「東チモール問題」の全体像が分かりません。延々とかれこれ数十年来抗争が続いているように思われますが、私の身近な情報収集によっては資料が乏しい限りです。インドネシアの対外貿易収支に日本が最主要国になっているというということが事実であれば日本はこの問題に関して深く関わらざるを得ない立場であり、したがって、党もまたこの問題について早急に解明する責務があると思われます。今のところ時事電程度の情報しか報道していないように思われますが私の勉強不足でしょうか。
「東チモール問題」とは何なのかという理解の次に寄せねばならない私の関心の第一点は、自治権の帰趨を選挙によって決することになった経過にあります。恐らく独立派と併合派との執拗な抗争が続いていたのでしょうし、その抗争を中止して選挙によって決着を付けようと合意されるまでにはそれぞれの内部での意見の対立があったのではないでしょうか。そうした内部的な意見の対立をどう調節したのかは対岸視されることではなく、わが国の左翼運動理論にも大いに関係してくるようにも思えます。選挙的決着の智恵を誰が持ち込んできたのか、運動の内部から生まれたのか外部から移入されたものなのかにも興味があります。持ち込まれたものであれば、彼らはどう責任をとろうとしているのかについて関心をもって見守る必要があります。同じように対岸視できない内容を持っていると考えています。
選挙の結果は圧倒的に独立派の勝利になりました。当然ながら両派は選挙結果に拘束されるというのが選挙をすることの意義であろうと思われますが、併合派はこの拘束を踏みにじり独立派に対して凶暴徒化しています。この併合派のバックにはインドネシア軍がおり、当然の事ながら軍の動きの背後には政府の意向があります。この政府と日本独占資本とは密接な関係にあります。ここまでは分かるのですが、ここから先が曖昧模糊です。どなたかの解析を待ちたいと思います。
国連軍の介入により、併合派の動きが牽制されることになると思われます。となると、国連軍は極めて現代史的な必要悪軍ということになるのでしょうか。「コソボ問題」の時もそうでしたが、NATO軍ないしはアメリカ軍の介入を非難することは容易ですが、もしその介入がなければ、住民間のジェノサイド抗争により敗北派は民族浄化される危険があったということも事実のように思えます。国家の内部問題だから内政干渉は良くないという原則はどこまで適正なのか、私にはよく分からない(公党間の内部不干渉理論についても同じですけど)。どうも旧来の公式では解けない諸問題が発生しつつあるというのが現状なのではないかと思えています。
ところで、東チモール独立派の住民が併合派に対して逆暴力攻勢を仕掛けた場合、国際世論はどうみなすのでしょうか。選挙の結果は独立を意志表示したわけですから、独立派は錦の御旗を持っているように思われます。でも、やはり暴力的な仕返しはよくないのでしょうか。実際には、東チモール独立派は国連軍に依存しようとしていますので、そうした可能性はないようですが。このあたりも私にはよく分からない。
近々併合派は、国連軍の進駐に対して、「民族解放戦線」的な動きをし始めるということのようです。こうなると、もはや言葉の字面だけ見ては何が何だか分からない気がして参ります。いったい左翼運動の原点とは何なのか、どういう運動が左翼運動なのか、その基準をどこに求めるのか等々について合意を再構築していかねばならない時期に至っているように思えますが、いかがでしょうか。
9月21日付『しんぶん赤旗』の第3面に、東チモール問題に関する詳しい解説が掲載されていました。内容的にはおおむね妥当であったと思います。しかし、ちょうど東南アジア訪問中の共産党代表団が、この問題を訪問先できちんと議論し、東チモール独立派への国際的支援を訴えているのかどうか疑問です。党として、積極的に東チモール人民への支援と連帯に取り組むべきではないかと私たちは考えます。(編集部)