4月8日夜、イラクでの日本人3人の拘束のニュースが駆け巡った。その件に関し、翌日の赤旗に志位委員長の談話が掲載されたが、全く切迫感が感じられず、違和を感じる。
今回の事件は、次の経過の中から生じた。――米国が何の根拠もなくイラクを攻撃して破壊し、住民らを多数殺し続け、住民らの米国に対する怒りが沸騰。各地で抵抗が拡大し、ファルージャでは米国民間人4名が襲撃され、焼かれて引きずりまわされた挙句、橋の欄干に吊るされた。それに応え米国はファルージャにクラスター爆弾を撒き散らし、住民を無差別に殺戮し、7日にはモスクにも爆撃を加え、住民約40名を殺戮した。こうした攻撃に対し恨みが増幅、各地での抵抗が一気に激しさを増している中、日本人3名はバクダットに向かう途中のファルージャ近傍で拘束された。――まさに、武力による支配が憎しみを生み、それが増幅された結果として生じた事態である。
この過程から、今回の事件で言うべきは、“武力を用い力で押さえ込むやり方は、一層恨みを増幅し、人の命が失われるだけで、何の事態解決にもならない”ということではないか。即刻占領軍は撤退すべきだ。それも一刻の猶予も許されない。武力によらない復興支援を目指した3名の命を救うためにも、今すぐ政府は自衛隊撤退を言明すべきだ。
これに対し、志位委員長の談話は、――①民間人を人質にした脅迫は、断じて許されない蛮行。②政府は、拘束された3名の安全と釈放のためにあらゆる努力を尽くせ。③自衛隊派兵によるこうした事態が引き起こる危険性は、かねてから危惧されていたこと。改めて自衛隊の速やかな撤退を求める。――となっている。①、②では、志位氏の怒りの対象は拘束した犯人だけに向いており、その犯人からの救出を訴えているに過ぎず、この事態が生じる根本原因を作った米国の暴挙に対する告発がない。また、③では、自衛隊撤退が改めて叫ばれているだけで、“3日という期限の中で、ともかく政府は3名の命を守るためにも、即刻自衛隊撤退を言明しろ!”との切迫感がない。全く的外れであり、とても共感を呼べるものではない。
9日の赤旗の第一面、志位氏の談話の横に、8日夜の不破議長の演説会内容が紹介されていたが、この緊張感のない内容には怒りさえ覚えた。
不破氏は、“イラク撤兵を要求し、その理由として政府の論拠がすべて崩れたとして、小泉内閣がイラクへの自衛隊派兵の論拠とした「2つの大きなウソ」を挙げ、①「戦闘地域に出さない」については、イラク国民が占領支配に抵抗する危険な状況から、イラクに『非戦闘地域』などあり得ない。②また、「イラクでは、自衛隊以外に人道支援出来る組織はない」の発言については、自衛隊の現地での給水活動などをボランティアの活動と比較し、「自衛隊は人道支援には一番不向きな組織である」”と指摘している。不破氏にとって、イラク自衛隊撤兵の理由は、派遣先が戦闘地域であるから、また、ボランティアより活動が効率的でないからのようだ。
演説会の前日には米軍がファルージャでモスクを攻撃し、多数のイラク人を殺戮した。その事態を受ければ、自衛隊撤兵の論拠は、何より“住民を殺戮する暴挙への加担は即刻止めよ”ではないのか。それが中心に語られていないというのは一体どういうことだ。演説会での不破氏からは、正当な理由もなく多数の命が失われている事態に対する憤り、悲しみ、危機感が微塵も感じられない。
ああ今や、武器によらない本当の人道支援を実践しようとした、尊い3名の命が危険に晒されている。その貴重な人命を救うために、私には何が出来るのだろう。ともかく時間がない。即座にも自衛隊撤兵しろ! その思いを一人でも増やすことが出来たら、とこうして書いているが、そんなことで間に合うのか、それでいいのだろうか。