中国の活動家が小型船舶やボートに乗って「魚釣島」に上陸したところ、ヘリコプターで出動した沖縄県警によって「不法上陸」として逮捕され、一時期刑事処分も検討されたが結局は簡単な取調べの後に中国に強制送還された。
これには日中政府相互の思惑からの妥協的処置だろう、しかし中国では少数と言え、若者達の抗議行動が続けられ、この後も同じ試みも計画されていると言う。
これは竹島(韓国名独島)での日韓両国での切手販売と言う、イザコザと底の方では連動している。
「しんぶん赤旗」は3月25日号でかねてからの”尖閣諸島の領有権は日本にある”主張に基づいて「尖閣諸島の領有問題」としてさらっと触れ、おまけに「これ自体は不当な領土拡張ではなく」と日本政府の代弁?すら行なっている。
かつて1960年代後半から70年代初めにかけて、この島の帰属を巡って一大論争が展開された、尖閣列島周辺の大陸棚に石油や天然ガスの埋蔵が噂され、一部調査により中国、台湾、そして日本が俄かに、その領有を意識し始めたからである。
しかしこの時、真剣に研究に取り組み、歴史的史料から論理的研究と展開を行ない、著作を出されたのは歴史家・井上清だった。
その後、石油資源問題が殆ど沈静化し、あまり話題に上らなくなったのだが、領有権について中国、台湾、日本間の明確な交渉や折衝がなされてないことを理由に「これ幸い」と、己のウルトラ・ナショナリニズムを満足させ、排外主義的的に利用したのが石原慎太郎や西村慎吾(民主党)そして右翼民族主義者達である。
彼らは”東シナ海”に浮かぶこれら無人島に上陸し、日の丸を立るなどのパフォーマンスを何回か行ないその都度、中国政府から抗議を受けている。
日本政府は竹島(独島)が韓国によって「実効支配下」にあることを意識し、対抗的に尖閣諸島(魚釣島他)が日本の実効支配にあることを、ことあるたびに宣伝してきた。
しかし、1895年日清戦争の付帯的処理として領有宣言をしたものの、一時期漁民が処理施設らしきものを作ったが結局は放置され、敗戦、そして米軍による沖縄返還を経ても、未だ実効支配とは程遠い、無人島となっているのだ。
そもそもこれら諸島は、中国大陸棚縁周部にある平均200㍍の海に浮かぶ島礁群であり、台湾の付属島礁にも属しており、沖縄・琉球列島との間には深さ1000~2000メートルの海溝に隔てられ、とても琉球の一部とみなすのは無理がある。
またこの海域は南から北に向けて速い「黒潮海流」が流れており、台湾から到達するのは早いが沖縄・琉球から小船で行くのは相当に困難なのだ。
これら状況から、中国では「明」の時代からこの諸島の存在が認識され、明から琉球(王国)間の使節等が立ち寄り、場所的確認をする時に目印としても利用されている。
この時、明から琉球に帰る琉球の人々は、尖閣諸島ではなく「久米島」を見て初めて「国に帰れた」と表現していると言う。
日本政府が言う「これら諸島が”無主地”だったので1895年に日本領土として組み入れた」はあくまで「日清戦争の勝利」による強引な領土組み入れであり、それ以外ではありえない。
百歩譲って「東アジアの平和」を維持・拡大する為にも、これら諸島の帰属問題は中国、台湾、日本の3国地で話し合い、合意する事が必要なのである。
あの南沙諸島西砂諸島の愚を繰り返してはならないのだ。
その意味で、日本共産党の今回の魚釣島上陸問題に関する態度は、責任政党として余りにも不誠実で物足らないものである。
そして同時に、私たちも現在の「戦時下体制」の下にあって、これら領土問題が権力者や右翼ナショナリニズムに、排外主義的に、愛国心を煽る為に、徹底利用されることに十分警戒し、注意して行く事が必要なのだ。
こんな事書けばまたぞろ「領土回復するのは難しいからな」などの反論が頂けそうではあるがー。