日本共産党資料館

アムステルダムの反戦世界大会と日本の労働者

(一九三二年九月「片山潜は叫ぶ」〈一九三五年〉所収)

 資本主義的安定が終結し世界経済恐慌が尖鋭化しつつある情勢において、新しい帝国主義戦争と、とくにソヴェト同盟にたいする武力干渉とは、今日における緊急な問題となりつつある。その危険な情勢のもとに、世界反戦大会がアムステルダムでひらかれた。すべての困難と妨害とにかかわらず、ブルジョア新聞がわからの、また部分的には社会ファシストがわからの完全なサボタージュと嘲弄とにもかかわらず、国際反戦大会は、資本主義的ならびに植民地諸国の勤労者がわからの完全な支持をうけた。この国際大会には三千以上の代表がえらばれ、イギリス、フランスおよび他の資本主義諸国においては、反戦デモが組織され、いたるところで帝国主義戦争反対の気運を見ることができたのである。
 アムステルダム大会の意義は、なんであるか?
 アムステルダム大会は、反戦運動の強固な土台を創設して、ひじょうに重要な組織的な仕事を遂行した。大会は、極東と西欧の労働者およびインテリゲンチアのあいだの革命的要素を戦闘的戦線に結合し、また実際に戦争に反対するすべての人々を動員した。
 アムステルダム世界大会は、新しい帝国主義戦争の増大する危険をそのいっさいの戦慄すべき現実の姿で明るみにさらけだした。世界大会は、戦争のすべての準備と公然あるいは秘密裡の資本主義的国家の同盟とを一歩一歩ばくろした。世界大会は、平和についてのおしゃべり、軍縮会議ならびに平和についての欺瞞的な宣伝によって、あたかも煙幕によるごとく、労働者の目からかくされている資本主義的かけひきをばくろした。
 世界大会は日本の勤労者にとって特別の意義をもっている。なんとなれば、世界大会は日本帝国主義者の中国における残酷な略奪戦争の真実の意義を明るみにさらけだしたからである。
 いまから二八年前の日露戦争のとき、革命的な日本の労働者がロシアの労働階級との連帯性を示したこのアムステルダムにおいて、反戦世界大会は、全世界の面前に、荒木貞夫と彼の徒党である帝国主義的悪党の流血的計画をばくろしたのである。大会は、完全に日本の参謀本部に依存しているところの「独立」国家満州国建設が、新しい戦争とアジアにおける略奪への第一歩であることを強調した。満州は、日本帝国主義者の計画のなかで、アジアにおける足場としての役割と、ソヴェト同盟にたいする攻撃のための根拠地としての役割とを演じているのだ。日本帝国主義者は(満州・蒙古)中国において「皇道」を普及する云々とやかましくわめきたてた。将軍荒木は「皇道」を全世界に普及するとさえ語った! 実際において、この「皇道の普及」は、中国とアジアの数億万の勤労者を隷属化する以外のなにものをも意味せず、三井、三菱および他の一にぎりの資本家どもにとって利潤の増大と、日本の勤労者にとってさらに大きな窮乏とを意味するのである。
 戦争は資本家にとってもうけの多いものだ。そして日本の資本家どもは、日本の人民を新戦争の冒険のなかにひきこもうとこころみているのだ。万国の勤労者、まず第一に日本の勤労者にたいするとの警告が、まさにアムステルダム世界大会で鳴りひびいたのである。
 皇軍は中国の内地にむかって前進している。蒋介石はこれにたいして対抗しようともこころみない。そのかわりに、彼?介石は自分の優秀なる部隊を中国ソヴェトとの闘争におくっている。しかしながら、蒋介石のすべての武力的討伐も、中国民衆の自由と、中国の独立と統一とのために闘争している若い中国ソヴェト共和国を粉砕することはできなかった。国民党の裏切者どもは、近い将来に日本帝国主義のまえに完全に降服し、日本軍といっしょにか、あるいはすくなくとも日本および他の帝国主義者の援助のもとに、中国ソヴェトにたいする新しい進軍を開始する可能性がないとはいえない。日本の労働者は警戒しなければならぬ。ソヴェト中国の労働者と農民の闘争およびソヴェト中国の戦勝的赤軍の闘争は、日本勤労者の闘争ではないであろうか? この闘争は共同の敵、搾取者、すべてこれらの荒木や蒋介石等にたいしてむけられているのではないか?
 世界大会は、ソヴェト同盟にたいする戦争準備についての日本帝国主義の計画を細目にわたってすべてばくろした。世界大会は、日本と満州の民衆に課せられた金で支払われる想像もつかぬほどの巨額の費用を要する満州における強行的な戦争準備、戦略的鉄道ならびに道路の建設、満州および朝鮮への軍隊の集中、ソヴェト同盟への攻撃の準備の大規模なことをしめす多くの他の事実に、すべての戦争反対者の注意をむけた。すべてこれらのことが一つの目的、すなわち勤労者の祖国にたいする戦争準備の目的をもっていることは、いまやすべての者にとってあきらかである。日本の支配階級の代表者どもは、田中の有名な上奏文の存在を否定している。だが、彼ら自身が、死んだ田中大将が作成した計画を実現しているではないか?
 世界大会では、日本が外国で莫大な量の軍用材料を買い込んでいること、および全ヨーロッパ諸国における軍事工場ならびに兵器工廠が日本の注文をひきうけてやっていることが指摘された。これらすべての軍需品は、いったいなんのために必要であるか、またこれらの軍事的注文のために日本の民衆からとりたてた数百万円は、なんのために支払われているのか? 日本の帝国主義者は、なんのために、東京、名古屋、大阪ならびに全国にわたって新しい軍事工場を狂気的に建設しているのか? 「満州のパルチザン」に反対する戦争のためであるか! 断じてそんなことはない! すべてそれらは、ソヴェト同盟にたいする戦争のためなのだ! 日本の民衆は、新しい血みどろの戦争にひきこまれている。そうだ、このことを日本のすべての労働者と農民およびインテリゲンチアは考えなければならぬのだ!
 日本の革命的労働者・農民は、今年模範的な大衆的な反戦活動の展開によって、戦争反対闘争の自己の意志をしめした。共産党の指導のもとにおこなわれた八月一日のデモンストレーション、とくに東京および横浜におけるデモンストレーションは、戦争反対の大衆的な意志表示であった。このデモンストレーションおよびまた、工場ならびに多くの農村において成功的におこなわれた行動が全国にわたって戦争の発頭人の陣営に移行しつつある社会ファシストのサボタージュにもかかわらずおこなわれたという事実は、これらのデモンストレーションと進出とをとくに重要なものとなすものである。
 しかし現在、かような重大な情勢のもとにあっては、もっと多くをなしとげることがぜひとも必要である。アムステルダム世界大会は、その宣言において、被搾取者ならびに奴隷化された大衆に、戦争にたいする闘争の統一戦線に結合せよと呼びかけている。日本においては、このことは労働者・農民・インテリゲンチアの最初の任務である。アムステルダム世界大会は、「自国の帝国主義的政府に反対する闘争の旗をかかげた日本の労働者を精力的に支持する」ためにたたかうことをおごそかにちかった。日本の勤労大衆は日本共産党の指導のもとに、世界反戦運動のこの支持をもって、戦争反対、ソヴェト同盟および中国におけるソヴェト革命擁護のための英雄的闘争をさらにさらにつよめなければならぬ。
 日本の労働運動のうえには、歴史的任務が課されている。アムステルダム世界大会は、全世界の勤労者がいかに大きな関心と同情とをもって日本における彼らの兄弟・姉妹の英雄的闘争を見まもっているかをしめした。日本の勤労者は、その行動によって、彼らがソヴェト国家への攻撃をなにびとにもゆるさないということを荒木に見せつけてやらねばならぬ。かくのごとく行動することによって、彼らはアムステルダム世界大会の精神を実践に実現するであろう。
 同志よ! 闘争へ! 日本帝国主義反対、ソヴェト日本のために!
  一九三二年九月二十二日