このサイトの中ではおそらく奇想天外なアングルからの投稿と見られてしまう と思うが、最近ちょっと気になるテーマをひとつ・・・。
エピグラフは題して『スポーツを通して視る体制転換』。
相撲にはまるっきり疎い!のだが、外国出身の力士にはそれなりに関心と敬意をは
らっているつもりだ(物珍しさも多少手伝っているかもだが。)。
ここ7~8年ぐらい(?)、日本相撲界入りする力士の出身国がまさに多国籍化した
ようだ。ふた昔前やひと昔前ならば外国出身者といってもせいぜいハワイや南米アル
ゼンチン出身ぐらいなだけだったはず。それが今では朝青龍などモンゴル勢の「君臨」
ぶり(力士名の綴りが間違っていたらご指摘ください。)、また、グルジア勢の「黒
海」、東欧ブルガリア勢の「琴欧州」。かつてならアメリカ本土勢の「戦闘竜」、リ
タイアしたアルゼンチン勢の「星 端午」「星 安出寿」・・・。
相撲素人の多言は要しまい、ご存知の通りだろう。もうここまでくると「力士」と
言わず「Sumo-wrestler」(綴りが間違っていたらご指摘ください。)と国際表記と
して一本化したらいいではないか、と感じるが。このうえさらにドイツ勢やフランス
勢、北欧勢の力士が誕生するようにでもなれば、押しも押されもせぬ国際競技種目に
なれるのだが・・・。(老獪狡猾なフランス人、屈強で勝負強いドイツ人、巨体揃い
の北欧人が身体能力を活かせば、柔道のように、ひょっとしたら日本人力士は常連優
勝できなくなる?かも?)
それはさておき。いま掲げた朝青龍、黒海、琴欧州と聞いて、鋭い当サイトの常連
諸氏の方々、多分「ハッ!」と気付かれたに相違ない。そう、共通項は「旧共産圏出
身」ということだ(モンゴルは市場経済移行以前は「親・中国」ではなく、ソ連寄り
だった。)。
ご存知のようにCOMECON体制やワルシャワ条約機構健在の頃、(当時の)共産圏諸
国は国家の総力を注ぎ込んで「ステート・アマチュア」育成に取り組んでいた。文字
通り、国家威信をかけて。
体操競技や競泳、陸上競技、卓球に強い中国の幼年時からのスポーツ超英才教育ぶ
りについては、テレビで見たことがあるが、そのあまりにものすさまじさに絶句して
しまった記憶がある。財政面をも含めて親・兄弟、全親族が総出で熱烈支援するのだ
とか。「《芽》が出るまで親元に帰ってくるな!」とまで極限にまでエスカレートす
ると「人権問題ではないか」と見ていてつらかったほど。いくら将来の金の卵とはい
え、あどけない少年少女なのだし。
「なぜ旧共産圏は個人競技種目にとくに強かったのだろうか」という着眼点は、社
会主義論の新境地からも興味深いのではなかろうか。金メダリストや優勝チームには、
終身年金・立派な一戸建てマイホーム・マイカー、国によっては別荘まで用意されて
いた。そういった一種の俗物根性を刺激する即物性戦略はわかりやすいのは確かだが、
メダル獲得へのモチベーションやインセンティヴが強さを発揮した「主因」と即断す
るのは、深奥さに欠け食指を動かされない。実証社会科学で皆で考えたいテーマだ。
少なくとも、『党綱領の理論上の突破点について』などという“チョーチン持ち綱
領学習”なんかよりずっと、うちら世代の知的好奇心を刺激すると考えるし、精神衛
生上好ましいはず。アクチュアルなアプローチにきっと同盟員達も目の輝きを取り戻
し、快諾してくれるのではなかろうか。党中央とはまったく異なる視点から社会主義
を考察するのは(困難ではあるだろうが)やりがいに満ち、楽しさに満ちているので
はないだろうか。いずれにしても余裕がでてきたら次回以降、徐々に追究してみたい
テーマのひとつだ。
オリンピックや各種目ごとの世界選手権を思い起こせばおわかりになると思うが、
もともと共産圏諸国の選手は、どちらかというと集団競技よりも個人競技に実力を発
揮してきたという顕著な傾向が指摘される。例外はサッカーとバレーボールだろうか?
『新・サッカーへの招待』などの名著で知られる、社会学者の大住教授(一橋大)
や、比較政治分析の後藤健生教授(慶応大、法学政治学修士、当時)などは、夙(つ
と)に、スポーツを通しての諸国の社会・政治分析にユニークさを発揮してきた。い
まだに慧眼だと思う。
それらによると、「ときの一党独裁に抗する国民の示威行動が活発だった時期は、
それと連動するかのようにサッカーの代表チームがW杯(ワールドカップ)で上位進
出を続けたりした。このことは、ポーランド、旧チェコスロバキア、旧ソビエト、旧
ユーゴスラビア辺りがまさにそうであった。ことに旧チェコ代表チームは1962年W杯
チリ大会では堂々と優勝戦にまで進出、惜しくもブラジルに優勝を譲った。またポー
ランド代表チームはFW(フォワード)ラトゥ選手など豪華メンバーを擁し、1974年W
杯旧西ドイツ大会に出場。1次リーグではW常連の南米の強豪国に競り勝ち、旧西ドイ
ツ、オランダ、に続いてW杯3位に入った。しかし、そうした活躍も、当該国内抵抗運
動が弾圧されてしまうとその後しばらくそれらスポーツ強国は国際試合で低迷が続い
た。
こうした雁行(波行)過程を繰り返すなかで代表チーム自体も国際舞台での躍進・
低迷・再躍進を辿ってきたといえよう。かつて《女王》の異名をほしいままにした旧
ソ連女子バレーボール代表チームにもこれが言える」と分析されていた記憶がある。
「ベルリンの壁」、そして、「シュタージ」なる恐怖の秘密警察網を全土くまなく
張り巡らせていたことで知られる旧東ドイツ。ここはサッカーよりは体操競技やスケー
ト競技(フィギュア・アイスダンス・スピード競技)でスポーツ王国ぶりを遺憾なく
発揮した国だが、計画経済が順調に推移していた頃は比例するかのように国内スポー
ツも対外試合で好成績を続けたらしい。やがて、ソ連崩壊で国内リーグの「鎖」から
解き放たれたスポーツエリートらは、先を争うように西側資本主義国のプロリーグに
人材流出したとか。また、ドイツ統一で吸収されて以降、スポーツに分配される資金
が財政難に陥り、今や低迷期なのだとか。失業率も異常に高いそうだ。
今年晩春に来日し、党本部ビル内で不破氏らと会見したというモドロウ氏は、たし
か旧ホーネッカー独裁時代末期に台頭したような記憶があるが、ドイツ旧東域内では
「もう、共産主義独裁の再来だけは真っ平ゴメン」が旧東住民の共通意識らしい。
このようにみてくると、時の国家権力による締め付け度合い、それが思想監視・統 制であろうと、実力行使・更には虐殺であろうと、なんらかの相関関係をもたらすと いうのは、政治とスポーツを視るときのまた別の楽しみといえるかもしれない。
わが国 社会学の草分け的存在・鶴見和子さんは仏教徒(真言宗系)のスタンスか ら憲法問題に精力的な論陣を張られていることは、共産党員の方々には意外と知られ ていないかもしれない。その鶴見さんは先月、こう語られた。「war(戦争)ではな く、WA(和)を求め続けなきゃね。まだまだ日本人は目が醒めていない。日本の憲法 はこれからが本当の世界基準になるのよ、していかなきゃだめ。全人類の永久遺産。 憲法第9条の改変をもし許したらどういう事態になり果てるか、あなたたち真剣に考 え議論なさい! 正しい歴史を知り、イマジネーションを働かさないと手遅れになる わよ!」と講演で熱く(!)語っておられた記憶がある。
「warではなく、WA(和)を」。なんと素敵なキャッチフレーズではないか!
資本主義・市場万能主義であろうと社会民主主義・共産主義であろうと、開発独裁
型体制であろうと、人民を抑圧・監視し、虐殺する、または「しかねない」政府は一
切ゴメンである。職業スポーツ選手ばかりでなく、ぼくらスポーツ観戦愛好者は、断
固、抑圧政治や反民主主義を拒否する。いかなる大義名分があろうとも。
考えるまでもなく、こうして世界の民がスポーツ観戦に一喜一憂したり、草サッカー
に汗を流したり、時差8時間ものアウェー(敵地)でのテレビ中継に寝不足になれる
(はたから見れば“痴態”の一種かもしれないが。)のも、武力行使がない賜物なの
だ。
国柄なのか、ラテンアメリカとくにW杯サッカー優勝チームのブラジルの大衆が夜っ
ぴて太鼓を打ち鳴らし(まあ騒々しいこと。)、老若男女の別なく歓喜に酔いしれる。
敗戦となれば時として心臓麻痺で死者まで出る始末。
2004年・アテネオリンピック・男子マラソンで犯罪者の走路妨害に遭い、理不尽に
も優勝を逸したデリマ選手(ブラジル)は、その後、アイルランド協会から正式に謝
罪が発せられた際に神々しいほどの感動的な返答インタビューで更にその評価を上げ
た。彼は、優勝を妨害した犯罪者を憎むのでなく「赦した」のだ。ぼくは当時の速報
でこれを知った時、なぜか故ヨハネ・パウロ2世を思い出した(武力行使を憎み、世
界平和のため、生前全世界を駆け巡ったヴァティカン元法王は旧ソ連KGB(諜報機関)
によって本当に暗殺されかかった。が、法王は報復や制裁措置を厳しく禁じた。)。
まさにグレイス(祝福)、サルヴァドール(救済)、神(の恩寵)の御業と称えたい
が、これも非戦時の国であるがゆえ(やっ、無神論の方々には申しわけない)。
スポーツと体制転換から平和に話題が広がったので付け加えたい。「スポーツ9条 の会」には超大物スポーツ選手がまだ名を連ねていない(?)ようなのは、正直かな りさびしいものがある。種目を問わず超大物選手の加入の可否は、この分野における 護憲運動の行方に微妙に影響するかもしれない。スポーツ界にはぜひ真剣に熟考し、 加入していただきたい。
最後に「平和とスポーツ」、とくに相撲界に注文をひとつ。「どうか、最初は2~3
人でもいいから『スポーツ9条の会』に加入してください、できれば横綱・大関クラ
スがはいってくれれば更にありがたい、アピール効果もあがります」と。このサイト
読者の中に相撲界と人脈のある方が、もし、いらっしゃれば、相撲協会もしくは各部
屋(親方でしたっけ?)の御大にぜひ声をかけ勧誘していただきたいとも思う。相撲
に疎いきょーびの一青年ながら、力士の出身国がもっともっと多国籍化してくれ!と
心から叫びつつ。
拙稿にお付き合いいただいた読者諸氏に感謝申し上げたい。