最近、古本屋で、宇沢弘文・宮本憲一他編『社会の現実と経済学』岩波書店、1994年を手に入れた。近近私の大学で開講される1年生のための演習で、学生と一緒に読もうと思っているのでまだ全部読んでいないのだが、次の石川氏の発言だけはぜひ紹介したいと思う。
文部省の言うとおりにやると、大学はもう機能しなくなるのです。私も学部長をした経験がありますが、学部長の仕事は、文部省の言うことを全部合法的に守らないことなのです。非合法ですと、問題になりますから、合法的にサボタージュするというのが、大学が生き残るための唯一の方法、手段だというふうに思っています。(p.135)*
ちなみに、石川氏は、東大経済学部の教授であった.
さらに、この書物の一部は、石川経夫『分配の経済学』東京大学、1999、に「労働市場の将来像を求めて」というタイトルで再録されている。そこでは、「これからの日本に必要なことは」、内部市場ではなくて、「独立で、自立的な職能型労働市場を社会的共通資本として整備する」ことである、と主張されている。市場を前提とする限り、私も経済理論的にはそういう結論にならざらを得ないような気がする。しかし、運動論的に考えると、内部労働市場を逆手に取った下からの改革が必要な気もする。ところで、この本は私の持っている学術書の中で、最も装丁の美しい本である.
石川氏は1998年6月26日、51歳の若さで世を去った。ここに改めて故人のご冥福をお祈りする次第である。