7月に、政府の「IT革命」とその主要な具体化の一つである電子自治体(政府の「IT革命」には、その他の重点政策としてインフラ整備・Eコマースの環境整備・IT教育があります)とについて投稿しました。この問題について資料や参考文献などが充実したHPがありますので紹介しておきます。関心のある方にはお勧めのページです。
私の投稿のあと、編集部がとりあげ、それがJCPウォッチやサイバーアクションで話題になるなど意外な広がりに驚きました。簡単にそれらについて感想を述べます。
・新しいコミュニケーション手段としての利用が、現在のインターネット利用の主流だということは誰も否定できないものだろうということです。たとえば、『サイバーアクション』では、市民運動などにおけるインターネットの利用は、都市より地方の方が多いという指摘があります。これは、何も市民運動に限ったことではなくて、世界的に見ても、インターネットの普及率でトップとなっているのが、人口密度が低く冬の長い北欧の国です。コミュニケーションの距離を縮めるという便利さが、都市よりも地方で普及している原因でしょう。
・『サイバーアクション』で指摘されているコンテンツの問題、主としてデータベースとしての充実が市民運動の課題であるという点については、まったく同感です。しかし、これもまた市民運動に限ったことではないと思います。趣味で調べものをするにしても、日本のサイトでは役に立たなくて、アメリカのサイトを探してみたら見つかった、ということもめずらしくありません。けっして、市民運動のインターネット利用が日本社会全体において遅れているということではないでしょう。
・これを商利用ツールとして利用することは、コミュニケーションツールとしての広がりほどにもならないのではないか、ということです。国土が広くて通信販売が小売りに占める割合が比較的高いアメリカにおいてでさえ、Eコマースは、通信販売の3割に届いたところで落ち着いてきた感があります。通信販売自体がそれほど普及していない日本では、たとえインターネット利用率が上昇したとしても、普及は見込めないでしょう。
・しかし一方で、ITと密接な関係のある「グローバリズム」をみると、これが世界的に大きな変化を起こしつつあることは間違いありません。むしろ、「IT革命」の問題は、「グローバリズム」批判の中に位置付けられるべきだと思いました。
・マルクス主義の一般的な考え方に、技術自体は悪ではなくその資本主義的使用が悪なのだというものがあります。私は、はたして現代においてそれが通用するのだろうかという疑問があります。ラッダイト運動が起きた頃は、人々の目には新しい技術は搾取を強化する悪魔にみえたでしょうが、現代ではまったくそのような状況にはありません。実際に、新しい技術によって一定の生活の改善がもたらされていることを実感しているがゆえに、逆に
新しい技術を無条件に善であるとみる風潮の方が強いのではないでしょうか。それに「悪」の部分がみえにくいという事情もあるでしょう(環境問題など)。その場合は、「技術自体は悪ではない」という点より、「その資本主義的使用が悪である」ことに重点をおかなければならないのではないかと思われるのです。