日経平均が14,900円をつけた。円の対ドルは119円台
後半だ。
この間、円安と株高とが連動する動きが顕著になっている。
小泉政権は最近の東証株価と不動産の上昇を持って、景気回復
=「小泉改革の成果」としているが、その実態は、砂上の楼閣
の様な危うさであり、むしろ現代資本主義の矛盾と危機を露呈
したものと言える。
【円安に導いている力について】
円売りのファンダメンタルな要素は、700兆円に上る財政
赤字、赤字国債の慢性化(償還期限60年。子々孫々に渡る巨
大なつけ)...。
すなわち国家破産したアルゼンチンを凌駕するわが国財政の
債務超過状態に対する「売り」が直接的な要因である。
しかし、この純経済的な要因もさることながら、今回の円安
が「米帝国主義の意向」と言う政治的な力で演出されているこ
とは見逃せない。米国FRBの利上げ政策=ドル高誘導政策=イ
ンフレ抑制策が
、今日の米国の経済政策である。米国が利上げによって、ドル
高に導いている背景には以下の2点がある;
? インフレ抑制
原油高に代表される素材インフレ、米国内の金余り現象によ
る不動産バブル...。消費者物価が4%以上上昇した米国では
、インフレが不気味な影を落としている。このインフレの不気
味さは、高い失業率との同時進行にあり、現代の妖怪と言われ
るスタグフレーションを想起させる。米国支配層は、利上げ
と、ドル高誘導で、この危機を回避しようとしている。
? 「金の成る木」=ドルの防衛
ニクソンショック以来、米帝国主義は、輪転機を回しドルさ
え印刷すれば富が転がり込んでくる経済システムを構築して来
た。主要産業の国内製造設備の老躯化、生産の海外移転により
、米国経済は空洞化している。慢性的に「双子の赤字」を抱え
ており、普通の国なら、とっくの昔に経済破綻だ。
それにも関わらず米国が、一見富と繁栄を謳歌している様に
見えるのは、”打ち出の小槌”であるドルを刷り続けることに
より、ドルと交換に世界中から富を持って来れるからに過ぎな
い。このドルを世界の基軸通貨たらしめる要因は、「強い米国
」、すなわち強大な軍事力が背景にあるのは言うまでの無い。
しかし、この間、ドルに代わる機軸通貨としてのユーロの挑
戦、マネーサプライ増大による相対的価値の低下により、ドル
安のスパイラルに陥っていた。これに危機感を持った米政府が
、ドル防衛策としての利上げ政策を取ったのである。
しかしながら、自動車産業に代表されある東部エスタブリ
ッシュメントは、ドル安にならなければ産業の存続さえ危ぶま
れる状態である。すなわち、国家体制維持の為のドル防衛政策
と支配層のドル安渇望と言う度し難い矛盾を抱えているのが今
日の米国経済なのだ。
所謂「愛国法」の施行、10月の日米蔵相会議に置いて「人 民元の切り上げ」問題に意図的に言及しなかった点、11月に なってブッシュの番犬たる小泉が日銀の「量的緩和政策見直し 」を牽制、等々、日本が米帝国主義に追随する形で、ドル高= 円安政策が進められて来た。この日本政府の売国性は、表面上 の輸出景気と株高で覆い隠されているが、米国の忌避したイン フレを肩代わりしたと言う点で、犯罪的ですらある。
大事な点は、この意図的円安(=ドル高)が、米帝国主義の 危機の深まりと矛盾によってもたらされていると言う点である 。
【日本株高の行方】
現在の日本の株高は、断末魔の現代資本主義の末期のあだ花
の様なものである。株高を支えている物は、?低金利、?円安の
2点である。
お分かりの用に、いずれも、高金利、ドル高政策を取る米国
を日本が補完した結果に過ぎない。この浮かれ景気も、アメリ
カ様のご意向次で如何様にもなる危ういものである。この点、
小泉が言う様な、「改革の成果」などでは無いのは日を見るよ
り明らかだ。それ以上に、財政赤字をそのままに放置し、世界
的な素材インフレの中での米国への「インフレ肩代わり政策」
を取っていることは、ハイパーインフレ、貧富差の一層の拡大
と言う社会不安さえ起こしかねない。
以上見た様に、明らかに現代資本主義は断末魔に喘いでいる
。
資本主義の世界的崩壊は思ったより早い時期にやって来るの
では無いかと考える。
しかし、問題は、ポスト資本主義が必ずしも社会主義や共産
主義ではなさそうな点である。この古典的概念の呪縛から日本
共産党が解放され、もっと広い視野から来るべき新時代を切り
開く勢力の一翼を担って頂くことを祈念してやまない。