「問題別討論欄」の「組織論・運動論」での議論を受けて、最低限、党内選挙制度にかかわる規約の改定に関する提案をしたい。
現在の規約では、党内で選挙し選挙されることを党員の権利として認めているが、しかし、選挙制度の内実については何も言われていないので、事実上、絶対に政権交代が起こらないような選挙制度になっている。それどころか、少数派が絶対に党大会に選出されないようになっている。これでは、党員の権利など有名無実だし、「民主集中制」の「民主」など空文句であろう。少なくとも、共産党が党の外で呼びかけている選挙原理と同じ「比例代表制」を規約の中で明示するべきだろう。
この場合、どのような選挙制度が適切かというと、かなり以前の投稿で吉野傍氏が提案した「累積投票制」がいちばん妥当だろう。これは、現在の選挙制度と同じく、定数と同じだけの投票権を各有権者が持つが、その投票を特定の候補者に集中させることができる制度である。今の制度では、特定の候補者に票を集中させることができない。たとえば、500人の有権者に、100の定数があり、1人100票持つとする。そして、指導部が100名の推薦名簿を提出し、異論派の党員が1人だけ立候補するとする。現在の制度のように、各候補者に1票づつしか投票できないとすると、この1人の異論派が当選するためには、最低でも51%の得票を必要とする。しかし、特定の候補者に票を集中させることができるようになると、まったく違ってくる。たとえば、この立候補者は、まずもって自分の100票をすべて自分に投じるだろう。この時点ですでに、この独自候補者は100票を確保する。さらに、他にこの立候補者を強く支持する仲間が4人いれば、この立候補者は500票確保する。残りの495人が全員、多数派の支持者だとすると、彼らは、100人の多数派候補者の全部を当選させようとするから、その票を全員に1票づつ分散させざるをえない。すると、多数派の名簿登載候補者は、全員が495票を獲得する。すると、500票を確保している少数派の異論派は当選できるようになる。この場合、得票率と議席占有率とはほぼ均衡する。すなわち、少数派が500人の有権者のうち5人の支持者をもっているということは、その支持率および得票率は1%である。そして、100の定数のうち1つの議席を確保しているわけであるから、その議席占有率はやはり1%である。
これは、計算を簡単にするために、5人の強い支持者が自分の投票のすべてを特定の候補者に集中し、多数派支持者はそのすべての票を指導部の名簿に投票するという仮定にしたが、実際はもう少し複雑になるだろう。たとえば、やや強い支持者が、たとえば、50票を異論派党員に入れて、残り50票を多数派名簿に適当に分散させたり、あるいは、基本的に多数派支持の党員でも、一人ぐらい異論派が当選してもいいと思って、一部の票を異論派に割くかもしれない。いずれにせよ、この選挙制度においては、候補者が獲得した得票数にほぼ一致した議席を得ることができる。
具体的な投票制度をどうするかまでを規約に書く必要はないかもしれないが、少なくとも「比例代表的なものであること」を明示し、現在行なわれているような制度は排除するべきだろう。
もう一つ、選挙制度にかかわって重要なのは、分派禁止規定との関係である。すでに、浩二さんへの投稿で指摘したように、分派禁止規定は、少数派の大量当選の可能性をあらかじめ排除している。一番いいのは、分派禁止規定を廃止することだが、それができない段階でも、せめて、代議員に選ばれた党員の党員権を停止することはできないという、規定をもうけるべきだろう。現在、国の制度として、国会議員の不逮捕特権というのがある。これは、国民によって選ばれたという事情を非常に重く見ているものであり、国民主権の原則に合致した規定である。同じく、党内選挙で当選した党員の代議員権も、上級機関の恣意で停止されてはならない。調査の必要を指導部が認定したとしても、代議員権を停止する必要はない。代議員権を保持したままでも、十分、調査は可能である。したがって、調査の必要から党員権を停止する際にも、代議員権は停止されないという例外規定を、はっきりと規約に書き込むべきである。さもなくば、好きなだけ党員権が停止することができ、異論派は絶対に上級の大会に出ることができなくなるだろう。
以上、2点の改定案は、まったく初歩的なものであり、民主主義の名に値する最低限の措置である。それさえもできないとすれば、やはり共産党には「民主主義」を語る資格はないと言わざるをえない。