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「現状分析と対抗戦略」討論欄

これがNKさんへの最初で最後の横レスです

2005/09/06 守籠紀恵 学生

 (もうすぐ後期カリキュラムが始まろうとする今日この頃ですが、)久しぶり のアクセスでアンテナに引っかかりそうな投稿があるだろうなあ、と期待をもってい たんですけど。。。

以下は

 >選挙前の「超」多忙な時期ではありますが

と吐露するNKさんには、選挙とその総括を終えてからゆっくり読まれることを薦めま す。

 これはNKさんへの「最初で最後の横レス」として書きます。

 あなたは、関税障壁ならぬ心理的参入障壁を設定したいようです。およそ「聞く耳 持たず」だと。
 拙劣なたとえですが、極貧と累積債務にあえぐ途上国を弄ぶ経済大国のとる態度に どこかしら似たような感じです。ワシントン・コンセンサスのようでもあります。目 から鼻に抜けるタイプ、或る種いやらしい「エリート臭」が漂ってきます。どうも討 論以前に厚い防壁が立ちはだかっている、そうとしか感じられないんですが。温かい 人間味が感じられません。率直に言いまして失望しました。強い不信感を抱きました。

 約2年前からのあなたの投稿に目を通したものの、一向に変化が見られないです。 過去に精神的に傷つけられたであろう方も居ると思いますし、反ハイデさんをも排除 しようとしている、私にはそう見えますけど。

 >もし「理性的な討論」をお望みに・・・・・・あなたが何をおっしゃっているの か意味が・・・・・・(申し訳ありません)、ご教示下さい

としつつ、

 >苦笑い

ですか。。。

 たぶん、反ハイデさんは、この冒頭部分を読んだ段階で嫌味を感じたであろうと思 います。あなたは、「なんだ、そんなことぐらい」と嘲笑うかもしれませんが、これ (「苦笑」のこと。)をやられて愉快になる人を私は寡聞にして知りません。まずもっ て「理性的討論」は対話者相互に最低限の尊敬心がなければ成り立ち得ませんから。

 さざ波には識見の高い、しかもディープな投稿者が多くて好感をもっていますが、 おそらくあなたはそういう投稿文を目にしても「正当に評価したい」という気は起き ないのかもしれません。あなたが自ら他の投稿に対して好意的レスをしたことなんて、 無いんじゃないでしょうか。インテリと目される人ほど、その傾向が顕著でしょうけ れど。まっ、レスするにしてもしないにしても「おれ様の勝手だ、放っとけ」と言わ れるでしょうけれど。さまざまな投稿に対する解釈のしかたは、同一のスタンスに立 つように見えても、人により評価の尺度、問題意識の微妙な違いはあるにしても。

 あなたは今回、一挙に6つもの「逆質問」という形で心理的参入障壁を反ハイデさ んに突き付けました。「さざ波という空間は私の私有物だ。私が統べているのだ。そ れゆえ、私を改心させたければ、私の逆質問に答えるのが先である。質問の自由は与 えるが私が答える義務はないのだ、わかったか!」前途洋々、順風満帆。
 あなたの応答ぶりから、そう言わんばかりの姿勢がうかがえます。傲岸不遜ではな いかとすら感じます。

 そのような尊大な姿勢の投稿は、私の知る限り前代未聞です。
 あなたの姿勢をみる限り、反ハイデさんのみならず誰しも不信感・嫌悪感を持つと 思います。討論以前の問題です。さざ波は、さしずめ、みんなの公共財だ、というこ とをお忘れなく。。。

 あなたの提示した「Q2-2補足」箇所は、着眼点としては討論の余地はあるかもしれ ません。でも、無意識にか暗黙裡にか、件(くだん)の自爆行為への或る種の「共感」 問題自体は、両翼の問題に矮小化すべきでなく、横断的またはインター・ディシプリ ナリーに再考すべき筋合いの問題ではないか、と個人的には考えますが。イラクの地 での無規範ないわゆる急性アノミー、それも異常をきわめる同地での筆舌に尽くしが たい惨状を曇り無き視点で視ることから始めたほうがいいでしょう。党派的スタンス で考えられるとは思えません。あなたの好みにはフィットしないかもしれませんけど。

 当該域内の各諸部族の胚胎する懸案とか、力関係、またはイデオロギー集団間の愛 憎とか、俗耳に入りやすいキーワードが巷間横溢していますが、それらが、アポリア 解決への有効な切り口になり得るかどうか、個人的に疑問です。 新生イラクの、或 るエリア支配権をめぐる実権闘争とか、宗教の存在に責任をすり替える、そんな有り がちな分析手法にも大きな疑念を感じるところです。実権掌握をしたい勢力が在るの は全くイラクに限らないし、イスラーム教(教義)自体を「悪」とする態度そのもの が馬鹿げた、というよりも犯罪的イデオロギーです。

 そもそもイラク及び近隣諸国を狙った列強諸国のヘゲモニーにしても、軍事的プレ ゼンスにしても、過去20~30年どころの話ではありません。1950年代には隣国イラン における傀儡政権づくりで超大国の残虐な介入が行われたそうですし、1910年代には 早くもイギリス軍がバスラ、バグダッドを武力制圧した史実があるのです。イラクに 関する国連安保理決議だって過去16~17年の間に幾度となく採択されてきたにもかか わらず、まともに履行(決議を実行)されてきたと言えるのか、真の人道的解決に結 びついたものが果たしてあるのか。

 私は、鎌仲ひとみさん等の関連映像を観たり、山本恵さん等の中東リポートを聴講 するたびに、目を見開かされ、複雑な心境になりました。彼の地に比較すればまだは るかに安全な日本で、両翼イデオロギーを前提に自爆巻き添えを語る一部の日本人を イラク民衆が見たとしたら、彼らはどんな面持ちで眺めるでしょうか。「あんた方は 派兵国の国民じゃないか、それなのに随分と暢気なもんだな」とイラク人に批判され たとしたら、彼らに返す言葉が見当たらないのではないでしょうか。「平和憲法第9 条がありながら武装兵力を寄越し、今後も撤兵意思がないとは何ごとだ? なぜ軍隊 が我々の生命財産を守れるのだ? ふざけないでくれ!」と糾弾されたら、私は彼ら に返す言葉がありません。

 前出の鎌仲さんや山本恵さんらはこういった素朴な問題意識にも説得力に満ちた現 地体験談を交えつつ、時には学術的に教えてくださいました。本当に多謝多謝でした。

 今なお弾圧下にあるクルド族が、なぜか視野外に置き去りにされている現状も、や はり、気掛かりです。中東問題に関する主だった学会の中にもこうした素朴な認識が 共有されているとは必ずしも言えない、と特別講義でレクチャーを受けました。クル ド族は、あまた有る世界の少数民族のなかで最も多くの人口を擁する、約7ヶ国に跨っ て生活する、独自の文化習俗を有する、辺境の貧しい人々です。

 彼らも列強介入のたびに理不尽な扱いで翻弄されてきた、不幸な歴史を背負ってい ます。今でこそイラクのサダム・フセインは極悪の象徴ですが、そのフセイン前政権 が対クルド虐殺に動いた当時、先進諸国はクルドの民衆を守ったでしょうか。1991年 の湾岸戦争末期、フセインによる弾圧に生命の危険を感じ、着の身着のままクウェー ト国境にたどり着いた民衆を、見て見ぬふりで見殺しにしたのは、どこの政府か、あ なたは知っていますか。湾岸戦争勃発時に、在クウェート日本大使は果たしてまっと うな職務を遂行していたと思いますか。

 また、イラク総人口の8~9パーセントも占めるキリスト教徒の動静に至っては、主 要メディアは揃いも揃って完黙したままです。「9.11」直後、ブッシュが口をすべら せた“本音”に、愚かにもシンクロしているためかもしれませんが、では、親米英的 ではない国のメディアまでが「似たり寄ったり」と言えるでしょうか。

 でもそうであったとしても、その前に反ハイデさんの批判したように、「不規則発 言」を反省する謙虚さが、やっぱり必要だと私も思います。あなたが心理的参入障壁 を撤回すれば、反ハイデさんだってレスをしたためる気になられるかもしれません。 まっ、本人のみぞ知る、でしょうけど。

 ちなみに私のかよう大学に外国人留学生が学んでいますが、彼らの潔い対人感覚や 秀でたバランス感覚から、私自身、多くの感化を受けました。彼らの基本的討論スキ ルもさることながら、激論になっても相手の人格を傷つけないエチケットは、大変好 感を持てるのです。言い換えると、来日前に日本の文化慣習を高度にレクチャーして いて、日本における侮蔑用語や差別事情にとても敏感なのです。

 たとえば、数年前、東日本入管センターなどで明るみに出た「オーバーステイ被収 容者に対する肉体的虐待」や、東電OL事件で控訴していたゴビンダ・プラサド・マイ ナリ被告人に対する虐待のことも知っていましたし、私達は驚嘆したものです。「ガ イジン」「ネグリート」「ニガー」などという語は、(使用する側が)いくら悪意で ないとしても、必ず彼らを傷つけるのです。東アジアの民の前でたとえば何気なく在 日コリアンや中国・韓国人らに「東シナ海では」「日本海ではねー」などといった感 覚でこの種の語句を口にしても、きっと民族感情を傷つけると思います。

 彼らが日本語を話してくれる有りがたさ(ホントに助かります)が、私たち日本学 生が受ける感化をいっそう助け、確かなものにしていると確信しています。やがて卒 業する彼ら彼女らを知的に受容できるか、逆に排除してしまうか。「日本社会の本当 の意味での健全な国際化」の帰趨を決することでしょう。
 参考までに、彼らの出身国は南アジア、中南米、欧州と多岐にわたります。その中 には、旧ソ連からかつて何らかの内政干渉を受け、健全な発展を妨げられてきた地域 も含みます。

 以上を以って、「NKさんへの最初で最後の横レス」を終わります。あしからず。