「マルクスは階級がなくなると同時に国家もなくなる、とはいっていません。」
「プロ独の間に、実体的な資本家階級は打ち倒されるが、その後もプロ独は存続し、政治的=イデオロギー的支配は存続します。(中略)プロ独を中心とするあらゆる政治的権力を死滅させるのが、社会主義革命であり、これは社会革命です。以上は空想から科学へという、一般的には入門書といわれている著作の中にも、論理的には説かれている内容です。私が一番言いたかったことは、マルクスを批判するのであれば、最低限の内容を押さえてからにしてください、ということです。」
これは、本当だろうか? 階級をなくすことは社会革命であり、国家が死滅することも社会革命ではないのか? 前回、手元に「空想から科学へ」がなかったので分からなかったが、手に入ったので、該当部分を引用してみよう。「空想から科学へ」岩波文庫版P86、2行目から
「特殊な抑圧権力たる国家は必要でない。国家が実際に社会全体の代表者として登場する最初の行為ー社会の名において生産手段を没収することーこれこそは国家が国家として行う最後の独立行為である。中略ついには順々に眠りにつく。」
少なくともエンゲルスに関しては、「起源」の最後の文章にもあるように階級がなくなることによって、同時とはいってないが、国家が眠りにつくまでに、ほとんど時間がかからない表現になっており、J.D.氏の議論は、エンゲルス説に関して言えば、修正ととってもよいのではないか? このエンゲルス説によれば、生産手段を資本家から没収すれば、ほとんど同時に警察、裁判署、刑務所、小中学校、消防署、税務署、法務局、造幣局、その他役所が短い期間に徐々に眠りにつくことになり、貨幣がなくなれば、物物交換経済に移行することになるだろう。このエンゲルス説をもとに、レーニンは、「国家は階級支配のための道具である」と規定した。この規定は狭すぎるのではないかというのが、私ではなくマルクス研究者の中からも疑念が出されてきたことを正当派、官製マルクス主義の公式見解から学ばれているJ.D.氏にも理解していただきたい。なお私自身は、マルクス説であろうと社会科学的な検証を抜きにしたイデオロギー的な国家消滅、廃止論には反対であることを再度言明しておきます。