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「共産党の理論・政策・歴史」討論欄

不破哲三「党綱領の理論上の突破点について」 を読んで

2006/04/19 とんび 40代 医療専門職

 不破哲三氏が書いた「党綱領の理論上の突破点について」を通読した。2000年、2003年の党大会で示された路線の要点について、現憲法擁護論(といいつつ、象徴天皇制の擁護の言い訳)、国際情勢論(東西冷戦、3つの世界論、三大革命勢力論をこえた、「4つの世界論」)、未来社会論(社会主義社会論)について書かれている。
 総じて言えば、自公共路線の政治路線上の理論的裏付けの本と言える。
 1998年より、日米安保凍結、日の丸君が代法制化論、自衛隊活用、海上保安庁法改正賛成、そして、象徴天皇制は君主制ではなく将来に亘り擁護する、という一連のながれ、の理論的説明である。しかし、奇妙なことに、この本の中では、現実政治において共産党がこの8年間に果たしてきた、自公連立与党を支える役割についての説明はない。
 4つの世界論では、発達した資本主義、アジアアフリカラテンアメリカ諸国、社会主義をめざす国(北朝鮮、ラオス、ベラルーシは含まれず)、旧ソ連東欧圏を挙げている。アジアアフリカ諸国での変化についての記載はそれなりの説得力はあるが、インド、パキスタン、イランでの核武装化についての言及はなく、旧ソ連東欧圏をひとくくりにしていて説明がない点に疑問を感じる。
 社会主義社会論は、自由と必然の関係について、マルクス、エンゲルスを多く引用し哲学の勉強にはなる。ただし、不破氏の引用部分の解釈が、もとの文献(和訳であるが)を素直に読んだときの印象と随分異なることに驚く。そして、社会主義における、分配論志向、生産手段の社会化を基盤とする考え方(そして、社会主義革命の否定)は、(社会民主主義的改良主義を通じてでも)生産力を発展させ、生産手段の社会化を実現すれば、社会主義になってゆく、という近年の共産党の理論版かな、と感じた。ここに、旧来の自民党支持層をあてにする最近の共産党の行動の基礎がありそうである。なお、この点では、新自由主義的改革を表向き掲げる小泉氏、民主党執行部と微妙な差異がある。
 みなさま、いかがお考えでしょうか?