原始共産制の概念は、北アメリカ原住民を中心として、
その当時の世界の原住民の生活を綿密に調査・研究したモルガ
ンの「古代社会」に基礎を置いており、エンゲルスの「家族・
私有財産及び国家の起源」の中で言われております。管見では
ありますが、モルガンの研究は、実証的ではあるが、西洋が進
歩していて、他は遅れた地域という認識が根本にあるように思
います。原住民を原始時代の生きた化石人間と断定して、古代
社会を論じていると思います。モルガンが発見したのは、古代
社会だったのでしょうか。私には、北アメリカ原住民やその他
原住民もやはり彼らなりの社会制度を歴史的に作り上げてこな
かったとは思えません。
西洋が進んでいて、他の地域はすべて停滞しいたそんな偏見
から、マルクスもエンゲルスも解放されていなかったのです。
彼らの史的唯物論はここから出発しますから、大いに検証する
必要があると思います。マルクス主義ないし科学的社会主義な
るものの底の浅さを露呈しているのではないでしょうか。マル
クス主義は、徹底的に唯物論的だなどと言いますが、ヨーロッ
パ中心主義という唯物論では絶対に説明のできない観念論が忍
び込んでいます。
原始共産制とは、ヨーロッパから見て、未開と思われていた
地域の住民が歴史的に創造してきた社会制度だとも考えられる
のです。また、むしろそれは、人類の持続可能性という観点か
らするならば、資本主義は勿論のこと、マルクス・エンゲルス
が目指した社会主義よりも優れた制度だったかも知れません。
これからの世界は多様性を認めざるを得ません。すべての民族
は固有の発展史をもっていることを認めるべきでしょう。「あ
なたのお祖父さんは化石人間だった」というような学説は棄て
るべきです。