緊急デモの翌朝眠い目をこすってテレビを見ると迷彩服の自衛隊員の隊列が体調の号令で敬礼する姿が映っていた。それから輸送機に次々と乗り込む姿である。
画面が移り変わり、自衛隊員の家族やさまざまな人が日の丸の小旗を振る情景が映り、若い女性が子供を抱きながら日の丸を振って涙ぐむ顔が映っていた。
とうとうこんなものをまたも見なければならなくなった。一瞬私は子供の頃を思い出した。国防婦人団や町内会の人々が万歳万歳と日の丸を打ち振って出征兵士を送り出す光景である。
ザッ、ザッ、ザッ軍靴の響き、「かしらー右、前へー進め」
遠い記憶が心の底から蘇るのです。
暁に祈る
ああ あの顔で あの声で
手柄たのむと 妻や子が
ちぎれるほどに ふった旗
遠い雲間に また浮ぶ
ああ 堂々の 輸送船
さらば祖国よ 栄えあれ
春かに拝む 宮城の
空に誓った この決意
ああ 軍服も 髭面も
泥にまみれて 何百里
苦労を馬と 分けあって
遂げた戦も 幾度か
ああ 大君の 御為に
死ぬは兵士の 本分と
笑った戦友の 戦帽に 戦友=とも
残る恨みの 弾丸の跡 弾丸=たま
ああ 傷ついた この馬と
飲まず食わずの 日も三日
捧げた生命 これまでと 生命=いのち
月の光で 走り書き
ああ あの山も この川も
赤い忠義の 血がにじむ
故国まで届け 暁に 故国=くに
あげる興亜の この凱歌
(昭和15年)
哀調を帯びたメロディーでうたわれるこの軍歌が不意に私の唇から流れるのでした。自衛隊員が日の丸の小旗を打ち「振られがんばれよー」の声に背中を押されるように機内に消えていく。
「復興なんて嘘っぱち」「帰れ米軍、返せ自衛隊」きのうのシュプレヒコールです。
誰だ 天皇制を擁護するやつは。戦争で殺された何千万の人々をかくまで冒涜することが許されることか。大君の御為に死んだ兵士、それよりも悲惨な他国の人々の累々たる死者の魂を冒涜するのは誰か。しかも今再び自衛隊という名の大日本帝国軍隊がイラクに出征に行くのである。日の丸とハーケンクロイツがオーヴァーラップする。
日比谷に行こう。3月20日だ。六十年安保を越える戦いをやろう。日本政府よ、これまでの借りを返してやる。みんな、日比谷で会おうぜ、