イラクに派兵される自衛隊員の無事帰還を祈る「黄色いハンカチ」運動なるものが
喧伝されています。
その由来を調べてみると、イギリスで「黄色」が魔よけ・護身の意味を持つとされ
た民俗観念がアメリカに伝わり、出征兵士の無事帰還を祈って「銃後の庶民たち」が
「黄色いリボン」をつける慣習が発生し、その観念をもとにした原作を山田洋次監督
が「幸福の黄色いハンカチ」で映画化し(出征兵士が服役者に替えられている)、そ
れが今回の自衛隊兵士無事帰還運動のネタになっているようです。(毎日新聞によれ
ば山田監督ご自身は「黄色いハンカチ」運動をいやがっておられるようです。)
アメリカで「黄色いリボン」で無事帰還を祈られた出征兵士とはジョン・フォード
の西部劇「黄色いリボン」のようにまず騎兵隊員だったと思われます。その戦争の相
手とはアメリカ・インディアンでした。インディアンはアメリカ合衆国に何もしてい
ません。何もしていないままに土地を奪われ、同胞を虐殺され(サンドクリークの虐
殺とかウンデッドニーの虐殺とか)、貧しい居留地に閉じこめられたのです。当時の
一人のインディアン酋長は「望みはただわれわれの側から見た物語も語られることだ」
という、あまりにもつつましい言葉を残しています。しかし「黄色いリボン」をつけ
たアメリカ合衆国の「銃後の庶民たち」は「インディアンの側の物語」など念頭にさ
え浮かばなかったと思われます。
ウェブサイト「イラクボディカウント」によれば、昨年3月20日のイラク攻撃以
後、アメリカの「掃討戦」や「治安維持」のための「拘束・拷問」(TBSでも報道
していました)デモへの発砲などで殺されたイラク市民の数は一万を超えました。市
場原理主義のアメリカによって大量の解雇者が生み出されイラクの失業率は7割とい
います。ベクテルやハリバートンといったアメリカ独占資本は血まみれの手で大もう
けをしているのに、イラク人民はイラクの富の恩恵から疎外されたままです。イラク
人民の意志を代表する政権の誕生をアメリカは(そして国連も)望んでおらず、占領
が続く限りそれが実現されないと思われます。それが「イラク人民の側の物語」では
ないでしょうか。
「黄色いハンカチ」運動に参加している(あるいはさせられている)人たちが、そ
ういった「イラク人民の側の物語」を感知しているとは思われません。「黄色いリボ
ン」をつけたアメリカ合衆国市民が対インディアン戦を「正義の戦争」と思っていた
ように、イラク派兵を「国際貢献」だとか「復興支援」だと思っている(あるいは思
いたがっている)のでしょう。それは石油資源のための露骨な侵略戦争への政治的軍
事的支援でしかありえないのに。
こうして私には今回の「黄色いハンカチ」運動を、インディアン虐殺を銃後で支え
た「黄色いリボン」運動の再現だと思わざるをえません。
私は「黄色いハンカチ」運動に参加している、あるいは参加させられている、ある
いはそういう運動が存在することによって自衛隊の無事帰還をいのらない者は非国民
だといった脅迫観念を持たされている人たちに、「イラク人民の側の物語」に耳をか
たむけてもらいたいと思うのです。
だからさしあたり3月20日の国際反戦デモが、日本でも国民すべてに「これは」
と思わせる規模のものになってほしいと私は思います。だから、天邪鬼さん、長壁さ
ん、他の方にも再度の挨拶を送りたいと思います。3月20日に日比谷で会いましょ
う。