選挙制度改革が話題に上ってます。TBS『報道特集』によると、自自公路線の暴走は池田大作の“小選挙区制は失敗だった”発言から始まったそうです。ガイドラインや盗聴法を公明党の生き残りのための取引材料にされるのはたまったものではありませんが、共産党がこの機会を利用して中選挙区復活論に便乗したり、比例代表制を宣伝したりするのは結構なことです。
しかし、この機会にもっと重視すべき問題があると思います。それは供託金制度の問題です。この制度は小選挙区制とともに導入されました。小選挙区制反対闘争のときには死票の問題ばかりクローズアップされ、供託金の問題は後景に追いやられてしまいました。これはまずかったと思います。もちろんマスコミや推進派は、民意の集約による政権交代実現などとキャンペーンを張り、供託金制度をほとんど無視しました。その結果、供託金制度があること自体知らない人が今も大勢います。
供託金制度の廃止をとくべつに重視すべきだと考える理由は、第1に、この制度は事実上の制限選挙であり、被選挙権の明らかな制限であって、深刻な人権問題をふくんでいるということです。小選挙区制による「有権者の意志の切りすて」やゲリマンダーによる一票の価値の差別よりも、この問題は人権問題としてはるかに深刻です。
第2に、供託金制度は政党助成金とワンセットになっており、両者あいまって既成政党の特権化と寄生化を促進する性格をもっています。既成政党は数十億~百億の助成金がもらえるため、全選挙区に候補者を立てても供託金は大した額ではありません。しかし、既存の地盤のない人々にとって供託金の額は途方もないものです。したがって新政治勢力の参入は事実上阻止され、国家に寄生した議会政党は安心してなれ合うことができます。
第3に、今まさに共産党の急速な右傾化によって議会政党のオール保守化・翼賛化が完成しつつあり、新勢力の議会への参入が可能な条件が緊急に必要になっているということです。たとえば、もし供託金がなければ新社会党などが候補者を立てやすくなり、共産党の右傾化を妨害する作用をするかもしれません。また共産党の堕落は、それに代わる社会主義勢力が登場し公衆にアピールするチャンスにもなりえますが、その条件をつくるためにも供託金制度廃止はぜひ必要です。
社会主義勢力にとって議会は、階級闘争がたたかいぬかれる舞台として労働者階級の成長のために必要です。議会の利用可能性が大きく制限されることは、ブルジョア社会を維持するための政権につく必要がない勢力にとってもマイナスです。