伝言板にて紹介させていただいた表記公聴会に初日(10月10日午後)だけ参加しました。
WTI(WORLD TRIBUNAL ON IRAQ)については、広島公聴会のHPに、以下のように記されています。
>WTIは、あの世界的なイラク反戦運動の中から生まれた世界的なプロジェクトです。戦争屋たちが侵略戦争の事実を隠蔽し、歴史を書き換え、戦争犯罪を歴史の闇に葬る前に、事実を調査し確定し、市民の手で国際法をもとに戦争犯罪者たちを裁こうと、世界各地の実行委員会が連携をとり開始されました。
初日は午後2時からの開催で、参加者は、収容人員300名弱のホールに150~160名程度と期待より少な目でした。以下、印象に残った証言から:
●実行委挨拶・経過報告・連帯挨拶等(省略)
●証言1:家正治さん(姫路独協大学法学部長)
「イラク戦争・占領の違法性」と題して、国際法の専門家の立場から、あらゆる国際法、国連憲章に照らしてイラク戦争は侵略戦争であり、現在の占領も違法であり、断じて許すことのできない戦争犯罪であるとのお話。質問への解答から、国際法上のテロの明確な定義はなく、「禿げと額の境目ほどの難しい問題」とのこと。
●証言2:池住義憲さん(自衛隊イラク派兵差止訴訟の会代表)
「自衛隊イラク派兵・多国籍軍参加の違法性・違憲性」と題して証言がありました。政府側は、憲法で認められた「平和的生存権」などの訴訟内容に関しては一切争わず、尋問でノーコメントを通すことに終始している。つまり、裁判官が違憲判決を出す筈はないとタカをくくっている。そうであるなら、世論の力で裁判官の良心を呼び覚ます以外にない。その意味で最近のコスタリカの憲法裁判所が出した判決の意味は大きいし、違憲訴訟をもっと大きな運動にしなければならない、等々。
また、(このテロ時代にあっては)軍隊によって国民の生命・安全が守られるというのは幻想である。いざテロや戦争がおこりそうになって逃げるとして、あなたならどこへ逃げるか。あなたを守ってくれる筈の軍隊の傍か、それとも軍隊から離れた場所か。現にイラク戦争が始まって、日本で最大の軍事基地のある沖縄へ行きたがらない人が増えて、沖縄は困った。よく考えればわかることである、等々。
●証言3:サミール・アディル(Samil Adil)さん(イラク市民レジスタンス戦線議長)
「占領に抗して-まやかしの『政権移譲』」と題してのこの証言は特に印象深いものでした。「イラク市民レジスタンス戦線」は、今年8月に組織されたばかりで、米英の占領とイスラム政治勢力による統治の両方に反対し、政教分離の新しい民主国家を目指して非暴力で闘う組織とのことです。
現在の暫定政府の構成は、占領軍の安易な判断によって組織され、大多数のイラク国民の願いとはかけ離れたものであることが証言されました。特に、無差別テロが彼らの運動の妨げになっていること、そうしたテロの温床にもなっているイスラム政治勢力(もともと欧米の支援によって育成されてきたという歴史的背景がある)やアラブ民族主義勢力が、多数、それぞれに組織を代表しているということで暫定政府内に参画し、影響力を行使していることへの懸念が表明されました。つまり、アラウイ政権はアメリカの代案であり認められない。イラク人自身の手によって暫定政権を立ち上げることをめざしているとのことです。
質問に応えて:
1)地域住民を組織することで闘いを進めており、いくつかの地方都市は彼らの影響下にあるが、現在のイラクの状況では非暴力を貫くことに本質的な困難があり、銃を持った自警団を組織せざるを得ない。
2)現に圧倒的多数のイラク国民がイスラム教徒という現状で、イスラム政治勢力を敵に回しての政教分離の主張は支持を得られるのかという質問に対して、政教分離と信教の自由を守るという二つの原則は、大多数のイラク国民に受け容れられるだろう。欧米のメディアの中では、イスラム社会の中に政教分離を主張するグループが存在することはほとんど無視されている。運動を広め、世界世論を動かす必要があるとのことです。
彼らの運動には大きな困難が予想されますが、イラクが、政教分離の新しい民主国家として生まれ変わるとしたら素晴らしいことで、その主張を広める必要性を痛感しました。
●証言4:OWFI(Organization of Women's Freedom in Iraq:イラク女性自由協会)代表
この証言はプログラムになく、急遽なされたもので、OWFIの簡単な紹介のみでした。OWFIは、03年6月に結成され、イラク国内に広がるイスラム政治勢力、アラブ民族主義勢力と対抗してゆくこと、イラクの女性が政治意志決定のプロセスへ参加できるようにすること、および女性の雇用確保をめざすことなどを運動方針として掲げています。この6月に記者会見した際には占領軍から圧力を受けたとのこと。それでも、イスラム法導入反対のデモなどで、イラク暫定統治機構にイスラム法の導入を断念させるという成果を勝ち取ったことなどが報告されました。「イラク市民レジスタンス」やUUI(イラク失業者労働組合)とも共同歩調をとっているようです。
休憩を挟んで文書による質問に答える形での質疑応答があり、最後に共同代表の湯浅一郎さんから「まとめ」の話しがありました。
日本政府は「思いやり予算」と称して年間3,000億円もの我々の税金を駐留米軍につぎ込んでいる。その一つの岩国の米軍基地を飛び立った軍用ヘリコプター6機(?)の内の1機が沖縄で墜落事故を起こし、残りのヘリコプターはイラクへ運ばれ、テロ掃討の名の下に、日々、イラク市民の殺戮作戦に使われている。日本国民として責任を感じないわけには行かないと話されました。
以上、予定時間をオーバーして午後6時に終了しました。
●以下、WTIの重要性について述べます。
この動きは、イラク戦争開戦直後に世界中で同時多発的にわき起こりました。かって一般投稿欄でも紹介させていただきましたが、日本では03年3月22日に広島市立大学広島平和研究所教授のクリスチャン・シェラーさんが、ブッシュ大統領・ブレア首相の戦争犯罪を国際刑事裁判所(ICC)で告発しようと呼びかけています。同年4月には、アメリカ・イギリス・スイスなどの法律家・人権活動家のグループが、「アメリカの軍事力行使を抑止するためにICCを利用する」との宣言を発表しました。
しかし、イラクもアメリカもICCの締約国ではないために、実際にこの告発が受理されることは困難であろうとの見方が当初よりありました。そこで、現実的には、ICCに提出する前に世界各地で民衆法廷を開き、メディアの注意を引き、世界世論の圧力で情勢そのものを動かすことに意味があるとの共通理解が生まれました。「ブッシュ、ブレアの戦争犯罪を明らかにし、それによって、たとえ大国によるものであっても、犯罪は犯罪として位置づけられることを国際社会に示し、今後の戦争・虐殺・放射能兵器の使用を抑止する」効果が期待されています。
このような認識のもと、03年6月26日~27日にブリュッセルで行なわれたバートランド・ラッセル平和基金のネットワーク会議で発足した作業グループによる合意として、04年中に、ニューヨーク、広島、ブリュッセルなどの諸都市において独立国際法廷を開廷し、アメリカ・イギリスのイラクへの戦争犯罪に対する予審を開き、05年3月20日にイスタンブールで結審することが計画されました。イラク世界民衆法廷諸原則に関する声明(イスタンブール綱領文書)をご覧下さい。独立国際法廷は、世界の民衆の手で行なわれる模擬法廷で、国際社会に対して大きなアピール力を持つと考えられます。
広島で開廷する際にはウラン兵器(劣化ウラン弾)の使用に焦点をあてることに意義があるという賛同者の提案から、今回のような内容になったと理解しています。二日目は、このウラン兵器の犯罪性に焦点をあて、現地調査をされた方々の証言、および広島公聴会声明、DU兵器禁止アピール提案・採択などがあった筈です。二日目は都合で参加できませんでしたが、他に参加された方がいらしたらご紹介下さい。
イラクのために私たちにできることは限られていますが、重要な取り組みにもかかわらず参加者が少ないことが非常に残念です。下記に、今後の国内日程を示します。組織の枠にとらわれない、多数の参加を勝ち取り、マスコミを動かす必要があると思います。
10/30:千葉公聴会
11/13:東京・若者学生公聴会
11/14:大阪南部公聴会
11/21:九州公聴会 in 福岡
11/21:大阪北部公聴会
12/11・12:第3・4回公判(東京)
(05年3/20:WTIイスタンブール法廷)