社会主義とは、「価値」だと思います。連帯だとか、共同性だとか、平等だとか、あるいは自由や友愛などの諸「価値」から成り立っているのが社会主義です。そうした価値から、貧困や差別や失業との闘い、すべての人の生活の安全が保障される社会の実現をめざす、つまり社会主義的な運動が出てくると思います。
社会主義が「価値」だということは、一つには、「科学」ではないということです。念のために言うと、わたしは「科学」を否定しているわけではありません。しかし、「価値」と「科学」とは区別すべきだと思います。
さらに、社会主義が「価値」だということは、社会主義は「システム」や「体制」でもないということもあります。経済システムとしての、あるいは社会体制としての「社会主義」といったものはあり得ません。
今必要なことは、21世紀の現実の中で、社会主義思想をいかに活かすかということですが、そのためにはこれまで社会主義思想と結びついてきた理論、つまり科学を再検討必要があると思います。また社会主義的な価値の実現にふさわしいシステムについても、新たに考え直す必要があると思います。中央集権的計画経済は、社会主義的な価値を実現する「手段」としては適格性を欠くということは、すでにソ連の歴史が明らかにしました。