行動」や「10,25行動」等が盛んに呼びかけられているのに、この国では冷夏や遅れてきた盛夏でみんなグッタリしているせいか、殆ど反対や阻止の動きを見つけることが出来ないので、やむなくセカセカと動き始めたのだ。
 ある小さな町の駅前で、「反応が余り良くないな」と思いながらも、ビラのほぼ半分を配り終わった頃、チャリンコの大柄な30台後半と思える男の人に出くわした。
 ところが実は彼、近くにある自衛隊方面隊の現役自衛隊員だったのである。
 勿論名前も階級も言ってはくれない、しかしおそよそ30分、笑ったり声を大きくしたりの会話だったが、それなりに建設的な意見の交換が出来たのだ。
 おそらく彼は勤務10年~20年の何かの階級を持つ中堅の自衛隊員である。
 彼の知識、情勢認識は相当に深く拡がりを持っており、この「さざ波通信」の方でも実践面ではとても太刀打ちできない質と、そして人間的な包容力すら感じられた。
 それが隊内でも研修の結果なのか、彼自身の勉強によって身につけたものかは判らない、しかし彼らの派遣に向けた準備は確実に進んでいると実感した「安易で楽観的な外からの働きかけ等ではとても阻止など出来ないな」が、その時に受けた率直な感想である。
 彼は「イラク派遣については、派遣の指名があれば隊員の当然の義務として行く、危険な事は承知している、現地で戦闘があれば参加し武器も使用する」と言い切り、「これまでのPKOで自衛隊は色々な経験を重ねてきた,その蓄積がある、カンボジアの一次で報道はされなかったが極めて危険な目にあった、東チモール、コソボにも行っている、しかし今一番危険なのはパレスチナ情勢の影響を受けたゴラン高原だろう」と言い、私が「朝鮮半島で戦争があれば行くのか、韓国では同じ民族の戦争はしないとの意見が強いがー」と問うと「戦争になれば躊躇なく殺しますよ」とも言い切った。 国会で様々に討論された「危険なところには行かせない」「復興支援、人道援助に限る」等イラク派遣を正当化する、見え透いた世論操作論議は、もうとっくに自衛隊現場では突破されているのだ。
 実質的にも論理的にも「自衛隊の軍隊化」は既に殆ど完了している、かつての「自衛隊に行って色々な免許を取る」「適当な職がないから取り敢えず自衛隊に入った」等の論理は、確かにまだ一部の若い隊員の隊外的な理由にはなるだろうが、それよりももっと遥かに強い軍隊的締め付けが、隊内で徹底されている様に思えた。
 「イラクに行って戦死したら一億円の補償が入るらしいがー」との問いには、「死んだら何にもならない、戦場で死んだら今掛けている保険も全く適用されないので全部解約する」と苦笑した、あつかましく「このビラ隊内に持ち込んで密かに撒いてくれませんか」と依頼すると「そんな事したら処分され首になる,この年で職なんてありませんよ」と笑ったのだ。
 彼の様々な反応は、彼が中堅隊員であるが故の対応であることに違いはない、もっと若い隊員であれば全く別の回答を得ることが出来たかも知れない。
 しかし私たちが机上でよく論議する「自衛隊は憲法違反だ」「国連の議決もない」また「専守防衛のみ認める」とか「自衛隊は防災対策ばかりやればいい」等が無責任な何とも軽々しい議論であることを、身をもって知らされたのである。
 私はこの秋から来春、自衛隊のイラク派兵が阻止できるまで全国的規模で連続的に闘って行くことが必要だと思っている。
 私たちの自衛隊員への呼びかけは小泉や石破、安倍の様な、それこそ自衛隊員の命をもてあそび、その尊厳と主体性を奪い、帝国主義軍隊として権益を守る為に、イラクの人々を支配し殺す事を目的に派遣する事を絶対許さず、同じ帝国主義国の一員として人間的連帯を呼びかけ、自衛隊員には海外派兵拒否の権利があり、どの様な命令によっても不正義の侵略出兵は決して許されない事を、ありとあらゆるところで訴えて行きたい。
 イラク侵略戦争の不正義性、小泉や石破のペテンをより徹底的に暴き、派遣が間違いなくイラクの人々を殺し、また逆に殺される事であること、その犠牲になるのは、本人はもとより掛け替えのない家族であり恋人である事を訴え続け、そして可能な限り隊員との直接的接触を図り、家族・親族の深刻な悩みにも応じる事の出来る態勢作りも必要だと思っている。
 既に一部報道されたが、この年間3万人以上の自殺者がいる「自殺地獄日本」でも、このところ目立って自衛隊員の自殺が増加しているという、それも階級差別に基づく戦前の皇軍の体罰に似たいじめが原因だという。
 だが今後これにイラク派兵をきっかけとする自殺が増える事も十分考えられるのだ。
 情勢は私たちの態勢にはお構いなしに急速に進行している、決して待ってはくれない。
 別れ際に私は「この前ヒロシマの秋葉市長が言ったように世の中は急速に戦前へ回帰しているように思う、怖さを感じている。
 今後も連続的に活動したいと思ってが、1人でも2人でもいい友達を紹介してほしい」と言ったが、彼は「難しいな」と微笑みながら宿舎に帰って帰っていった。
 この会話が今後どの様な影響を持つのか、ただ単なるエピソードで終わるかまだ判らない。
 しかしこれによって今隊内がどの様な動きをしているかが極一部だが判ったし、私たちにどの様な闘い方が必要かも判ったような気がしている。
 闘いはまだ始まったばかりである、夏バテから早く回復し、全国で自衛隊のイラク派兵絶対阻止の闘いを構築して行こう!

 そして最後にこの事を是非つけ加えておきたい,それは私がビラを配り始めた時、その広場の自転車の管理人・シルバー人材センターのおじさんにビラを渡そうとした時の事である。
 おじさんは何と「私たちはティシュでもビラでもいっさい受け取らない様にしている、受け取ると市民よりセンターへ連絡が入りすぐ首になってしまうから」と言ったのだ。
 石原都政下新宿歌舞伎町を先頭に、監視カメラによる市民監視が全国的に強化されている事は知っている、しかしこんな小都市まで市民による密告態勢が出来ているとはー、びっくりさせられショックを受けてしまった。