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「組織論・運動論」討論欄

なぜ「北朝鮮問題」を論じるか~7/22付愚等虫さんへ のコメントと感想など

2006/08/09 樹々の緑 50代 会社員

 上記投稿を拝見しました。私は、この「さざ波通信」サ イトでも、常に極少数意見であるという自覚があるので、論旨 を理解していただいて嬉しく思いました。

 さつきさんの誠実さや基本的な姿勢について、愚等虫さんと 私の感想に違いはありません。今回の21か月ぶりのやり取りで 、多少苛々したところはありましたが、その点、ご安心下さい 。おそらく、さつきさんも、私の北朝鮮人権侵害対処法に関す る投稿で、概ね合点が行ったのだろうと思います。その背景は よく分るのです。何しろ、「極少数意見」だという自覚からは 、一度に全部の(=全方位の)論点を取り上げて検討するのは 、私本人にとって大変な負担だったのです。
 しかし、2004年の5月頃の時点では、「相殺論」を克服する ことこそ、当面の大事な争点だと考えていました。そんなこと を言っているから、国民感情から乖離して選挙で見放されるの だと考えていたのです。それを、例えば長壁さんなどは、「右 」からの主張だと判断したのだろうと思います(今でもそうか も知れませんがね…)。とにかく、「さざ波通信」のようなし っかりとしたサイトで、互いに単純化された主張のデスマッチ ・バトルが、実り少なく際限なく繰り返されるのは、本当に厭 なのです。

 以前にさつきさんへの投稿の中でも述べましたが、私は国際 法の専門家などではなく、日常業務に法律が多少関係している ものの、それは国際法とは無縁の国内法であり、単に法律(実 定法)、国際法を学んだ経験があるという会社員に過ぎません 。もちろん、このサイトへの投稿に際しては、改めて文献に当 るなど、いい加減な文章を書かないように、自分なりにできる 限りの努力はしています。したがって、専門家が見ても「本筋 から大きくは逸れていない」という程度の議論はできていると 思っていますが、専門家が見れば、おかしなところや、議論が 粗いところは多々あると考えています。

 なぜこんなことを書くのかといいますと、このサイトを 閲覧しているであろう「民主的な」法律の専門家に対して、こ の、いわゆる北朝鮮問題の総合的な視点の確立について、ぜひ 本格的で専門的な発言を促したいからです。
 いわゆる「民主的」法律家団体の中でも、「相殺論」や「一 体的解決論」「内政干渉論」が、未だに幅を効かせている状況 だと漏れ聞いています。他方では、いままで「共産党系」だと 見られていた法律家の中から、拉致問題や北朝鮮の人権問題に 関わっているうちに、「俺の人権が何にも優る」という「国際 人権擁護運動」家へと「転化」してしまった方々も、かなり生 まれているように感じています。
 私には、この状況が残念でならないのです。

 私が、先の北朝鮮人権侵害対処法に関する日本共産党の見解 を取り上げて、その問題点を指摘しつつ、同時に、同法の理念 とそれを裏切る危険な本質について、素人なりの検討を加えた のも、単にこの法律の危険性を指摘したいというだけでなく、 「いわゆる北朝鮮問題」が、改憲阻止勢力のまっとうな前進を 阻む「アキレス腱」のような役割を果たしている情勢に、非常 に危惧を感じているからです。

 北朝鮮人権侵害対処法に関する投稿でも述べましたが、この 問題に関する限り、日本共産党の理論的立場に一貫性や原則的 な明確性は、決して感じられません。
 その一方で、この問題が、最近のミサイル発射問題に即応し た閣僚・元閣僚の発言にも典型的に見られるように、日本の国 民世論に対して不当な誘導を行う、最も「手近で便利な道具」 として最大限に活用されていることは、ほぼ疑いがないと思い ます。
 北朝鮮人権侵害対処法の成立や、今回のミサイル発射問題に 呼応するかのように、このサイトでも、日本人拉致被害者の救 出運動が、恰も「国際人権擁護運動」の最前線を担うものであ るかのようにいう投稿や、北朝鮮政府が、「人民民主主義」「 社会主義」を標榜しているからという理由だけで、相も変らず 「社会主義は破綻した」「社会主義の理想を信じていた自分は 愚かだった」という類の投稿が、増えているように思います。 多くは善意の人たちでしょう。私たちは、その現実を正面から 受け止める必要があります。
 しかし同時に私は、中には意図的に、こうした趣旨の投稿を タイミングを見計らって執拗に行っている人たち(ボランティ アであれ、より組織的なものであれ)が存在していると、考え るようになりました。
 愚等虫さんが指摘されていた、聞くに堪えない言葉のやり取 りをする人たちの中にも、一定割合で、そうした人たちがいる ように思います。そして、このような一種のイデオロギー攻撃 は、ネット上だけでなく社会のあらゆるところで、絶えず繰り 返されているのです。先に述べた「実り少なく際限ないデスマ ッチ・バトル」の一部も、わざと作り出されているのではない かと、私は疑っています。

 そして、このような系統的な攻撃を本当に明確かつ断固とし て乗り越えられるなら、「社会的攻撃に社会的連帯で 反撃を」という総路線が、何の曇りもなく現実味を帯びてくる と、私は考えています。

 先の投稿でも簡単に触れたように、これは、現在の日本共産 党にとっては決して「楽な」課題ではないと思います。結局、 「ソ連・東欧の崩壊」に対する自党の態度の全面的再評価にま で進まざるをえない問題だと思うからです。
 だから、改憲勢力も高を括って、「北朝鮮こそ、社会主義の 本質の見本だ、北朝鮮を暗黙裡に擁護している共産党や社民党 に投票すれば、こうした拉致を平然と行う恐怖政治を招くぞ」 と大々的な宣伝攻勢をかけることができるのだと、悔しく思っ ています。憲法9条改悪を巡る問題でも、「現にこうして、国 際ルールを守らず核兵器の開発を進めている国家が、隣にある という現実にどう対処するのか」「もしもの時に備えて、敵基 地攻撃能力を具備することが必要不可欠ではないか」という議 論が、政府の元・現閣僚から積極的に出されていることを見る につけ、悔しさはいっそう募ります。

 平和共同候補の推進によって、来年の参議院選挙で、改憲発 議要件である総定数の3分の2以上の議席を改憲勢力が占める 結果を阻止することは、政権獲得の展望がない現状でも、非常 に重要な打撃を支配勢力に与えることになります。改憲勢力と しては、それ以前に、改憲の地ならしをするため共謀罪・教育 基本法改悪等々、一連の弾圧法規の強化を図ってくるでしょう 。これからの1年間に、今回のミサイル発射問題を含めて、い ろいろな「北朝鮮情報」が、それこそタイミングを見計らって 出されてくるでしょう。それらの反動攻勢を打ち破れる確固と した理論的見地を確立することが、なぜ現下の緊急課題である と党中央は認識できないのか、私は本当に悔しく思っています 。

 実はこの点に関しては、すでに似たような経験を日本共産党 は持っているのです。それは、1989年の天安門事件直後の参議 院選挙で、当時の宮本議長が、談話「中国当局の暴挙を批判さ れる方々は日本共産党へご投票を」を発表したことです。宮本 議長はその中で、「人権問題は国際問題です」とはっきりと述 べています(1989年7月11日付「赤旗」)。
 当時は、国際人権規約発効(1976年3月)後ではありましたが 、中国はまだ、この規約に加入しておりませんでした(加入は1998 年10月)。したがって、この談話で「人権問題は国際問題です 」といっている根拠は、国際慣習法ないし国際政治原則以外で はありえません。世界人権宣言から40年余、国際人権規約B規 約発効から13年を経過していますから、「市民的政治的人権保 障は国際慣習法化している」という、リベラルな国際法学説に 従っているのかと、私などは党中央の見識の高さに感動したも のです。

 そしてこの見地は、当時直面していた参議院選挙におい て、「日本共産党の宣伝カーがきたら、中国の戦車を思いだせ !」式の公明党などの言説に、党員や支持者が正面から立ち向 うための有力な武器となったのでした。
 しかも、その後発行された『天安門事件を追う 中国問題 日 本共産党はこう考えます』という日本共産党中央委員会宣伝局 編のパンフレットに収録された、1989年10月20日付『天安門事 件以後、中国はどうなっている?』という題の菊池敏也国際部 員(当時。現「赤旗」北京特派員)の論文の中では、次のよう に述べられています。

>一九六六年、国連で採択された国際人権規約(七六年に発効 )では、人権をまもることが国際問題としての性格をもつもの とされています。人権問題は国際問題であり、他国における人 権侵害をとりあげて批判することは、けっして「内政干渉」で はなく、むしろ国際的義務なのです。(上記パンフ30ページ8 ~11行)

 これは、先の北朝鮮人権侵害対処法に関する私の投稿の基本 的立場と非常に似ているものです。私は、他国における人権侵 害をとりあげて批判することが、「むしろ国際的義務なのです 」とまでは考えませんが、「内政干渉」ではないとする点では 菊池氏と同じ意見だからです。
 先の私の投稿を読まれたみなさんの中には、「国際法マニア の人間が、趣味的な言説を行っている」と感じられた方もおら れるでしょうが、私の見解は、ごく一般的なものでしかないの です。

 チャウシェスク政権の倒壊は、上記菊池論文発表の2か月後 のことです。そして、これを契機として沸騰した党内外の議論 に直面して、翌年の「赤旗」に連載され、『前衛』1990年10月 号に転載された宮本議長の論考では、次のように見解が修正さ れてしまいました。

>人権問題も、当然国内問題であるけれども、しかしそれが重 大なまたは顕著な系統的侵害をひきおこした場合には、国際問 題として扱われ(る。)(第六章第6段落第1文)

 つまり、他国の人権問題は、原則として国内問題であるが、 「重大なまたは系統的侵害をひきおこした場合には」、例外的 に国際問題となる、という見地です。ここで何が「重大なまた は系統的侵害」に当るのか自体も問題ですが、結局、日本共産 党中央は、一旦公刊物上の論文で明示した「人権問題は国際問 題である」という原則的見地を、こっそりと引っ込めてしまっ たといわざるをえないのです。

 その背景は明らかです。ちょうど、天安門事件に引金を引か れたかのように、相次いで「ソ連・東欧の崩壊」が起きてしま い、その原因が、ソ連の大国主義的民族抑圧にも支えられた東 欧各国内の人権抑圧政治に対する、人民の怒りにあったからで す。モスクワにもブカレストにもベオグラードにも、長期に亘 って「赤旗」特派員を置いていた当時の日本共産党中央が、政 権打倒をもたらすほどの激しさを持つ、人権抑圧政治に対する 人民の怒りの蓄積を「知らなかった」では済まされません。
 だから、「重大なまたは系統的侵害をひきおこした場合」で なければ「国際問題」とはならないという基準を立てて、従来 の「ソ連・東欧諸国内の人権問題」は、「重大」でも「系統的 」でもなかったから、積極的に取り上げて「赤旗」紙上等で批 判などしなくて良かったのだと、弁解する必要があったと思う のです。

 この点に関連して、「社会主義諸国の政権を人権侵害という 理由で批判するには確たる証拠が必要だ」ということも、当時 よく言われていました。しかし、このような論者自身が認 めているように、* 当時の「社会主義諸国」内では一般に 、相当強度の報道規制と取材規制がかけられており、個別の人 権侵害制度の詳細を明らかにする「確たる証拠」などを得るこ とは、非常に困難だったのです。だからこそ、そのように国民 の「知る権利・報道の自由」を強度に束縛する制度自体が持つ 問題性を、正面から取り上げて、その人権侵害性を批判すべき だったのです。ルーマニアは当時すでに、国際人権規約B 規約の当事国だったのですから。ところが、この論者は、 そうした入口における人権侵害を何も問題としないまま素通り してしまい、そういう人権侵害制度の存在を前提にして、「確 たる証拠を得ることは困難だった」と弁解しているのです。
 このような論調に、社会主義「生成期」論が下地になってい ることは、明らかだと思います。

 「脱北者問題は、基本的に北朝鮮の内政問題だから、日本政 府が施策などにより介入するのは適切でない」だとか、「脱北 者が不法滞在者となる関係各国の事情も考慮すべきだ」とか、 何か涼しい顔をして言えるのも、こうした見地がずっと維 持されているからに他ならないと、私は考えています。( もっとも、上記宮本論文の見地に従ったとしても、脱北者問題 は「重大かつ顕著な系統的人権侵害」だと思いますが…。)

* 例えば、新原昭治(当時国際部長)「国際連帯についての日本 共産党の基準とルーマニア問題」(「赤旗」1990年5月1日付) 第三章第(2)節など

 平和共同候補運動を進めておられる方の中には、法律家もい らっしゃるようです。
 先の「赤旗」紙上に発表された無署名論文によって、運動を 進めることに新たな困難を感じられている法律家の方も、少な くないのではと思っています。参議院選挙の方針という「全国 的な性質の問題」に関しては、「国際的な性質の問題」と同様 に、「党の全国方針に反する意見を、勝手に発表することをし ない」(日本共産党規約第17条第1項)義務を負っている方も いらっしゃるからです。
 しかし、これを押してこの運動を進めようとするならば、必 ず、国際的性質の問題である・いわゆる「北朝鮮問題」に対す る確固とした見地(それはたぶん、現時点での日本共産党中央 の意見とは異なるものにならざるをえないでしょう)も、求め られるようになると思います。
 それは、一連の北朝鮮問題が、改憲勢力が依拠する主要 なイデオロギー攻撃材料の一つであり、また、ミサイル発射- ミサイル防衛・敵基地攻撃能力具備問題は、まさに憲法9条改 悪という、改憲の核心部分にも直結しているからです。そ して同時に、従来ともに行動してきた人たちの中から、この問 題が「躓きの石」となって、客観的には改憲勢力の反動攻勢に 援護射撃をするに至っている人たちが、残念ながら出てしまっ ているからです。

 私の知見が単に狭いために、北朝鮮人権侵害対処法の問題点 について専門家が多く見解を発表しているのに、私が知らない だけであるならば、むしろよいのです。また、法律家として、 日本共産党と見解を同じくするというのであれば、仕方があり ません。
 しかし、民主集中制が根本原因となって、これら規範意識が 強い人たちからの適切な見解の発表が阻まれているのであれば 、残念でなりません。共謀罪や教育基本法に関しては積極的に 批判の論陣を張っていても、北朝鮮人権侵害対処法については 沈黙してしまったり、「腫物に触る」ような態度になってしま ったりするのでは、これらの人たちの「最高規範」は事実上日 本共産党規約である、ということにもなってしまいます。そん なことで本当によいのか、という気がするのです。

 いま述べてきたような、改憲阻止運動の一つの有力な障害と なりうる政治的困難に立ち向い、北朝鮮に関する ?過去の清 算未了の問題、?国交正常化の問題、?日本人拉致問題、?脱北 者保護とそれを生む北朝鮮国内の人権侵害の問題、?核兵器開 発問題、のすべてについて、一つ一つ、一般国民に対して説得 力がある、基本原則が決してぶれない、全面的な見地を正しく 確立することなしに、おそらく運動は前進させることができな いと、私たちは覚悟する必要があるのではないでしょうか。

(補足)
 なお、愚等虫さんが標記投稿(補足)で指摘されていた、日 本やアメリカが従来事前通報していたのかという点については 、私もまったくの無知で、論評できません。

 ただ、中央日報日本語版の記事には、韓国国防部が、北朝鮮が「5日0時から11 日午後8時、日本の新潟県北西800キロ地点一帯は船舶の航 海を避けてほしい」と航海禁止区域を宣布した事実を発射2日 前に当る3日の時点で把握していたにも拘らず、大統領府が「 危険なし」と判断して関係部門に通報しなかったため、その判 断の不適切さが国会で追及されている、というものがあります 。

 この「宣布」が、欠如が問題とされている「事前通報」に当 らないことは、当事者の応酬内容から見て当事者も前提として いるように感じられます。しかし、では、「事前通報」として どのようなものが想定されているのか、よく分りません。その 点も調べる必要がありそうです。

 「赤旗」7月6日(木)付3面で指摘されている「国際ルール 違反」の内容を見ると、国際水路機関(IHO)と国際海事機関(IMO) が1991年11月に採択した決議「世界的航行警告サービス」の付 属文書で「事前通報がふさわしい」とされる事項の一つに「ミ サイル発射」を挙げており、また、国際民間航空条約(シカゴ 条約)の付属書でも、「締約国が民間航空機の航行に危険を及 ぼす恐れのある活動を行う際には、事前に関係航空当局間で調 整を行わなければならない」と規定していることを指摘してい ます。そして、北朝鮮は、IHO・IMOの決議に参加し、シ カゴ条約の当事国でもあるとされています。
 しかし、この「赤旗」記事は同時に、これらの決議・付属文 書自体は「法的拘束力を持たない」とされているといっていま す。
 ではなぜミサイル発射が「国際ルールに反している」と言え るのかというと、国連海洋法条約第87条第1項の「公海の自由 」(その中には北朝鮮ミサイルの「上空飛行の自由」も含まれ る-(b)号)行使に際しては、同じく公海の自由を行使する他 の国の利益に対して「妥当な考慮を払」わねばならないという 制限(国連海洋法条約第87条第2項)があるところ、その「妥 当な考慮」の内容を示す解釈基準として、上記IHO・IMO 決議やシカゴ条約の付属書の規定が援用されているから、「事 前通報なく発射したこと」が「国際ルールに反している」とい う結論になるのだと言っています。
 けれども、私の手許にある資料では、2002年12月1日現在、 北朝鮮はこの肝心要の「国連海洋法条約」に加入していないの です。もちろん、国連海洋法条約第87条の規定は、公海利用に 関する従来の国際慣習法を成文化したものに過ぎないと理解で きますから、当事国と否とを問わず、同じ法的結論になるとも 言えますが…。

 そこで、「赤旗」の上記記事は、ミサイル発射自体に関する 「行わない」旨の2つの国際合意の存在にも言及しています。 「事前通報」の有無に拘らず、発射自体が国際法上違法だとい う趣旨です。
 一つは、2000年10月の米朝共同コミュニケであり、もう一つ は2002年9月17日の日朝平壌宣言です。
 しかし、この両文書の文言を見ると、「ミサイル問題に関す る会談が継続している間は、すべての長距離ミサイルを発射し ないということを米国側に『通報した』。」だとか、 「朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサ イル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく 『意向を表明した』。」だとかいうもので、法的義務 を負担する意思表明と言えるかどうか、単なる政策の表明では ないか、疑問なしとはしません。

 しかし、何れにせよ、今回のミサイル発射が、国際社会が発 射準備の段階からこぞって懸念を表明し、上記2合意の遵守を 求めていたことからも、国際社会への挑戦であり、北東アジア の平和と安全に対する脅威となりうる性質を持つことは、疑い がないでしょう。そして、落下地点は発射主体のみが正確に把 握しうる(といっても、今回のテポドンについては「失敗」だ ったらしいですから、誰も分らなかったとも言えますが…)以 上、落下地点付近に存在しうる船舶や、飛行ルートで交錯しう る航空機の航行の安全に、事前に配慮すべきことは、厳密な国 際法規違反の如何を問うまでもなく、当然の要請だと言えます 。
 そうした他者への配慮に欠けている北朝鮮政府の姿勢は、や はり、異常だとしかいいようがありません。