9月20日付「しんぶん赤旗」2面に、インド共産党(マルクス主義)政治局員でもある、インド西ベンガル州首相と不破議長との懇談が紹介されている。
ここで「まず話題となった」「テロについての対応の問題」で、不破議長の説明を受けた同首相は「インド共産党(マルクス主義)の見解とまったく一致していると答え」たとのことだ。
さて、インド共産党(マルクス主義)のホームページでは今回の事件に関する同党政治局声明がいくつかアップされている。それらを見る限り、たしかに「赤旗」記事の小見出しにもあるように「テロへの対応では完全に意見が一致」したようだが、同時に“不一致”も目につく。比較的まとまって述べられている9月14日付声明でみてみよう。
同声明では、イスラム原理主義・タリバン政権の性格(テロ組織への支援など)、アメリカ帝国主義がアフガニスタン内戦において、イスラム原理主義勢力を支援してきたことをするどく指摘している。さらに、アメリカ帝国主義の「信頼できる同盟国であり、中東における代理人」であるイスラエルによる、パレスチナ人民・アラブ諸国への侵略についても指摘している。
もちろん、日本共産党がこれに反対する見解を述べているというわけではない。従来指摘してきたこともある問題であり、明確な「不一致」というわけではない。だが、今回のテロ事件に関連する公式声明(に類するのもの)では、こうした問題にまったく触れられていないことも事実である。
そして、日本共産党も現在行っているような、「報復反対」などの低い一致点で運動を組むのに反対というわけでもない。だが、それと党としてどういう姿勢を示すかとは別問題だということだ。
まして、これだけ関心が高まっているときに専ら受身の姿勢で対処しているのには疑問である。つい先月まで、日本人の大半が知らなかったであろう「ウサマ・ビンラディン」は、おそらく圧倒的多数の日本人が知る名前となった。こういうときにこそ、もっと攻勢的な対応に出ることを希望する。
アメリカ帝国主義による、「報復」を名目にした侵略戦争を許さず闘おう。
なお、非常に拙いが同声明を訳してみたので以下に載せておく。
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2001年9月14日
インド共産党(マルクス主義)政治局は以下の声明を発表した。
合衆国の動きに対するバジパイ政府の態度について
インド共産党(マルクス主義)は、壊滅的な人命損失をもたらした、合衆国における野蛮なテロ攻撃への強い批判をくり返す。それはすべての犠牲者の家族への世界的な同情を共有する。
しかしながら、この乱暴な攻撃に応じて、ブッシュ政権は宣戦布告を行った。不特定の国々に対する報復のための軍事力行使が迫っている。合衆国は、この宣言によって、国連憲章を踏みにじり、いかなる国の主権をも侵害する権利を不当にも主張している。合衆国政府には、犯罪を調査し犯人を特定する義務がある。そのようにした後に、合衆国は犯人を逮捕するための他国と国際機構の協力を得るために合法的に行動することができる。そのようなことをしないでの一方的な軍事行動は、ただ無辜の人命の大量の損失と暴力の悪循環と国際的緊張関係の悪化を招くだけである。
これらの点をまるで考慮することなく、人民党主導政権はまったく無責任かつ臆病にふるまっている。合衆国の目下の同盟者としての承認と行動を得るという政策によって、バジパイ政権は9月11日の攻撃の直後に、いかなる軍事行動が始まろうとあらゆる方法で合衆国に協力するだろうと声明した。
人民党主導政権はすでに、アフガニスタンに対して計画されている合衆国の軍事行動のために、インドにおける物資補給上の支援と軍事的及びインフラ上の手段を提供するだろうと通知した。
1991年に、インド政府は初めて燃料補給設備をイラクを攻撃するアメリカの戦闘機に提供した。このようなことがより大規模にくり返されるのは許されてはならない。
インド共産党(マルクス主義)とすべてのインドの民主勢力はアフガニスタンのタリバン政権の性格と、タリバン政権による原理主義勢力とテロ活動への支援を知っている。だが、ソビエト軍やナジブラ政権と戦っていたイスラム原理主義勢力の軍隊を財政的物質的に支えてきたのは合衆国であるということが思い起こされなければならない。ウサマ・ビンラディンはCIA-ISI〔統合情報局=パキスタンの諜報機関〕の共同計画の受益者でありその工作員だったのだ。
他にも人民党主導政権が発した、我々を不安にさせる声明がある。内務大臣その他は、合衆国及びイスラエルとの戦略的同盟をくり返し主張している。イスラエルが合衆国の信頼できる同盟国で中東におけるその代理人であり、合衆国が中東においてイスラエルを激励してパレスチナ人民とアラブ諸国への侵略を続けさせていることは、よく知られている。人民党主導政権の企てはインドの安全保障上の利益にとって深刻な影響をもたらすものである。
インド政府は、合衆国におけるテロ事件に関連するであろうテロ活動に関する情報の提供という、合衆国のあらゆる合法的要求に応えることができる。しかし、いかなるものであろうと合衆国の軍事行動にインドを巻きこむことは受け入れられないし、愛国的インド人民の強い反対を受けることだろう。