日本共産党は、元名誉議長野坂参三氏をソ連に内通したスパイとして除名処分にした。既に野坂氏は百歳を超えていた。
加藤哲郎氏も野坂スパイ説では共産党と同じである。もう少し丁寧に歴史史料を集めているし、背景をよく分析されている。
しかし和田春樹氏やいいだもも氏は、スパイ説を否認している。私は和田氏やいいだ氏と同意見である。国際共産主義運動がスタートしてからしばらくの間は、まだ各国や民族が自主独立路線を取れるほどにはその国の共産党は成熟していない。山本懸蔵氏が国崎定洞氏を密告したために粛清されるが、国崎氏はドイツ共産党員だった。ゾルゲも尾崎秀実も、ドイツや中国、ソ連など他国の党員だった。日本とソ連が交流して、お互いに交流していた時期に、非合法の運動下で資金援助があったことはインターナショナリズムのもとではむしろ当然ではなかったろうか? 日本共産党は、戦後も野坂は隠れてソ連から資金と情報とをやりとりしていたという。だが野坂氏は戦後一貫して党を代表する立場だった。資金や情報のやりとりは事実だろうが、代表人物の言動を誰に報告しなければ「隠れて」ということになるのか? 宮本顕治氏の言動は党中央に全て報告済みだったのか?