日本共産党資料館

日本共産党の新綱領の基礎

『恒久平和と人民民主主義のために』1952年2月15日

 一、日本共産党の新綱領は全国民の利益をあらわしている

 日本共産党の新綱領が発表されてから約四ヵ月たった。
 労働者ならびに農民の圧倒的大多数は一致してわれわれの新綱領を支持している。かれらは「今こそわれははじめて身をなげだしてたたかえる明確な目標を受けとった」といっている。 右翼社会党員ならびにトロツキスト分子の影響下にあるごく一部の人をのぞく、大多数の知識労働者も、同じようにこの綱領を熱烈に支持している。
 朝鮮における戦争の拡大にともなって、労働者階級や農民だけでなく知識労働者もますます奴隷的搾取をこうむっている。労働者のストライキや農民の闘争は狂暴な力によって弾圧されている。サンフランシスコ会議後、これらの弾圧は一そう狂暴なものとなった。最近、石炭、電気産業、国鉄、私鉄の労働者および勤務員の大きなストライキ、郵便、電信従業員および国家・地方公務員のストライキがおこった。これらのストライキは占領軍と吉田政府のはげしい弾圧の諸条件にもかかわらず、多くの場合、罷業者がわの勝利におわっていることが現在のストライキの特徴的性格である。
 今までは資本家たちの思うがままにあつかわれてきた、婦人が大部分を占める紡績工業の労働者や百貨店の従業員、ホテルの従業員でさえも、頑強な闘争をおこなっている。知識労働者やインテリゲンチャも労働者と共に闘争に立ちあがっている。この闘争はすべての場合、単独「講和」条約反対の闘争ときんみつに結合されている。
 このようにしてストライキ運動は量的に拡大されているだけでなく、同時に政治的にも成長しているのである。
 農民は米の生産と消費の統制をてっぱいするという自由党の二枚舌の約束を信ずることなく、農作物の強制供出てっぱいのための決定的な闘争をおこなっている。これと同時に革命的な土地改革実施についての諸要求が不断に強まっている。
 一九五〇年の中頃から、「朝鮮から手をひけ!」「単独『講和』条約、日米『安全保障条約』反対」および「駐兵・再軍備反対」のスローガンのもとでの平和擁護闘争は、民族の生活におけるもっとも重要な問題となった。
 弾圧にもかかわらずこの平和擁護闘争に、婦人、青年、インテリゲンチャ、宗教活動家たちも積極的に参加している。その結果、五大国平和条約締結の署名運動に六〇〇万票があつめられた。
 インテリゲンチャの代表の圧倒的大多数は、アメリカによっておしつけられた両条約に断固反対し平和運動に参加している。かれらは労働者と農民の闘争を支持し、かつそのことによって重要な役割を果たしている。たとえばローマにおける医師および保健専門家の国際会議にかんして、日本の医師および保健部門における長老と専門家たちは、この国際会議召集のための準備委員会の活動に参加することを決定した。
 中小企業家、民族資本家の中にも同様に、わが党の綱領を支持する用意があることを表明している人々が多くあらわれた。民族資本家の主要な部分を構成する中小企業家たちは、平和産業部門の崩かいと軍事産業の拡大に反対している。かれらは無条件にいわゆる「自由世界の擁護」という口実の下になされているアメリカの干渉に反対しており、ソ同盟と新中国、全アジア諸国との友好的関係確立のために、益々積極的になっている。
 このふんいきは大資本家の若干の団体に対してさえも影響をあたえており、かれらにとってもソビエト社会主義共和国同盟と中華人民共和国との貿易問題は、現在では非常に重要な意義をもってきた。この結果としてこれらの団体の代表者たちも、モスクワで開かれる国際経済会議へ参加するという希望を表明している。
 こういう情勢は民族解放民主統一戦線の拡大を助長しており、また必然的にあらゆる政党内に大きな影響を与えている。
 とくに社会党の分裂はこのことのよいあらわれである。
 社会党の分裂を不可避的ならしめた原因はいろいろある。だがその主要な原因は、アメリカ合衆国によって日本におしつけられた単独「講和」条約と「安全保障条約」の批准について、この党の一般党員およびその影響下にある労働者、農民が、ひとしく社会党の行動に対して大きな不満を表明しはじめたということにある。わが党の綱領の影響のもとに、このふんいきは益々つよまっている。
 労働組合総評議会――日本における巨大な労働組合連合――の左派幹部は、社会党を反労働者的政党に転化させまいと努力し、同党に対して鋭い批判をあたえた。いわゆる社会党の左派の先頭にある同党書記長鈴木茂三郎が、右派幹部との妥協を達成しようと、しつように企図したにもかかわらず、社会党は終局的には分裂してしまった。労働者たちは社会党員に対してかれらが単独「講和」条約と「安全保障条約」を拒否することを要求しており、もしかれらがこの要求を遂行しないならば、かれらに対する信頼を断固としてとりけすことを決めている。
 社会党右派は腐敗、堕落した政治家のあつまりである。かれらは以前には、社会党中央執行委員会内において、勝利を獲得していた。しかしながら実際的に単独「講和」条約と「安全保障条約」を支持し、明らかに親米的態度をとったことによって、かれらは全く労働組合および農民組合内の大衆の支持を失った。現在ではこれら組織の幹部である右翼分子の少数のみが、かれらを支持しているだけである。このようにして、社会党右派とその幹部は、不法にも釈放された戦犯の手中にあって、完全に反民族的資本家の番頭となっている。
 アメリカ合衆国において準備された単独「講和」条約および「安全保障条約」批准問題にたいする意見の不一致から、民主党内にも民族資本家たちの代表を先頭とする進歩的な反対グループがあらわれた。民主党の若干の国会議員たちは、単独「講和」条約と「安全保障条約」批准に反対投票をした。このためにこれらの議員は同党から離党しなければならなかった。その後、民主党内の動揺は一層はげしくなった。
 遂にもっとも反動的「自由」党内においてさえも、反米的、反吉田的気分を表示している人々の影響は著しくなってきた。この気運は一九五一年の春の地方自治体選挙後、すでに相当つよくあらわれだした。自由党からの離党を決意した人々が多くあらわれた。吉田政策に対して、とく久原房之介(大独占資本家でかつて田中内閣のときの逓信大臣)や石橋湛山(吉田内閣の前大蔵大臣)といった有名な実業家が、公然と不満をあらわしはじめた。
 最近、吉田の出身地であり自由党の金城湯池の地盤である高知県の県知事選挙では、反米、反吉田の諸団体によって選出された候補者が当選した。
 このようにして「両条約」批准後は、反米的・反吉田的気分が国民のあいだに益々強まっている。
 日本国内でのアメリカ軍隊駐留の諸条件にかんするいわゆる行政協定の締結と、日本再軍備を促進するために、アメリカ合衆国副大統領バークレー、国務長官顧問ダレス、国務次官補ラスク、経済顧問ドッジが日本にやって来たが、吉田をはじめとする反民族的、親米的分子の孤立が非常に深まってきたため、なんら一定の成果を得ることなく帰らねばならなかった。国民の抗議は吉田一味が公然と再軍備にとりかかることを許さず、それを実行するのに警察力の強化という口実でぎまんしなければならなくさせている。
 われわれの新綱領は実際に全国民の綱領となりつつある。
 右翼社会民主主義者たちは綱領を非難し、大衆に対する綱領の影響を弱めようと企図して狂暴にわれわれの綱領にいどみかかっている。右翼社会民主主義者と労働者階級に敵対するその他の諸団体の裏切り行為とは、かれらの活動によってアメリカ占領軍と吉田政府のわが党に対するはげしい弾圧を援助しているということにある。簡単にいえばかれらはわが党に対する中傷によって、その反民族的反革命的行動を隠ぺいし、大衆をぎまんしようとしているのである。
 われわれはかれらの中傷をばくろし、すべての力を全国民の政治的意識の向上、革命的勢力の一層の強化、民族解放民主統一戦線の強化にむけなければならない。

 二、なぜわれわれは革命の性質を民族解放民主革命と規定したか

 新綱領に示されているように、アメリカの占領は日本国民に苦しみをあたえており、吉田政府が占領制度の精神的政治的支柱であるというこの事実は、現在日本民族にとって真剣な問題である。これらの問題は極めて明確に新綱領の中に示されている。特にこのゆえにこそ、新綱領は労働者と農民を先頭とする国民の大多数に支持されている。それでなくても苦しいわが民族の状態はサンフランシスコにおける単独「講和」条約と「完全保障条約」の締結によって、またソビエト同盟、新中国およびアジア諸国に対する侵略を企図するアメリカ合衆国の公然たる日本の軍事基地化によって益々悪化した。アメリカ帝国主義者たちは、あたかも彼らが「平等」と「主権尊重」を基礎として、「平和の利益」のために行動しているかのようにくりかえしのべている。しかしながら実際のかれらの行動は似ても似つかぬものである。
 さきにのべたように、「安全保障条約」実施の諸条件についての、いわゆる行政協定の内容は今まで発表されなかったが、実質的にはすでに実行されている。これについてはつぎの事実が物語っている。
 アメリカ空軍基地は東京近郊における大基地――立川――をはじめとして国内三二カ所につくられている。しかもこれらの基地は一つの地域に、三乃至六の主要な基地からなる基地群として建設され、これと接近するすべての区域は、完全に軍事基地として利用されている。基地の範囲はたとえば立川はその中心であり、西南は横浜・横須賀、東南は木更津、北西は横田までといったぐあいである。もとの東京市をのぞいて、ほとんど東京都の全地域がこの基地のために利用されている。横浜から立川を経て横田まで油送管が施設されている。横須賀・横田間には倉庫、埠頭、住宅、修理組立軍事工場等が建設され、幅広い大道路が、これらの基地の設備資材を運搬するためにつくられている。このように軍事基地のためには国土の広範な地域が利用されている。
 更に海軍基地のためには、国内一四カ所の旧海軍基地、第一に横須賀、呉、佐世保がとりあげられ、神戸、横浜その他のような重要な港や便利な港湾が取りあげられた。すべてこれらの基地の数は日本の旧海軍基地の数に比して三倍も大である。陸戦隊用の基地に関しては、アメリカ人たちが独自に国内各所に基地を建設している。また軍事演習はアメリカ人たちがのぞむ所、いたる所で実施されている。アメリカ陸軍のこれらの演習や朝鮮における戦争のために、住民たちはつぐないをうけることのない重い損害をこうむっている。
 アメリカ占領軍は実質上自己の目的のために、国鉄、郵便、電信電話の国家施設を独占的に七〇~八〇%も利用しており、電気、冶金、石油、石炭、化学その他の工業のような産業の重要部門も同様である。アメリカ軍は重要な大道路、ホテル等々も自由に利用している。  これらの大軍事基地の維持と実際的利用の目的のために、アメリカ軍は日本経済の管理を次第に強めている。最近ではこの管理は独占企業ならびに財政におよんでおり、完全にアメリカ人たちに従属する状態におかれている。
 アメリカ占領軍の諸請負をまかされている大資本家たちでさえも、彼らが納品した商品にたいする価格切下げのため損害をうけている。民族の利益に反する行動をとっている独占資本家たちの小さなグループのみが、占領軍の注文を遂行することによって巨大な利潤を得ている。しかしこのことから生まれた事態の苦しみの多くは、まず誰にもまして労働者階級の肩にかぶさっている。生産における不幸な出来事は著しく増大し、労働者たちの健康は害されている。最近では結核患者の数が増大しており、現在では全労働者の約三〇%が結核におかされている。
 一方、軍事基地のために占有されている広大な区域では農地の収奪がおこなわれ、農作が制限されており、農民の貧困化は益々強められている。
 このように大規模に、全民族の破滅が生じている。
 アメリカ占領者どもは自己の軍事目的達成のためには、日本に一定の経済政策の方針をおしつけているだけでなく、言論、集会、結社の自由を束ばくし、教育にたいする管理をもうけ、国民の抵抗にたいしてはまさにファシスト的方法による弾圧にでている。
 「講和」条約に署名したにもかかわらず、アメリカの占領制度は緩和されないばかりか、反対に一層苛酷なものとなった。このことは、来年度予算を完全に再編成させたドッジの一つの命令を見るだけでも十分明らかなことであろう。吉田政府はほとんど全戦犯を釈放した。政府は団体等規正法とストライキ禁止法という新法を実施せんとくわだてている。天皇にたいする神がかり的崇拝の念を復活している。警察予備隊、海上保安隊を大軍隊にするために莫大な予算を要求し、それらは完全にアメリカによって装備されととのえられている。かれらの訓練と指揮は、アメリカ人将校たちがとっている。このように吉田政府は益々ろこつに自己のファシスト的特徴をあらわしつつアメリカ合衆国のために忠実に奉仕しているのである。
 自己の支配をアメリカの援助によってのみ保っている日本の反民族的反動勢力は、自己の個人的利益を保証するために、極めて反民族的な政策を実行している。これらの反民族的行動が、不可避的に民族を奴隷的状態におとしこむということはギリシャ、西ドイツ、ラテンアメリカ諸国、なおイギリス、フランスその他の西欧諸国の例でもはっきりと見ることができる。  日米「安全保障条約」はそのような状態のはっきりした表われであり、条約の第一条には「一または二以上の外国による教唆、または干渉によって引き起こされた日本国における大規模の内乱および騒擾を鎮圧するため、日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助」についてのベている。
 このような「援助」の表示は、つねにアメリカ軍の日本の内政に対する直接的干渉の口実となるであろう。これらの事実はアメリカが語っている「自由世界」、アメリカによって作成された「講和」条約が実際には何であるかを明確に示している。これは実は残こくにして破かい的な戦争への道なのである。とくにこの点にこそ、自己の利潤のためには全世界を犠牲にしようとするアメリカ独占資本家の本質がある。
 現在ではもはや日本が完全にアメリカの従属国になったというこの事実は、全く争いがたいことである。
 植民地・従属国諸国における革命運動の問題を取り扱う場合、共産党の出発点はどこにあるのか? 同志スターリンは、一九二七年八月一日のソ同盟共産党中央委員会と中央統制委員会との合同総会での報告の中で、この問題に対する回答をあたえ、つぎのようにのべている。
 「それは帝国主義国における、すなわち他民族を抑圧している国における革命と、植民地・従属国における、すなわち他国の帝国主義的圧迫をうけている国における革命との間の厳密な区別にある。帝国主義における革命は、これはこれで一つの問題である。そこではブルジョアジーは他民族にたいする抑圧者であり、そこではブルジョアジーは革命のあらゆる段階において反革命的であり、そこでは解放闘争の要素のごとき民族的要素が欠けている。植民地・従属国における革命は、これは別の問題である。そこでは他国の帝国主義の抑圧は革命の要因の一つであり、そこではこの抑圧は民族ブルジョアジーをも怒らせずにはおかないし、そこでは民族ブルジョアジーは一定の段階と一定の期間には、帝国主義に反対する自国の革命運動を支持することが出来るし、そこでは解放のための闘争の要素のごとき民族的要素は革命の要因である。
 この区別をせず、この差異を理解せずに帝国主義国における革命と植民地諸国における革命とを同一視することは――これはマルクス主義の道から、レーニン主義の道から逸脱することであり、第二インターナショナルの擁護者の道に立つことである」
 これらの命題はわが党の新綱領の理論的基礎である。
 わが党は日本における当面の革命を民族解放民主革命と規定した。わが党は革命の性質に適応して吉田「自由」党反動政府の打倒と、国のすべての進歩的な解放的勢力の利益を代表するであろう連立政府の樹立を目的として定めた。このことから革命的勢力を最大限に拡大する――広範な民族解放民主統一戦線を結成する必然性と可能性が生まれてきているのである。
 われわれはアメリカ帝国主義者たちによる日本占領の結果生じた今の対外および対内政策の事態の内に、多数の資本家たちが自己の自主的な経済、政治、文化生活を営む自由で従属されない日本のための闘争を支持するであろうし、他の資本家たちはこの闘争において友誼的中立を守るであろうという可能性があると考えている。
 現在初めて、われわれは今まで明確な理解をもっていなかったこの基本的問題を解明することができた。このことはわが大きな確信をもってわが新綱領を発表する可能性をあたえたのである。

 三、なぜ綱領は農業問題と農村における封建的諸関係の一掃に重要な意義をあたえているか

 新綱領は民族解放民主革命を目的としている。この革命は日本社会における封建的な残りかすを取りのぞくことを目的としている。今日の日本における民主革命は、民族の解放と密接に結びついてゆくならば、大きな規模で発展するだろうことはうたがいもない。新綱領にはつぎのようにのべられている。「吉田政府という場合、われわれは反動的『自由』党と吉田政府を支持、激励する日本の反民族的反動的勢力を意味するのである。この勢力は天皇、旧反動軍閥、特権官僚、寄生地主、独占資本家、つまり日本国民を搾取し、あるいはこの搾取を激励するいっさいのものである」。これらの反動勢力は、没収にあたいする土地の所有者か、あるいはその利益が土地所有者たちの利益とむすびつくものたちである。すべてこれらの勢力を打倒し、アメリカ占領制度の支柱を排除することは、「占領制度から日本を解放する途上における第一の決定的なあゆみとなるであろう」と綱領は強調している。
 右翼社会民主主義者と「左翼」冒険主義者たちはわが党の農民政策を攻撃し、われわれが農民の状態について全く知らないといっている。かれらは、アメリカ占領軍の下に戦後もたらされた「農地改革」により、土地はすでに農民の間に分配された、そして今問題なのはただ現在の社会的諸条件における農業は利益がなく、そして農業への資本の投資が非常に不十分であることだと主張している。またかれらは山林を政府の管理下におくことは正しいとしている。だから今日においてはもう土地改革をする必要はなくなっている、といっている。しかしながら実際には貧・中農の肩の上に加えられた過重な財政的負担は、第一にはこのいつわりの農地改革の結果なのである。農民はどうしても土地を失わねばならないような状態におかれている。現在地主は事実上、土地所有の半封建的体制を復活しつつある。アメリカ帝国主義者と反民族的反動勢力は、封建的な残りかすを利用して、農民を自己の奴隷に、農村を肉弾をかりあつめるための主要な地盤にしようとしている。だから右翼社会民主主義者たちの見解は、地主たちの利益を代表し、本質的には現在の政府の見解と少しも異なるところがない。
 われわれが土地改革によって実現しようと思っている目的は、国民生活の中にあるいろいろな封建的な残りかすを一掃しその基礎のうえに農業を発展させ、農民の生活水準を向上させることである。したがって耕作地の問題についてだけではなく、山林地帯、荒地および灌漑その他の農業施設、農産物の強制供出、税金のこと等についてもいっているのである。
 ソ同盟、東ヨーロッパ諸国および新中国は、封建的な残りかすを一掃した結果、新しい農村の農民たちが、おどろくほどの創造力を発揮して農業生産をどんなにすばらしく発展させているか、ということの生き生きとした例である。地主の土地を全部無料で農民にあたえるような革命的土地改革の基礎の上に立ってのみ、このことを達成することができる。
 農業にとって欠くことのできない山林地帯は、農民たちの間に分配することが必要である。耕作することのできるこれらの地帯は畑にかえられねばならない。草刈り場や牧場にすることができる地域では、適当な土地改良の仕事が必要である。植林は農民自身の手で、また新しい灌漑施設の改良と建設は、農民組織の協同の力でなされねばならない。
 農業生産の大発展と、その基礎の上に立つ農民の生活水準の向上は、政府が農民の努力を支持しかれらにあらゆる援助をあたえるならば、かち得られるであろう。
 このような革命的土地改革がなかったならば、農民の状態の根本的改善は不可能である。こうしなければ、農業生産の不断の発展は不可能であり、同時に労働者階級の生活の改善と全国民の生活の根本的変革は不可能である。が、しかし日本の反動勢力の打倒、国家構造の変革、即ち天皇制の廃止と民主共和国の樹立なしにはこのことは不可能である。
 まさにこの見地からわが綱領は、農業問題とそして農村における封建的諸関係の一掃に、重要な意味をあたえているのである。だからこそわれわれは農民の実際の要求を正しく決定し、それを実現しなければならない。
 わが党の綱領は労働者の要求もまたはっきりと規定している。綱領は労働の半封建的搾取のてっぱい、労働者階級の組合組織の自由、労働者の物質的状態の真の改善を要求している。
 わが党の綱領はこれらの任務の実現、日本における革命的民主的変革の実現、民族解放民主革命の実現、これは広範な民族解放民主統一戦線の力によってのみ可能であることをはっきりと示している。労働者と農民の同盟――日本国民の解放闘争の主要な力――がこの戦線の基盤である。
 そして手工業者、小商人、中小企業者、および占領制度と、吉田政府の反動的法律によって苦しめられている企業家と大商人の大部分もまた、これに参加するであろう。山川のような日和見主義者たちは、労働者階級の力だけによる革命をとなえて、農民の利益を、地主と富農の利益にすりかえており、民族資本家を無視している。このような政策は、事実上国民を分裂させ、労働者階級を孤立させ、帝国主義者と反民族的反動勢力の利益に奉仕し、革命をちっ息させようとしていることが明らかである。

 四、平和と民主主義の旗のもとに

 わが国の独立と自由と平和のためのたたかいは、最近まで勢いよく発展させられていたとはいえなかった。わが国民の若干の部分の中には、何らかの形でアメリカ人にたいして奴隷的な態度を取っている人々があった。かれらは世界支配の達成のためにむけられていたアメリカ帝国主義の政策を、反抗することができないような力だと思っていた。しかしながらアメリカ帝国主義の力は、実際には張り子の虎なのである。一九五〇年一〇月、中国人民義勇軍が朝鮮を援助にやってきたとき、共産党を先頭とする全民主的組織が、アメリカ帝国主義は張り子の虎だと宣言して、大たんにかれらとのたたかいにおもむいた時、大部分の人はこのたたかいの成功を信じなかった。しかしながら朝鮮でのたたかいのその後の推移は、アメリカ帝国主義の弱さを全くはっきりと示した。
 東南アジアの人民たちとくにベトナムの人民は、ロシアにおける大十月社会主義革命と、中国における人民革命の手本に従って、帝国主義の侵略に反対し、自分たちの独立のためのたたかいに立上った。この民族解放運動は、もはやいかなる帝国主義によっても滅ぼされることのない成功をおさめた。その影響は中近東、そして北アフリカの人民にも拡がった。これらの諸国における解放闘争は、これまでに見られなかったような力に変わった。ソ同盟を先頭とする平和陣営に対するアメリカ帝国主義の侵略政策は、資本主義のヨーロッパにおいてさえ、あきらかに敗北している。いわゆるアメリカ帝国主義者の「援助」というものは、この援助を受ける国への経済上の支配、その国の内政への干渉、すべてのこれらの国々の従属化、そして平和陣営侵略のための「欧州軍」の創設を意味するのである。現在、これらの諸国では財政体制と経済は破かいされ、日々貧困は増大している。この結果、アメリカ帝国主義者の傭兵への参加を拒否する傾向があらわれている。したがってかれらの巨大軍事基地創設の計画もまた明らかに崩かいにひんしている。
 大十月社会主義革命によってソ同盟ができてからの歴史の全過程は、平和の旗手であり、働くものの指導者であり、教師であるイ・ヴェ・スターリンによってもたらされたソ同盟の平和愛好政策を証明している。まさにこれこそ現在の全世界の平和陣営をつくりだす基礎となったのである。反対にアメリカ帝国主義者は、われわれがみずからの眼でみているように、つねに戦争をたくらんでいる。アメリカの国内でさえ、一般の人々は世界を支配しようとしてあらそっている独占資本家たちとその手先ども、これらの政治狂たちが、強盗の一味以外の何ものでもないということを知りつつある。
 そのために強盗の一味にしたがわない人々が、連邦調査局の監視下に、ファシズムへの「忠誠」を示さないならば、国家機関につとめることができないというような状態がつくり出された。現在、アメリカの労働者たちは資本家の禁止令にもかかわらず、益々はげしくストライキをおこない、兵士は戦意を失い、一般市民は一層はっきりと政府の政策に不満を示している。
 国際情勢は世界の平和陣営が、われわれの民族解放民主戦線の力強い同盟国であるということを、はっきりと示している。占領軍の側からの威かくにおびえること、皆がいまでも持っている「自由世界」という幻想および中立的立場を守ろうとする試みは、現在のわれわれにとって、もっとも有害なものとなっている。アメリカ帝国主義に依存しようとするあらゆる試みは、日本にとって破滅的なものである。ヒトラー、東条、ムッソリーニの過去の経験が、このことを物語っている。
 人民中国における情勢は、新しい条件のもとでは資本家でさえも民族解放運動に参加することができることを示している。したがってわが国の資本家も、その古い考え方をかえなければならない。
 もしわれわれが、アメリカ占領軍と反民族的吉田政府に対する抵抗精神を弱めるならばかれらの圧迫は、一層はげしさを加えるだろうことはうたがいもない。理在、かれらはすでにポツダムおよびカイロ宣言、ヤルタ協定および占領政策を決める極東委員会の決定をまったくふみにじっている。かれらは復活された日本の軍事力を、朝鮮における国連軍の作戦に参加させるために種々の工作をおこなっており、これが人命を奪い資産を破かいさせるということに注意を向けていない。かれらは飛行機の故障や、偶然の爆弾の爆発によってもたらされた損害に対して、賠償することを拒否している。日々のその他の損害についてはいうまでもない。われわれは断固として占領制度の支柱である吉田反動政策をたおすために、日本の反動勢力に対する国民の革命的闘争を組織し、アメリカ帝国主義者たちの、これらの不法な行為に反対しなければならない。もしわれわれが、このような決定的闘争を行えば、アメリカ帝国主義者は出ていかねばならないだろうし、われわれは勝利をうるだろう。
 われわれの綱領から明らかなように、独立した民主的な平和愛好の日本のための闘争が、その基礎なのである。この闘争が、労働者階級、農民および全国民の毎日の政治的、経済的要求を守るたたかいとむすびつけられなかったならば、決して成功しないであろう。この闘争は日本の人口の大部分をしめる労働者と農民の緊密な同盟の基礎の上に発展するときにのみ、成功するだろう。
 この同盟の基礎の上に、国民の全階層の成功的な闘争が不断に展開されるだろう。アメリカによってしくまれた、単独「講和」条約といわゆる「安全保障条約」に反対する闘争へのインテリゲンチャのアピールは、このことを証明している。
 われわれは労働者、農民の利益を無視する冒険主義者のさぎ的政策を断固として拒否する。ただ綱領にもられたコースを守ってのみ、われわれはわが民族解放民主革命を実現することができる。
 日本共産党はまず第一に労働者、農民およびインテリゲンチャ、そして中小企業家およびその他の資本家たちに、民族解放民主統一戦線に積極的に参加することおよび平和と民主主義の旗のもとに決定的にたたかうよう呼びかけている。

(一九五一・一二・二〇発表)