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「科学的社会主義」討論欄

アフガニスタンの現在

2000/1/29 吉野傍、30代

 社会主義の権威が崩壊する中、旧「社会主義」諸国における急激な市場経済化に対する人民の反発は、排他的民族主義や宗教原理主義という歪んだ共同体主義を生み出しています。ロシアでの汎スラブ主義や軍事大国主義、それに対抗するチェチェンのイスラム原理主義などは、その典型的パターンを示しています。同じパターンは、アフガニスタンのタリバーン支配にも見られます。アフガニスタンでは、「ソ連型社会主義」体制が崩壊したのち、1996年からイスラム原理主義のタリバーンがアフガニスタンを支配し、イスラム原理主義体制を導入しています。
 このタリバーン支配のもとで、民衆がいったいどのような生活を強いられているのか、その一端を示す非常に興味深い記事が『女たちの21世紀』という雑誌にありましたので、それを紹介します。
 アフガニスタンが「ソ連型社会主義」体制をとっていた時代は、一党独裁や官僚支配や民主主義的自由の大幅な制限など深刻な問題を抱えていましたが、それでも一定の生活は保障され、また男女平等も著しく前進しました。イスラム教圏としては例外的なほど女性の社会進出は進展しました。しかし、そのような社会的・進歩的成果は、アフガニスタン「社会主義」の崩壊とイスラム原理主義者の支配によって完全に覆されました。
 タリバーンは、アフガニスタン女性に対し、次のような禁止事項と強制事項を暴力によって押しつけています。

  1. 女性が家の外で働くことの全面禁止
  2. 女性が近親男性(父、兄、夫など、マーラムという)との同伴なしに家の外で行動することの禁止
  3. 男性の店主と話してはならない
  4. 男性の医師から治療を受けてはならない
  5. 女性が学校や大学などの教育機関で勉強することの禁止
  6. 女性は頭からつま先まで隠すベールを着用することの強制
  7. ベールを来ていなかったり、マーラムを同伴していない場合は、鞭打ち
  8. 既婚女性が他の男性と性的関係を持った場合は、公衆の面前で投石による処刑
  9. 女性はマーラムでない男性と話したり、握手をしてはいけない
  10. 女性はいかなる種類の集会にも参加してはならない
  11. 女性はいかなる種類のスポーツもしてはならない
  12. 女性は自転車やオートバイに乗ってはならない
  13. 女性は明るい色の服を着てはならない
  14. 女性は祭りや娯楽に参加してはならない
  15. 女性はアパートや家のバルコニーに出てはならない
  16. 男女は同じバスに乗ってはならない
  17. 女性は写真に写ったり、映画に出てはならない

 以上の他にもさらに多くの禁止事項がありますが、省略します。女性は外で働くことを全面的に禁じられたため、それまで教師や公務員をしていた女性はすべて失業者となりました。そして、夫や親によって扶養されないような女性、とりわけ夫と死に別れた子持ちの女性は、子供を養育することができず、物乞いになるか、売春婦になることを余儀なくされています。しかし売春も厳格に禁じられており、未婚者の場合は鞭打ちの刑、既婚者の場合は処刑になります。しかし、売春をしないと子供を養えないので、多くの寡婦女性は、処刑を覚悟で売春をせざるをえないそうです。タリバーンの兵士たちは、そのような女性の弱みに付けこんで、虐待のかぎりをつくしています。
 「ソ連型社会主義」が「絶対悪」なら、今のアフガニスタンはいったい何なんでしょう? ユーゴの「社会主義」体制が、さまざまな矛盾や欠陥を持ちながらも、民族虐殺をなくして民族の共存共生を進めたように、アフガニスタンの「社会主義」体制は、さまざまな矛盾や欠陥を持ちながらも、イスラム教支配を一掃して男女の平等を進めたのは明らかです。そして、それらの体制の崩壊後に、再び民族間虐殺と、女性の奴隷化が復活し、底辺民衆を苦しめています。
 以上の事実はもちろん、「野蛮な社会主義」であった旧ソ連圏諸国の体制を正当化するものではありません。しかし、「野蛮な社会主義」は「野蛮な資本主義」よりもましであり、「文明的な社会主義」は「文明的な資本主義」よりも進歩的だということです。まだ「文明的な社会主義」は実現していませんが、われわれが目指すべきは、「野蛮な資本主義」と密接不可分に結びついた「文明的な資本主義」ではなく(「文明的な資本主義」はその内的な矛盾を第三世界諸国の「野蛮な資本主義」に押しつけることではじめて、その経済的豊かさと自由を享受できる)、世界中から文明的野蛮ないし非文明的野蛮を一掃する「文明的な社会主義」です。