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「共産党の理論・政策・歴史」討論欄

「さざ波通信」の事実誤認

2001/8/30 黒多 嘉一

 「さざ波通信」の昔の記事を読むと、事実誤認の箇所があるので、指摘しておきたい。
 第七号「雑録」の「多国籍軍への戦費支出を肯定した不破指導部」である。
 まず、「ティモール」はやめて頂きたい。「チモール」である。

> まず第1に、この戦費支出への賛成が、明らかに、これまでの共産党の公式の立場と矛盾することである。

 このあとに、湾岸戦争のことがかいてあるが、これはまったく間違いである。東チモールはこれまでの立場と矛盾するどころか、92年ソマリアのときにすでに共産党は賛成している。92年、米帝侵略者が、今回とおなじく連合国(国連とは言いたくない)のおすみつきを得てソマリアを侵略したとき、宮本議長みずからこれを「人道的」とよび、国会では共産党議員団は戦費支出に賛成投票したのである。わたしは図書館で「赤旗」を読んでいて、「宮本議長の新春インタビュー」で米帝のソマリア侵略を正当化していることに唖然としたことを覚えている。また、「週刊赤旗評論特集版」では、国際部の西口とかいう人が、米帝侵略者を擁護するトンデモ論文を掲載していた。
 湾岸戦争の時点で、すでに共産党は転向していた。なぜなら、「帝国主義戦争」という概念を捨て去って、「急ぎすぎた戦争」という意味不明の主張をしていただけで、イラクにたいする帝国主義の経済制裁すら賛成していたのである。日本が多国籍軍に参加することに反対する共産党の論理は、憲法だけで、帝国主義戦争反対の論理ではなかった。赤旗無署名論文は、この戦争は帝国主義戦争ではないというトンデモ主張を行なっていた。急ぎすぎた戦争なのだから、急ぎすぎなければ戦争賛成なのである。戦争賛成なのだから、日本も憲法を改正して参戦すべきという立場が論理的帰結である。
 なお革マル派の機関紙「解放」によると、この問題では、佐々木陸海などははっきりと「国連が決定した正義の戦争」と主張し、聴濤弘などは「帝国主義戦争」と主張していたとのことである。革マル派の言うことだから信用はできないが、一歩先を行く者を頭の切換えがうまくいかないもののあいだで対立があっても不思議ではない。
 おそらくこのあと、「帝国主義戦争」という古い概念を一掃することが、党指導部内で確認されたのではないだろうか。その結果、共産党議員団は、米帝のソマリア侵略への戦費支出に賛成投票し、党内でも議論が起こらなかったのである。「さざ波通信」がいまごろ非難するようなことではなく、92年の段階ですでに決まっていたことなのである。NATOの南スラビヤ侵略は、連合国決議がなかったために共産党は反対した。おそらく連合国決議があれば共産党も賛成していただろう。ソマリアや東チモールなら賛成しているのだから、南スラビヤだけ反対する理由はないのである。
 蛇足ながらひとつ指摘しておきたい。
 東チモールやコソボを通して、われわれは「被抑圧民族の自決権」が、帝国主義によって使われることを目にした。すでにレーニンの時代に、民族自決権反対派はこの点を指摘していた。しかし当時は、まだ植民地時代であり、民族自決権もまだ意義を有していた。しかし現在のポスト植民地時代に、この時代遅れの教義に固執することは、帝国主義の新世界秩序をイデオロギー的に援助することになるだろう。帝国主義は、「民族自決権」を利用して、南スラビヤを解体し、ロシヤを虎視眈々と狙っている。台湾独立の陰謀や、西蔵への介入の陰謀も進められている。帝国主義は、新世界秩序の障害物を取り除くために、人道とか民族自決の煙幕を張っているのである。この点を再考することなく、時代遅れの教義をふりかざし、帝国主義を支持する自称左翼が多いのは残念である。