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「現状分析と対抗戦略」討論欄

不破委員長の東大講演と安保問題

1999/8/25 吉野傍、30代、アルバイター

 投稿欄が最近盛り上がっていますね。とりわけ、党員専用討論欄、問題別討論欄の「組織論」、「日の丸・君が代」欄などは、連日のにぎわいです。しかしながら、問題別討論欄の「現状分析」のところは、なんだか、閑古鳥が鳴いています。というわけで、小ネタですが、現状分析関係の投稿をしてみたいと思います。一発ネタで終わるかもしれませんが、少しは「現状分析」欄が盛り上がるきっかけになればと思い投稿します。
 で、何についてかというと、不破委員長が1995年に母校の東大で行なった講演のことです。何で今さらこんな昔のものを、と言われそうですが、最近、たまたまこの講演が載ったパンフレットを見かけて、ぱらぱらめくっていたら、少し興味深いくだりにぶつかったからです。それは、安保廃棄の問題についてなのですが、その中で不破委員長は次のように述べています。少し長いですが、引用します。

 「私が国会にでた26年前、1970年ごろには、民社党のような自民党寄りの政党でも、安保条約をいまのままで結構とは言いませんでした。安保の今の体制を変えなければいけない、ということは、野党であれば、どの政党も主張していました。
 今では、そこがまったく変わっています。民社党や公明はもちろん、長く安保条約廃棄を唱えていた社会党も『日米安保条約堅持』に変わってしまいました。ついこの夏の参議院選挙のときも、テレビの討論会などで、私たちが安保のことをいうと、『まだそんなことを言っている。日本共産党はなんでこんなに頭が堅いのか』といわんばかりの態度を、わが党以外の全政党がとったでしょう。『現実路線』などの看板でみな衣替えをし、『日米関係は変わらないで結構、いや変えたらこまる』ということで、日本共産党以外のすべての政党の共同戦線ができたのです。
 ところが、そこへ沖縄の事件が起こり、沖縄県民のたたかいがはじまりました。こういうときには、世論も激変します。日本経済新聞の8月の調査では、安保解消論は29%、維持論が60%で、安保賛成が多数派でした。それが、10月の調査では、解消論40%、維持論44%とほぼ横並びになりました。そして、産経新聞の11月の調査では、解消論(米軍は撤退すべきだ)44%、維持論(撤退すべきではない)31%と逆転しました。いまや安保解消論が多数派です。沖縄の全島あげてのたたかいという国民的な経験をすると、3ヶ月でも、世論はこれだけ変わるのです」(『学問のこと、社会のこと、日本共産党のこと:母校・東大駒場際で』、20~21頁)。

 「米軍は撤退すべきだ」という意見は必ずしも安保解消論ではないので(「駐留なき安保」という議論は昔からある)、この引用の最後の部分は少し不正確なのですが、いずれにしても、ここで不破委員長が言っていることは、昨年の暫定連合政権論を打ち出したときに言っていたことと対照的です。
 あの時、不破委員長は、安保解消論はたったの3割しかいない、という非常に否定的な言い方をして、安保凍結の政権論を持ち出しました。東大での講演では、たとえ安保解消論が少数でも、人民の下からの闘争によっては急速に世論を変えることが出きるし、実際に沖縄の事件(小学生が米兵に集団レイプされた事件)をきっかけに変えることができたのだと誇らしげに語られていました。私は、東大での講演こそが、共産党にふさわしい立場だと考えます。
 その時々の世論に追随するのではなく、根本的な民衆の利益を代表し、その立場がたとえ少数派であってもそれを堅持し、他の野党との駆け引きや迎合によってではなく、下からの人民の闘争と運動によって世論を変えていくということ、これこそ共産党の共産党たるゆえんのはずです。
 基地の被害を直接に受けるわけではない多くの国民は、今では沖縄の悲劇をすっかり忘れ、安保肯定派が再び多数となり、新ガイドライン法のような安保改悪にすら受動的な態度をとっています。しかし、こうした現状を固定的に考えるべきではないし、それによって右往左往するべきでもありません。今は、「君らはまだ安保廃棄なんて言っているのか」と嘲笑的に言っている人々が、やがては「君たちは正しかった」と言う日が来るものと、私は信じています。