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「科学的社会主義」討論欄

絶対理念についてのレーニンの理解度

2002/11/24 Hegel、40代

 レ-ニンは「史的唯物論と経験批判論」の第2章において(森宏一訳 新日本文庫版p.138)、ヘーゲルの学説を次のように要約している。
 ヘーゲルは現実の世界を、ある世界出現以前の「絶対理念」の実現だと考え、この場合に、人間精神は、現実の世界を正しく認識することによって、その精神のうちに、そしてその精神を通して、「絶対理念」を認識するとしたのである。
 しかし、これは正しい要約になっているのだろうか。ヘーゲルのエンチクロペディ(岩波文庫版、精神哲学、201、p.330)と対比してみたい。

1. レーニンの叙述を読むと、絶対理念は完成しきってしまった静的なもののように読める。しかし、ヘーゲルは、「理念は、絶対的精神として永遠に自己を活動させ自己を産出し自己を享受する」と書いている。ヘーゲルにとって、理念は動的なものである.

2. 人間精神が絶対理念を認識とする、とレーニンは書いている。他方、ヘーゲルは、理念は自己を両現象へ根源的に分割する、としている。ここで、両現象とは、訳注によれば、自然と精神である。そして、この2つに分割した理念の中で、認識作用の活動を行うものは概念である、としている。つまり、レーニンの理解は、

         人間精神/絶対理念
であり、ヘーゲルの主張は
         精神-概念-自然
である。

 ヘーゲルの説は難解かもしれないが、レーニンの要約があまりにも荒削りであることは、以上の指摘だけでも明確になったのではなかろうか。