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「現状分析と対抗戦略」討論欄

原さんの現実分析

2004/07/04 山田盛太郎 50代 研究者

 原仙作さんの6月27日付け投稿、大変興味深く読み、説得力のあるものと受け止 めました。しかし、ハードルがいくつかあります。
 ?共産党は民主党と自民党を本質的に同じものと規定しています。大胆な転換がで きるでしょうか。私も両政党の構造や体質には似通ったものがあるとは思いますが、 政治においては本質規定が重要なのではなく、状況の中で果たす役割です。自衛隊派 兵問題や憲法改正問題(改憲論者も民主党にいますから微妙ですが、もちろん改憲論 の中には聞くべきものもあることは確かです)で共同しうる余地は十分あると思いま す。しかし、共産党はこの「本質論議」がすきなのです。
 ①政党間の関係ですから、何らかの政策協定なしに一方的に票を集中させることは 不可能です。そのような協定は可能でしょうか②まず民主党内自身に強烈なアレルギー と反発があるでしょう。また、協定を結ぶことは与党連合に絶好の攻撃材料を与える でしょう。自民党加藤派とは共同しても、共産党が共産主義である限り難しいで しょう。双方をつなぐ善意の集団はいま存在しません。
 ③根本的にはソビエト崩壊、社会主義体制の消滅という世界史的事実を受け止め、 高度に発達した資本主義国における社会主義の方向を探ることに失敗したことが、極 小政党としての軌道をまっしぐらに進むことになっています。
 現代で可能なのは、社会民主主義への転換しかないはずです。実際、共産党が提示 している政策は、社会民主主義の枠内に十分入ります。しかし、政治組織と行動原理 は、レーニン・スターリン型の閉鎖的党組織なのです。このずれが調整され、党名変 更と指導部の交代も含めて脱皮できれば、今後の政治にも居場所はあるでしょう。  ④しかし、こうした政策が一方では「改良主義」として党内から批判される構造が あります。むしろそれが主流かもしれません。
 前回の選挙の際に、私は「大敗」を予言しましたが、今回も同様です。結論から言 えば、共産党は、日本の民主主義を守るために自己脱皮、自己改革するのではなく、 自分たちの主義主張を貫き、政治的に正しいのではなく、思想的な正しさを貫いて自 己満足するために、みずから滅びの道を歩むでしょう。なぜなら、彼らにとって最大 の関心は、みずからの思想的純潔性を守ることなのですから。
 政治とは結果責任でしかありえません。自分たちの理念を実現するために何をする かです。原さんの分析の結論が示すように、共産党は、自分たちの党派的利益(実は 彼らの心の中にしかない)を優先させ、政治の転換期に無力さをあらわにしています。 かつて、丸山真男氏は、15年戦争を止められなかった責任主体のひとつとして日本共 産党をあげ、その社会民主主義打撃論などのセクト主義を批判しましたが、共産党は 猛烈に反批判し、丸山氏の学説をその後もたびたび機関誌で批判しました。まじめに 聞く気があったら多少とも違っていたかもしれません。