1月14日付川上慎一さんの投稿にレスいたします。
これも、革命といわれような大変革――従来の支配階級が支配階級でなくなるような変革――の場合には一般にみられることであって、特にロシア革命に限ったことではありません。
そのとおりだと思います。
したがって、レーニン時代に「反革命・サボタージュおよび投機行為取締全ロシア非常委員会」がつくられたことがどうして「秘密警察を背景に(した)一党独裁」体制を意味するのでしょうか。
レーニンの1922年3月の秘密書簡には、次のように書かれてい るそうです。
「テロルは法律で排除すべきではない。それを誓約するのは自己欺瞞であり、ごまかしにすぎない。むしろ、回避したり粉飾したりすることなく、はっきりと理的に裏づけて法制化すべきである。テロル条項は、適用範囲をなるべく広くとれるように制定されなければならない。法の正義に関する革命意識と革命的自覚だけが運用面で適用の条件を決定づけるからである(『KGB』、フリーマントル著、新潮選書、1985年3月25日第21刷、p.26)。
よろしいですか? レーニンは秘密警察が「法律を度外視して」テロを行なうよう進言しているのです。しかも、そのテロ行為をできるだけ障害なしに行なえるよう、奨励しているのです。おそらく、あなたのレーニン像はこれによって崩壊するはずです。
浩二さんのいうように「秘密警察を背景に(した)一党独裁」体制――暗黒政治・恐怖政治――に近いものがソ連の歴史の中で存在したでしょう。しかし、それはレーニンが指導した時期ではありません。
このように断定される根拠を提示してください。レーニンはチェーカーを作らなかったのだと、そう断言できる資料を提示してください。何を根拠にこういうことを言われているのですか? レーニンがチェーカーを創設し、その権限を無限なものにすることを望んでいたのは歴史的事実です。
レーニン没後の数年間もそういう時代ではありませんでした。スターリン体制が確立した1930年代以降――第2次大戦中を除外しますが――のことです。
ソ連における秘密警察の歴史に関しては、川上慎一さんはまったく無知であると断言いたします。レーニンは秘密警察とは無縁だった?? このような思い込みでレーニンを善人に仕立て上げることは、今後『絶対』許されないことだと私は思います。この思い込みはどこから来ているのでしょうか? ソ連の歴史を暴露した本はいくらでも出版されています。それのどこに、レーニンが秘密警察とは無関係だったと書かれていますか?
党幹部が失脚して、その結果、生命まで奪われるというようなことは、スターリン時代を除けばソ連社会ではレーニン時代を含めてなかったでしょう。
レーニン時代のチェーカーは、穀物調達に従わない農民などが一家抹殺の目に遭いました。これをも川上慎一さんは、「仕方がない」とすませるおつもりですか? スターリン批判後に露骨な粛清がなかったのは、反体制的な一般人を精神病院に送ったり強制収容所にったりした現実を免罪するものではさらさらありません。
したがって、「秘密警察を背景に(した)一党独裁」体制はレーニンによるものでもなく、社会主義の理念から必然的にもたらされたものでもありません。
これだけ情報氾濫と言われる時代にあって、まだこのような言説がまかり通っていることに、私は危惧を覚えます。JCP掲示板では「レーニンは今、批判の対象になっている。レーニンが今批判されている。それは常識だ」というような議論もあるのです。つまり、スターリン=悪者であるのと同様、レーニン=悪者という認識も一般的になっているというのです。けれど、川上慎一さんのごとき投稿を拝見して、決してそうとも言えないだろうということがはっきり確認できました。未だに「レーニン=善人」という認識がアプリオリに存在しています。驚きというほかありません。「社会主義の理念から必然的にもたらされたものでもありません」などとノンキなことを言う前に、社会主義の理念から出発したレーニンがなぜチェーカーを必要としたのかを分析することこそが必要です。
川上慎一さん、チェーカーは誰が作ったのですか? チェーカー創設当時の政府首班はいったいだれなんですか? レーニンですよ。チェーカーが何をやったのか、川上慎一さんはとっくにご存知でしょう? 違いますか?
革命後に反動が来て、革命政権がそれに対処する慌ただしさは、クロムウェルしかり、ロベスピエールしかりで、歴史一般のできごととして承認されうるのかもしれません。その線に立って、レーニンも弁護されるべきだという議論は、ある程度そのとおりかもしれません。しかし、あの陰湿な秘密警察=チェーカー~KGBを作ったのはレーニンです。これは歴史的事実です。歴史一般に還元できる部分と、「その当時」の個別の歴史において問題となる部分とは、おのずと区別されなければなりません。ましてレーニンは、人類解放の理論=マルクス主義の導きを受けて革命を成功させた歴史上初めての人間です。革命一般に解消できる性質のものではないと思います。
レーニンは一党独裁を成し遂げました。チェーカーという秘密警察を使って権力維持に邁進しました。この事実は、歴史一般に解消できるものではありません。レーニンは事実としてこのようなことをやったのです。レーニン=善人としてあがめたてまつる思考は、21世紀に、何ひとつ利益はもたらしません。いい加減、レーニン=善人という思考から脱却してほしい。これは「しんぶん赤旗」ですら論じ始めていることです。