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「組織論・運動論」討論欄

階級間の相互浸透と民主主義について>ごまさんへ

2002/10/20 J.D.

 はじめに、「マルクス主義は産業革命後のイギリスで生まれたものだと思っているし、したがって彼が言うように万国の歴史に普遍的に作用するものではないと思っている」ということですが、ここでいう「マルクス主義」というのが唯物史観のことだとするなら、マルクスは唯物史観について「万国の歴史に普遍的に作用する」なんて言っていないはずです。本題ではないので簡単にいっておくと、唯物史観とは社会科学としての一般的方法論です。直接の時代的世界性や個別歴史の機械的な集合としての世界性を云々するレベルではないのです。
 さて本題ですが、階級の話題は、何が論点なのかいまいち分からないのですが、一般的にいえば階級間の相互浸透という問題があります。資本主義社会には、利害が敵対する二大階級が存在します。ブルジョアジーとプロレタリアートがそれですが、この二つの階級は相互に相手の性格を受けとるようになるのです。例えば、労働者であっても、株を持つことによって多少なりとも資本家としての性格を受けとります。この物質的な条件に媒介されて、意識もまた資本家的になっていくこともあります。また、経営と管理の労働が複雑膨大になっていくにしたがって、資本家としての仕事が労働者の仕事になっていく、というのも、労働者の資本家化の一つのあり方です(これはもちろん、きたるべき未来社会=資本家がいなくても大規模な労働計画が実現する社会への一つの準備です)。
 もっと簡単にいえば、労働者でもあれば農民でもあるという矛盾した人間というのは、もちろん存在しているわけです。念のために説明しておくと、ここでいう矛盾というのは弁証法の術語で、対立を背負っているという関係のことです。同じ人間が「労働者」と「農民」という対立を背負っているわけですから、矛盾だというのです。
 さて二点目ですが、少し誤解を与えてしまったようです。私がプロレタリアートの「利害が今日の政治・社会体制全体と和解しえないように対立している」といった場合の「今日の政治・社会体制全体」というのは、資本主義社会とブルジョア独裁のことです。ここでいう「独裁」というのは、それこそ社会科学の用語ですから、ヒトラーの独裁とか北朝鮮は独裁国家だ、などという場合の「独裁」とは意味が違います。簡単にいうと、資本主義社会の政治体制のことをマルクス主義ではブルジョア独裁と規定していると思ってもらって結構かと思います。もう少しいうと、資本主義社会ではブルジョアジーが経済的な支配階級であることはいうまでもありませんが、ブルジョアジーの意志が国家意志に反映する(反映ですから、もちろんブルジョアジーの意志と国家意志は相対的に独立しています)ことによって、政治的にも支配する階級となっているのだから、この体制全体はプロレタリアートと非和解的に対立している、ということです。
 ブルジョア独裁に代わって、プロレタリアートの意志を全面的に国家意志に反映させるのがプロレタリア独裁です。なおプロレタリアートの独裁する国家も、全体として民主主義であり、プロレタリア民主主義などと呼ばれています。
 また、本来的な共産党の組織原則である民主集中制というのは、「民主の原則から言えば極めて奇怪」であるどころか、民主主義の高度の発展形態だと私は捉えています。「みんなで決めてみんなではたらく」という素朴な民主主義にも、既に強制が伏在しています。自分たちの意志・要求を自主的にうみだし、それを組織の意志に反映させ、そしてこの組織の意志に服従するのですから、民主主義とは弁証法的にいえば自主性と服従の矛盾ということができると思います。共産党というのは、大変困難な仕事をするための大きな・そして複雑な・組織ですから、この自主性と服従の矛盾をしっかりと維持して、大きな集団力をつくり出すためには、それなりの高度な仕組みが必要なのです。本来はこの仕組みのことを民主集中制というのではないか、と考えています。
 ついでに脱線しておくと、プロ独=過渡期が終わった後の共産主義社会では、民主主義は死滅します。自主的につくり出した組織の意志に各個人が服従しなくとも、高度なパーソナリティーを持った個人は自分の意志をそのまま行動にうつしてもそれで社会が万事うまくいくからです。まあ、そのような社会を共産主義社会と呼んでいる、といえるかもしれませんが。もちろん、それが実現可能かどうかは見解の分かれるところでしょう。
 日本のアジア的特質に関しては、その克服が共産党の根本的な目的・任務(とりあえずプロレタリア独裁の樹立としておきましょう)にとって不可欠であるならば、根本的な目的・任務を達成するための手段=主要目的(主要な任務)ということになります。因みに私はアジア的特質は、日本共産党員をも規定していると思っています。