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綱領・規約改定討論欄

党綱領の根本問題

2001/5/29 J.D.

 はじめに。もうかなりの時間が経ってしまったが、私の発言がきっかけで、嫌煙家同志が党を去られたようである。かなりの実力者であっただけに、残念で仕方がない。一刻も早く嫌煙家同志が復党できるような党にするべく努力することをここで決意しておきたい。

 さて前回は、現在の党が根本的に誤っており、共産主義政党として復活するためには、いわゆるコペルニクス的転回が必要であるという私の立場を表明した後、綱領の問題に触れたところまでであった。そこで今回は綱領の構造について述べてみたい。

 一般的にいって、革命をめざす政党の綱領は、思想・理論体系としてのマルクス主義と密接不可分の連関を持った一般的な原則綱領と呼ばれる部分と、戦略・戦術綱領あるいは簡単に実践綱領といって、政治綱領と社会=経済綱領とを含んだ具体的な部分とから構成されている。従って前者は、世界革命の問題までを包括しており、相対的に不変であるのにたいして、後者は、権力奪取以前と以後とでは大きく異なるし、また権力奪取以前でも革命の戦略段階の変化に対応して根本的に変化しなければならないということになる(これ以後の論の展開としては、もちろん権力奪取以前の段階を想定している)。
 日本共産党の綱領論争を振り返ると、例えば民主主義革命か社会主義革命かといった、どう善意に解釈しても(というのは、この問題は問の立て方自体がすでに誤謬であるから)実践綱領的課題に関する意見の相違でもって、組織上の分裂にまで至ってしまっている。これは、実践綱領上の対立をそのまま理論的・思想的な党派上の対立、すなわち原則綱領上の対立にまで不当に拡張したことを意味している。しかし、原則綱領において基本的に一致している限り、たとえ実践綱領上で大きく見解が異なっていたとしても、このことから相手を除名したり、自ら脱党したりすることは、原則的にいって誤りである。私が党員であり続けることができる根拠がここにある。
 ところで、『社会科学総合辞典』に従えば、国家権力が一階級ないし諸階級から、他の一階級ないし諸階級に移動することを政治革命といい、古い経済的社会構成体をより高度の新しい経済的社会構成体にかえることを社会革命というのであるが、現代革命においては、社会革命に対する政治革命の先行性を主張するのがマルクス主義の立場である。これは原則綱領的問題でもあるので、本来これを認めないものは、共産党員にはなれないのである。然るに現在の日本共産党員は、革命のイロハもまったくご存知ない状態である。
 それはともかく、ここから次のような結論が導き出せる。それは、実践綱領(あるいは戦略・戦術綱領)は、あくまでも政治革命綱領として構成されなければならない、ということである。マルクス主義の立場にたてば、政治革命以前には、すなわちプロレタリア独裁樹立以前には、社会革命的課題はもっぱら社会改良的要素としてしか実存しえないのであるから、社会=経済的綱領は、実践綱領において、必ず政治綱領に従属するものとして、従ってまた政治綱領との連関において提示されなければならない。このような実践綱領を持つことによってはじめて、個々の具体的な社会的=経済的要求がどのように国家権力奪取につながるのかということが把握できるのである。
 しかしながら我が党においては、政治革命の問題と日本改革の提案がまったくといっていいほどつながってこない。反動勢力はこのギャップをついているのに、「日本改革の提案は綱領路線の具体化」などと百回繰り返しても、無駄である。これでは何も言わないに等しい。何故こんなことになってしまっているのか、その根本的な誤謬は何であるかというと、それは、我が党の実践綱領が、社会革命綱領として構成されていることである。繰り返しになるが、政治革命以前には、社会革命的課題はもっぱら社会改良的要素としてしか実存しえないのであるから、政治革命綱領を欠落させた社会革命綱領としての実践綱領が、実際には社会改良綱領としてしか作用しえないことは、理の当然といえるのである。
 なお、原則綱領に関しても、世界革命綱領の部分がきれいサッパリ追い出されているという非常に重大な問題(なぜなら、世界革命は、革命理論としてのマルクス主義に固有の根本理念であるインターナショナリズムを象徴するものだからである)があるが、話が拡大しすぎるので、ひとまず措いておく。