長壁氏が11月18日付けの投稿で、しんぶん赤旗の「権威」を援用したのにはまず驚いた。
ここの投稿者で赤旗を引用すれば水戸黄門の印籠よろしく恐れ入る人がいるとは思えないが、これまで赤旗のテロ批判を非難してきた同氏の援用はご都合主義としか思えず、11月22日付けの赤旗主張「武力でなく法と理性で」を読めば、全く的はずれな援用であることは明らかだ。
問題は、長壁氏自身の議論が混乱していることだ。
ブッシュとその同盟軍によるイラク侵略が許されざる大規模なテロ行為であることに異論のある人はここにはいないだろうし、現在イラクでゲリラ的に行われている米軍への攻撃が正当な反撃であることにもおそらく異論はなかろう(ただし、私は後者を「抵抗権」という歴史的陰影を有し外延の不明確な概念でなく、すでに書いたとおり、法的により明確で限定的な概念である「正当防衛」と理解している)。
何度も繰り返しているように、ここでの論点は“一般市民・非戦闘員を対象とする無差別テロ”、具体的には9.11テロやイスラエルの一般市民を狙ったハマスの自爆テロ、国連機関や大使館へのテロ等々の是非である。
長壁氏は「9・11も、国連テロも、サウジのテロも『米国のヤラセ』がとりざたされています」と書いているが、米国の謀略であるならばなおさらこうしたテロは非難しなければならないのではないか?
可能性だけを言うのならば、CIAが9.11のテロリストを泳がせていた可能性は大いにあるし(あれほどの結果は意図しなかっただろうが)、シャロンがハマスに直接または間接に資金援助をしている可能性だってある。要は、こうした無差別テロの暴力がブッシュやシャロンのより大きな暴力の口実となって最大限利用されているということだ。テロを擁護する人たちは、自爆テロへのセンチメンタルな同情をやめて、いい加減にこの関係に気付くべきだろう。
9.11以降の暴力の際限ない連鎖が何をもたらしたのか、少し考えれば誰にでもわかることだ。たくさんの無辜の人々の虐殺、産軍複合体の戦争推進勢力の支配強化、アフガンやイラクでのアナーキーと暴力の泥沼化、他方で米国や同盟諸国でのテロ対策としての様々な人権制限・・・。要するに、暴力と戦争がもたらすものはいつでもヒューマニズムと民主主義の危機なのである。だから、我々は何よりもヒューマニズムの観点から、暴力の連鎖を止めなければならない。
ついでに、天邪鬼氏の議論について
革命や民族解放のためにはテロを含め「なにをしてもいい」し、9.11は「必要最小限の犠牲」であると公言する氏とは、何を議論しても無駄だろう。氏がその主張に本当に自信があるのなら、こんなところで匿名で憂さ晴らしするのでなく、新聞・雑誌、身近なサークル、どこでもよいから堂々と実名で自説を開陳して、どれだけの人に理解されるか試されるがよい。
氏にとって、「革命」とは、「民族解放」とは、一体何なのであろうか? 人間解放を目的とする運動が人間を徹底的に否定するテロや暴力を手段とする背理がこの人にはわからないのだろうか。ヒューマニズムと民主主義を否定する「革命」は、結局のところ「革命家のための革命」であって、人民のための革命とは言えまい。
ソ連型社会主義の惨めな失敗を天邪鬼氏はどう総括したのだろうか?