私は現実政治における共産党の役割を認めるものです。しかし、依然として、共産党の政策決定過程は閉ざされ、前衛主義、民主集中制など多くの問題が克服されておらず、限定的な支持しかできないと考えています。そのような立場から、発言させていただきます。
共産党が解決していない問題の一つに、ソ連崩壊の総括があり、本サイトでも最近川上慎一さんが自説を展開されています。
最近の文献を読んでいないので、大雑把な議論で恐縮ですが、共産党の見解は、ソ連崩壊はせいぜいスターリン主義の崩壊であって、それによって社会主義・共産主義の教義は傷ついていない、といった内容であると理解しています。
かつて共産党は生成期社会主義論を唱えていましたが、これも本来の社会主義が傷ついていない理由の一つにされているのではないでしょうか。
しかし、ソ連では「生産手段の社会化」が実現し、長期間にわたって計画経済が行われていたのであって、かりにどのように後進性や偏りがあったとしても、ソ連崩壊で社会主義経済の基本構想が決定的な打撃を受けたことはとうてい否定できることではありません。ソ連経済は、その中央集権的な計画経済の故に、経済が停滞し、情報化にも乗り遅れ、政治面の「共産党一党独裁」の動揺と相まってついには崩壊に至ったと私は考えています。なによりも、そこでは市場経済を計画化で置き換えることの困難が示されました。
一方、ソ連末期には、中央集権的な計画化の対案として、自主管理社会主義や市場社会主義の構想も模索されました。しかし、ユーゴスラビア社会主義やハンガリー社会主義の崩壊によって、その試みも失敗に帰したと一般には見られています。
私は、別にソ連のあり方を支持していたわけではありませんが、その崩壊に大きな衝撃を受けました。ソ連崩壊によって、少なくともマルクス的な、あるいはレーニン的な社会主義・共産主義の困難が証明されたと思ったからです。
もし、ソ連崩壊後も社会主義構想は傷ついていないと考えるのであれば、どのような社会主義が可能かを展開すべきです。日本共産党は、それをしないで、具体的なことは将来現実的になった段階で考えればいい位ののんきなことを言っているのではないでしょうか。私の学生時代にも社会主義についてそのような議論がありましたが、ソ連崩壊という現実をくぐって、同じような議論が通用するとは思えません。
以前にもここで書きましたが、共産党は「共産」党を名乗る限り、ソ連崩壊を踏まえた社会主義の構想を展開すべきであり、そうでなければ、共産党に対する疑問が氷解せず、国民の信頼は広がらないと思います。
最後に私の考え方ですが、月並みですが、マルクス的な社会主義は困難であり、対抗勢力の対案は社会民主主義で十分と考えています。