12月15日に行われたイラク国民議会投票では、予想されたとおり最終確定ではないが、人口の60%を占めるシーア派が過半数近くを占めほぼ勝利、初めて本格的に参加したスンニ派とクルドもそれなりの得票を得たようである。
この選挙実施に向けて過去最大の16万の占領軍を送り込み、イラク政府軍とあわせ30万人もの軍隊で選挙監視・干渉を行ってきたアメリカ・ブッシュ政権にとっては、イラクに選挙で選ばれた「本格的な民主主義政権」が生まれたと言いたいだろうが、どっこいそうはなりそうにない。
なぜならこの選挙によって、民族・宗派の連邦制的な固定化、宗教色の強まり、世俗派の敗北と政党の乱立(270党派)、そしてお隣のイランからの超保守的なシーア派の影響力が強まるからだ。
テレビや新聞がの写真で明らかなように、これまでイラクは他のアラブ諸国とは違い、世俗的で宗教色が薄く、女性の服装や宗教的行事なども比較的フリーで、バクダッドでは西欧的なスタイルの女性達が闊歩していた。あのブッシュが悪魔と罵ったサダム・フセイン政権も世俗的で、文化的には国民に広く受け入れられていたのである。
選挙の結果として保守的なシーア派が政権を握り、北部でも豊富な石油資源をクルドが支配するとなれば、イラクは連邦制すら維持出来ないだろう。
現在の米英軍に対する武装抵抗の闘いは、新政府に向けての内戦・内乱に向うだろう。一方アメリカはブッシュの「戦争の大義の否定」にもかかわらず、この選挙による「民主主義化」によって一層深まるイラクの混乱と、イラン・シリア影響により拘束される。
本来のイラク戦争の目的であるイラクの石油資源支配も、ベネズエラや中国などの不安定的な要素も重なって足が引けない。
アメリカは今後も「イラク侵略戦争のベトナム戦争以上の泥沼化」という厳しい現実に曝されるのである。
選挙後の米軍一部撤退(それもたった7000人だ)と言うブッシュの宣伝も、結局は民間の戦争請負人たちにより割当てられるなどで誤魔化される。
そうなると英豪軍の撤退を口実にした自衛隊のイラク派兵は、決して終わらないということになる。
来年3月、イラク戦争の開始より丸3年が経過する。
全世界的なイラク反戦運動、WTOなどグローバリゼイションに対する闘い、国際連帯的な労働組合運動も盛んである、私たちにも3月20日前後に大々的なイラク戦争反対の闘いが要請されている。
ところがある情報では、既に日比谷公園など有力な集会場所が、他の勢力を排除する形で、一部党派や市民団体などによって抑えられてしまっていると言う。
全世界的見ても低調としか言えない日本の反戦運動が、来春統一戦線的な高まりと拡大を得られるのか、それとも党派的利害によって押さえ込まれてしまうのかが、今問われているのだ。
イラク戦争反対と自衛隊の即時撤退を求めた早めの仕掛けが、私たちに問われているのだ。