「日本人外交官2人殺害」が報じられた。
殺害された2人は、「イラク戦後統治の民生部門を担当する米国防総省の復興人道支援室(ORHA)への要員派遣の第1陣として、4月にイラクに派遣され、ORHAが暫定占領当局(CPA)に衣替えした後は、バグダッドの日本人大使館とCPAの連絡調整などにあたっていた」(朝日コム)という。
現在のイラクは、米英による違法占領の状態にある。
事件の詳細はわからないが、イラク戦争における米英側の要員として派遣されたのであるから、イラク側からの攻撃の対象となることは間違いない。政府の言う「テロの可能性」よりも、国際法上、正当な抵抗・攻撃の可能性が強いとさえ言える。自衛隊のイラク派兵は、より直接的な違法占領への加担、侵略への加担であるから、その場合はなおさらイラク側からの攻撃対象となるだろう。
先日の国会での小泉首相と赤嶺議員との討論が話題となっているので、ネットでみた。
小泉首相は、国際社会の一員としてイラクに行くのだと言い、赤嶺議員は、国連に権限を渡せというのが世界の声だと言う。「国際社会」と「世界」の対決である。いったい、この人たちは、何を討論しているのだろうか?というのが率直な感想だ。
両者とも現状認識がそもそも間違っている。イラク戦争では、イラクと米英が戦争し、それが今なお継続されているのである。
イラクへの自衛隊派兵は、言うまでもなく違法占拠しているアメリカと闘うためではないのだから、イラク人のイラク人による復興のための派兵とは言えない。
それが人道活動であっても、戦争が継続されている以上、米英の同盟軍として戦争に参加するのと同じ意味をもつ。それがイラク派兵の核心である。イラクの世論やイラク側の抵抗の大小で決まるものではない。
イラク復興のために国際的な協力が必要ならば、米英が攻撃をやめることによって戦争を終結させ、撤退し、なおかつ正当性のあるイラクの統治機関が成立し、そこから復興のための協力要請が発せられる以外にはありえないのである。国連の関与をうんぬんするよりも前に、なによりも戦争の終結、そして米英の撤兵が問題なのである。
党指導部は、その基本的な問題をあいまいにしたままで、国連の関与を主張している。そこに、今回の問題発言の根源があると言えるだろう。
国連自体の問題点についてもあいまいにしてはならない。
今回の自衛隊派兵にしても、政府は国連の決議を根拠にしている。
上述のとおり、復興支援は戦争の終結が前提でなければならないが、この国連決議自体がそれをあいまいにしているのである。
また、湾岸戦争以来国連が果たしてきた役割をみるなら、米英のかわりに国連がうまくやれるかどうかは極めて怪しい。
湾岸戦争後に、イラクに経済制裁をし、多額の賠償金を負わせたのは国連である。それはサダムを倒すどころか、むしろイラク人民を苦しめたことはよく知られているところだ。
国連が米英でない限りにおいて、米英の攻撃に加担していない限りにおいて、イラクで攻撃対象にされるいわれはないが、みずからイラク人民に憎まれる土壌をつくった責任は逃れえない。
国連は、イスラエルにパレスチナ侵略の賠償をさせたことがあるだろうか? あるいはアメリカにベトナム侵略やそれ以後の数々の戦争・破壊行為の賠償をさせたことがあるだろうか? 国連が客観的にみて、どちらの側にえこひいきしているのかはっきりしているではないか。
イラク復興に国連の関与が必要だとしても、それはできる限り最小限のものでなければならない。