5年ほど前に日本で入社した中国人社員が今年退社して中国で新しい会社をつくる。ロシアや中国でどの国の企業に就職したいか尋ねるとアメリカ、ヨーロッパ、日本の順らしい。理由は日本企業は能力が賃金に反映されない、出世が遅い、仕事の力量に応じて賃金が高くなる欧米企業の方が魅力的だというのが多数の意見。ただ手取り足取り仕事を教えてくれる日本企業に入ることはそれなりのメリットはあるらしい。慣れたら転職である。
事実関係から言うと、日本は世界で最も分配の平等が進んでいる。会社で大きな業績を上げても給料にそんなに反映されないし、様々の調整機能が社会に刷り込まれている。規制しかり公共工事しかり。しかし、今後は貧富の差が拡大する可能性があると思う。それはアメリカを見れば分かる。「パパは何でも知っている」というTVドラマが流行っていたころ、アメリカの大多数の中間層の担い手は製造業従事者であり、貧富の差も今ほど大きくなかった。
それが産業構造の変化と共に、製造業従事者が減り、経済のグローバル化に伴いMBAを取った経営スペシャリスト、高度な技術者、投資専門家等に高額な報酬が払われるようになってきている。そのことがアメリカの貧富の差を一層拡大してきている。日本も生産工場が海外に移転し、先端産業は猛烈な開発競争をしている。その中で優秀な日本企業の社員に対して海外企業からの引き抜き等があるなら、日本企業としても報酬の面で考慮せざるを得ず、貧富の差を拡大するかもしれない。現在はそんな入口にたっていると思う。
平等主義は、世界一の治安を誇る日本社会のベースにもなっていると思う。この良さを残しながら、日本が生き残れる独自の改革を目指したい。