さくら満開のある日、この5月イラク派兵が噂される自衛隊の基地で恒例の年
1回開催される創立記念式展に行った来た。
「自衛隊のイラク派兵反対、自衛隊はイラクに行くな、殺すな殺されるな」のビラ
を配ったのであるが、式場外の交差点歩道で参加者の案内役の若い迷彩服姿の自衛隊
員に「このビラ見て下さい、私たち同じ仲間ですよ、是非読んでください」と話かけ
た。
痩身でキチッとした身なりの隊員は、さすがビラは受け取らなかったが、しかしそ
れから凡そ20分、彼とそれなりの話合いが出来たのである。
彼は「基地でまだイラク派兵のアンケートは受けていない」、また「隊内でその話
は殆ど聞かないが自分としてはイラクに行きたくないと思っている」と答えた。
「他の基地ではアンケートで”熱望”と言う答えが多いと聞いているが」と問うと
「いやそんな人少ないと思います」と返事してくれたが、彼自身まだ家族と真剣にイ
ラク派兵の事について話し合ったことがないという。
私が訪韓したとき見た、韓国の米軍基地の撤去のこと、休戦ラインの状況、またキ
チッとした韓国軍の兵士たちのことなどを話すと、興味深げに聞いてくれたのである。
もちろん会話中に彼の監視役の上官からは、心配してか再三携帯の電話連絡があっ
たが、途中何の妨害もなくこの会話は成立したのである。
自衛隊にはイラク派兵に関して緘口令が出ていると言う、また基地周辺や官舎など
の監視と警備は強化されている、しかし今の自衛隊員は帝国憲法下の軍隊ではない、
基本的に思想、良心の自由、表現の自由も保障されている、この権利はたとえ小泉純
一郎だとしても犯す権利はないのである。
その後彼に隊内で何があったかは分からない、彼が二度目の任務に復帰した時、私
は彼に「何かあったら必ず連絡して下さい、私たちは自衛隊の敵ではありません味方
だと思っています、イラクには決して行かないで下さい」と声をかけて別れた。
自衛隊内では、いじめやストレスによる自殺者が増えていると言う、そして一時よ
く聞かれたイラク帰国後の隊員の不祥事のニュースも、このところ封殺されてか耳に
しなくなった。
彼は澄んだ目をした好青年だった、「絶対イラクには行くな」ともう一度声をかけ
てやりたくなった。