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「科学的社会主義」討論欄

浩二さん他へ

1999/10/30 J.D.、20代、学生

 最初に確認したいのですが、浩二さんは『資本論』等を読んでおられるのですか。先の投稿で私が指摘しておいた「簡単なところ」(搾取がなくなっても再生産は可能であることと、生産の社会化はすでに実現されていること)は理解していただけたのでしょうか。一応理解していただいたものとして話を進めます。
 何から言えばいいかよくわからないのですが、とりあえず「あなたのこの単純な言い切りについては、ご自分でどう評価されるおつもりでしょうか?」というのに答えておきます。私は、「科学的思考というのはある意味、単純な考え方を否定する考え方だと思います」と書きましたが、ここで言う「単純な考え方」というのは言い換えると「常識的な考え方」ということです。科学は事物・事象の構造を把握しようと努め、さまざまな仮説を立てていきます。科学が発展するにつれて、その仮説も複雑なものになっていきます。そして最終的には事物・事象の本質が明らかにされるわけですが、その本質というのは意外に単純であることが多いのです。マルクスは『資本論』等の著作で経済的土台の研究を進め、資本主義社会の本質を明らかにしたわけですが、資本主義社会の根本矛盾は単純なもので、生産の社会性と生産手段の私的所有の矛盾だったのです。この矛盾は敵対的な関係にありますから、後者の関係をブチ切って生産手段を社会的な管理にすれば解決することができるのです。と言うより、一般的に言って、敵対的な関係にある矛盾を解決するには、矛盾を止揚するしか方法がないのです。これが『資本論』等の研究によって出された結論です。この結論がいかに単純なものであろうと、「常識的な考えか方」とは違うのは明らかでしょう(蛇足ですが、地動説も、以前の周転円やエカントに比べると、はるかに単純なものでしたが、これが常識的な天動説と違うことも明らかです)。
 だから、私が「この矛盾を解決するためには生産手段の私的所有の廃止をすればよいのです」と実に簡単に言い切れるのは、マルクスの業績のおかげです。しかし、具体的に(例えば今の日本において)どのようにすればこの生産手段の私的所有の廃止ができるのか、については今の私にはわかりません。だから、一般論だという注釈を付けたのです。あるいは、「詳細な答えを出せるはずがない」とも書きました。浩二さんは、「あなたはこれらの条件をまるで勘案することなく」と書いておられますが、その通りに勘定しないで一般論を述べる、という意図だったのです。ちょっと表現が不適切であったために意図が伝わらなかったのかもしれませんね。
 あと、浩二さんは日本共産党も結果をみて評価を変えている、とか、宮本顕治もどうのこうの、とおっしゃっていますが、私は日本共産党からはマルクス主義を学んでいません(つまり日本共産党とは学問的な立場が違う)ので、これらは私への反論の材料にはなりません。日本共産党のいう科学的社会主義は、(浩二さんが嫌いそうな言葉を使ってしまいますが)本来のマルクス主義から原理的には著しく後退している、というのが私の考えです。それなら本来のマルクス主義とは何なのか展開してみろ、と言われるかもしれませが、できる限りここに投稿していくつもりです。しかし、当然ですがまだ学んでいる途中ですので、いっきには展開できません。まあ、私自身は気長に議論していきたいと思っています。
 最後に、「ソ連などにおける生産手段の私的所有の廃止という壮大な実験の敗北は、かの国の特殊な条件に主たる原因を帰すことができるのですか?」ということに対して、私の考えを追加しておくと、他の原因としてレーニンの真理論や矛盾論の誤りが、スターリン以後訂正されるどころか拡大されていった、ということも挙げられるかも知れません。しかし現段階では、レーニンの真理論や矛盾論に大きな誤りがあったこと(さらにこの誤りを日本共産党も受け継いでいること)はわかっているのですが、それが社会的にどのように影響を与えたかについては全然検討していないので、この展開は追々ということにしてください。当面、真理論や矛盾論そのものについて議論するのが面白いかな、と思っています。